昭和初期の大阪 四十七
金谷点柱(こんたにてんちゅう)
しばらくしてウメちゃんが黄組一番になる日がきた。
読本の書き取りの成績の発表である。
ウメちゃんはイロハニホヘトのぜんぶの読み書きを学校にはいるまえからできとった。 ハナ、ハト、マメ、マス、ミノカサ、カラカサ、カラスガイマス、スズメモイマス、をきちんとしたきれいな字で書けたのはウメちゃん一人やった。ぼくも学校にはいるまえにウメちゃんにおそわっていたが字のかたちがおかしかった。ツとシとクとカもおんなじやった。
こんどは読み方でウメちゃんは皆の笑いをさそった。
ハーハーとなってつぎがとまった。
野田先生はすぐウメちゃんのどもりに気ずいたのでつぎは山田くんととなりの子をさした。
しばらくしてぼくは騎馬から落ちて頭の後ろをガーンと運動場の土にぶつけてしまった。 相手の頭の白帽子に手がかかったんやけどぼくのハットリという名のデブちん馬が敵の馬につまずいてころんでくずれてしもた。
眼が白うなった。
しばらくあおむけになったまま青い空がくるくるまわった。
…負けへんでェ!白帽子持っとるんや!…
ぼくは寝たまま叫んだ。一年黄組がいちばんになった。
たいそうの選手やった野田先生がかんがえた騎馬大将のえらびかたで一年黄組全員を二列にならべ互いに気をつけっ!の姿勢のままふえのあいずで相手のうんどうぼうをとるのだ。はやくとった人を残し六十二名が… 八、四、二、そしてぼくがのこった。ぼくは組一番のぼうし速とり名人やった。
…ヨッちゃんはキクチコヘイや!!死んでもラッパはなさんのといっしょや!…
修身でなろうたキクチコヘイラッパ手と皆に言われぼくは皆の大将になった。
金谷点柱(こんたにてんちゅう)
しばらくしてウメちゃんが黄組一番になる日がきた。
読本の書き取りの成績の発表である。
ウメちゃんはイロハニホヘトのぜんぶの読み書きを学校にはいるまえからできとった。 ハナ、ハト、マメ、マス、ミノカサ、カラカサ、カラスガイマス、スズメモイマス、をきちんとしたきれいな字で書けたのはウメちゃん一人やった。ぼくも学校にはいるまえにウメちゃんにおそわっていたが字のかたちがおかしかった。ツとシとクとカもおんなじやった。
こんどは読み方でウメちゃんは皆の笑いをさそった。
ハーハーとなってつぎがとまった。
野田先生はすぐウメちゃんのどもりに気ずいたのでつぎは山田くんととなりの子をさした。
しばらくしてぼくは騎馬から落ちて頭の後ろをガーンと運動場の土にぶつけてしまった。 相手の頭の白帽子に手がかかったんやけどぼくのハットリという名のデブちん馬が敵の馬につまずいてころんでくずれてしもた。
眼が白うなった。
しばらくあおむけになったまま青い空がくるくるまわった。
…負けへんでェ!白帽子持っとるんや!…
ぼくは寝たまま叫んだ。一年黄組がいちばんになった。
たいそうの選手やった野田先生がかんがえた騎馬大将のえらびかたで一年黄組全員を二列にならべ互いに気をつけっ!の姿勢のままふえのあいずで相手のうんどうぼうをとるのだ。はやくとった人を残し六十二名が… 八、四、二、そしてぼくがのこった。ぼくは組一番のぼうし速とり名人やった。
…ヨッちゃんはキクチコヘイや!!死んでもラッパはなさんのといっしょや!…
修身でなろうたキクチコヘイラッパ手と皆に言われぼくは皆の大将になった。