はぐれの雑記帳

極めて個人的な日めくり雑記帳・ボケ防止用ブログです

北アルプス大縦走の旅 2

2021年04月29日 | 山靴の歌

1日目 室堂へから五色ヶ原へ

8月8日22:30新宿6:50
8月9日室堂着7:55-8:10一ノ越8:40-45浄土山10:15-30獅子岳12:15五色山荘

午前五時立山インターへ、劔岳と立山のシルエットが夜明けの空に美しい。10年前の時も同じような空模様だった。室堂の天気がもてばいいのだが、と思っていた。全体に雲が多い。
室堂に到着したのは午前6時50分。予定より1時間以上早く到着した。さすが2500mもあるから肌寒い。登山支度をして、明るくなった室堂に出る。天気は大丈夫だ。立山三山や浄土山、別山乗越から大日岳の稜線もくっきりと見えている。山には残雲も多い。だが天気は薄日がさすていどで、妻と来た10年前のようにならないかと心配する。
「さていくか」とひとり呟いて一ノ越へ道を歩き出す。午前7時。一昨年と同じ道を歩く。

晴れだけど薄日の夏の肌寒い天気の崩れ畏れつ歩く

ここの道は何度目かな。穏やかな斜度の道が一ノ越まで続いている。一人で歩くと足が速くなる。時間が早いのでそれほど多くの登山はいなかった。石の敷かれた整備されている道を黙々と歩き、午前7時55分に一ノ越につく。本来なら一ノ越からの展望はまた一段と素晴らしいもで、図体のでかい薬師岳がドーンとあり、黒部五郎と、その脇に笠ヶ岳が小さく見えて、さらに穂高や槍ヶ岳まで見えるのだが、今日は雲の中だ。展望がさほどない中で休憩をとる。

雲重く稜線にあり一の越薬師が岳の姿拝めず

8時10分、一ノ越の小屋の石垣の脇を通り竜王岳に向かう。
竜王岳は黒々とした岩山だが、見た目よりやさしいルートがついていて、竜王と浄土山の鞍部につくとそこには富山大学の立山研究所がある。ここで一息入れる。
鞍部から獅子ヶ岳までは極めてアルペン的風貌の道である。一昨年はこの鞍部歩き出して鬼岳東面を登り、巻き道の残雪の光景を見て、アキレス腱の痛みであきらめたのだった。
今日の目的地は五色ヶ原だ。一日でスゴ乗越まで歩くのは、室堂の出発が遅いので無理だと判断していた。それで五色ヶ原で、小屋泊まりの予定だからのんびりである。しかし天気は少し心配である。
稜線のところどころに残雪があり、雪の上をトラバースする箇所がある。特に鬼岳の残雪のトラバースは長く神経を使った。
そして獅子岳の登りに取りつく。時間的には竜王岳の鞍部で休んだだけでその後歩き通す。10時15分に獅子岳山頂に着くが、つらい登りであった。山頂を踏むころになって薄日が射す。振り返ると浄土山や竜王岳がくっきりと見える。行く手に五色ヶ原のマットを敷いたような緑の原が見えた。

竜鬼と獅子と名のつく悪道をようよう行けば薄日射し来る

今日の宿五色が原の小屋二つあれかと思えば頬ゆるんでる

この時はまだデジカメが出始めたころであったと思うが、自分は一眼レフのフイルムカメラであったので、写真を撮るのも多くはなかった。この日獅子ヶ岳方面から見た五色ヶ原の画像はない。ただ平らな原が広がっている光景は穏やかに見えた。原の中に小屋が二つぽつんと見える。手前は五色ヶ原ヒュッテで、奥が五色ヶ原山荘だ。
獅子の山頂からは、ザラ峠を目指して下る。この下りも急斜面である。2700mから2400mへ一気にくだる。

ザラ峠真下に見れば一息に駈け下るごとわれくだりゆく

五色ヶ原山荘には12時15分に到着。小屋で受け付けをして部屋に上がる。まだ早い時間なので客はいない。ヒュッテの方は素泊まりのみの小屋。
五色ヶ原は天気が良ければ散策したかったのだが、あいにく午後から雨になり、雷も鳴る。今回はアキレス腱も大丈夫なようであるが、ふくらはぎが幾分痛い。登山の初日はいつも具合が悪い。今日はここで泊りにして正解だったかもしれない。部屋に荷物を置き少し横になる。
午後2時を過ぎて、少し天気は回復してきたが、長野県側は明るいが、富山県側は雲が覆っていて悪い。部屋の窓から正面に針ノ木岳が見える。薬師岳は黒い雲の中だ。
「お風呂がありますから、3時以降にご利用ください」と小屋の人に言われていた。この小屋には風呂があるのだ。
3時過ぎてからお風呂に入る。こんな贅沢はない。しかし、この縦走の中でここの一泊の記憶は剥落しているのだ。それはやはり後の日々のことが強烈であったからだろう。トイレは水洗で清潔だ。携帯は圏外で使えない。
「薬師の方の小屋はやっていますか?」と小屋の人に尋ねる。
「やってますよ」との答え。
明日も行動に肩の小屋が営業しているかは大事なのだ。ガイドブックには休業とあったからだ。小屋で確認がとれたので明日は天気次第ではあるが、薬師の肩の小屋を目指すことにした。
夕食後玄関のストーブを囲んで宿泊の人たちとおしゃべりをする。小屋での楽しいひと時だ。
「小屋の人が言っていたけど、太郎平の小屋は四畳半に6人だそうですよ」
「こっちでよかったですねぇ~」
などと、貸切みたいな今日の小屋をみんなで喜んだ。
一人で暗くなった部屋で明日からのことを思うと、体のことは気にならなかった。天気だけが気になった。
この年で55歳になった。仕事も一人で始めて、思っていた以上に何とかなっている。暮らしの不安があったら山など登っていられない。運の良いことだと思う。妻とも話していて、山だけは行ってもいいことになった。百名山だけはやりたかった。妻と一緒に歩いたのはわずかに三年ほどしかないが、月に一度は登っていたので三七,八回登った。しかし私がスキーを始めてから、妻はいかなくなった。
妻が言うには、山に行くと顔がむくんでくるのだそうで、高山病の一種ではないかと思い、山には行かないと言い出した。あれから7年が経つ。一人で山を歩き始めてはいるが、それほど熱心ではない。年に数度行く程度になっていた。
自分にとって山は青春なのだ。その思いが断ち切れないでいる。綿々として山とはつながっていたいと思うのだ。一生かけて百名山をやれればいいと考えた。あるとき、北アルプスの稜線を全部つないで歩いてみたいと思った。百名山とは別の課題として考えたのだ。一昨年は薬師岳に登る目的だったが、今回は稜線をつなぐ目的なのだ。それを考えて実行する気になって出かけてきた。うまくできるといいのだが、と考えているうちに眠った。

雲覆う五色が原に彩華はなく時も泊まるか山小屋の隅


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