竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

菅新総理誕生、新内閣を読む

2010年06月13日 | 政治
防衛を考える・その2の予定でしたが、急遽変更し「新政権」へのコメントをお送りします。

 鳩山総理が辞任し、6月4日の民主党両院議員総会で菅直人氏が民主党新代表に選ばれ、新しい内閣総理大臣となった。鳩山総理の辞任に際し、小沢幹事長も道連れ辞任し、新内閣では政務も党務も菅氏が束ねるという民主党新体制が発足した。
辞任後も小沢幹事長が実権を握って影響力を行使し続けるに違いないという報道があふれていたが、菅氏はその論調をねじ伏せるかのように小沢氏と対立していた仙石氏を官房長官に据え、対局とされた枝野氏を新幹事長に据えた。小沢氏に廃止された党の政策調査会を復活させ、その論陣の先頭に立っていた玄葉氏を政調会長兼特命の国務大臣に任命した。党の重要幹部にも「反小沢」とされる議員を抜擢し、これによって新政権の支持率は70%近くに「復活」し、民主党支持率も回復した。
実に見事な参議院選挙対策である。このシナリオを書いたのは、菅氏だろうか?もしかして「選挙の神様」小沢氏の作戦ではないのかと勘ぐるのは私だけだろうか?

所信表明演説を読む
少しもったいぶった組閣と党内人事は、マスコミ的には成功したようだが、個人的にはとても不満である。普天間問題で「失敗」を産み出した岡田外務大臣と北沢防衛大臣を再任としたことだ。口蹄疫問題で赤松農水大臣に責任を取らせたのなら、この2大臣にも責任を取らせてしかるべきだった。2人を残したことで、少なくともこれまでの辺野古+徳之島路線を再検討する糸口もない。
「強い経済、強い財政、強い福祉の一体実現」を掲げる所信表明演説のコンセプトは理解できる。一体実現と言っても、ちゃんと優先順位はあるし、順番のプログラムもあるだろう。少なくとも「消費税」からはじまることはないだろうと思う。しかし・・と思う。
菅氏は国家戦略相であった昨年10月、自然エネルギーの発電設備からのFIT(固定価格買取制度)を2年以内に実現すると表明した。国家戦略室の方針は太陽光発電や風力発電など自然エネルギーによる景気浮揚と雇用の拡大だったと思う。今回の所信表明を見る限り、その大方針が影を潜めたかなと思わせる内容だ。鳩山総理のCO2の1990年レベルから25%削減という方針は踏襲しているが、そのあとに書かれているのは「日本の技術」としての「原発の売り込み」という内容。
分散型エネルギーをベース電源に押し上げるFIT(固定価格買取制度)と、従来型の中央集中型の原子力とは対局にある。菅氏の心変わりなのか、単に所信表明を書いたスタッフ陣の認識不足にすぎないのか?

財務省の影がちらつく
通常は総理の所信表明は政策調査会のスタッフが書く。しかし小沢氏によって政調が廃止されていた民主党では誰が書いたのだろう。総理官邸の秘書官はまだ鳩山さんのスタッフだっただろうし、もしかして財務省の秘書官?
ということはまさかないとは思うが、財務大臣を短期間とはいえ経験した菅氏が「強い財政」に意識が傾いていることは間違いない。日本はとっくに倒産しておかしくない借金をかかえているが、それでも国債を買ってくれる奇特な人がいるからギリシャにならないで済んでいる。マスコミ的に短絡して言うと、国民が買っているからということになるが、これだけ経済の良くない国民がそんな「奇特な人」を演じるだろうか?実際には郵便貯金、年金事業団などの半官組織が大半を保有している。もう一つの買い手は金融機関で、国際をみんなで引き受ける護送船団方式として衆知の事実だ。
財政が破綻すれば郵便貯金の預金者は預金を失い、年金は崩壊する。金融機関は隠れた不良債権としての「国債」が顕在化し、中には存続できなくなるところも出てくるだろう。だから財政健全化は最大最高の優先課題なのである。
しかし、そうだろうか。実は一番の課題は「弱っている国民」の力の回復なのではないだろうか?護送船団方式に頼って借金を積み重ねた保守政治とそれを急激に覆そうとした小泉改革の結果、「中流」によって支えられていた社会が崩壊した。格差の急拡大と貧困層の増加、派遣という「使い捨て」の産業界にとっても蓄積を伴わない労働の拡大、財政崩壊ゆえに怠慢と切り捨てを倍加させた社会保障。ここからメスを入れるのが一番のはずだ。それをまず成し遂げるのであれば、さらに10兆、20兆の借金をしても構わない。その代わり確実に有効な手だてを取るということだ。こんな考え方は、財務省は絶対に認めないだろう。「弱っている国民」を強くするためには、どれだけのお金が必要なのか、その算定すらまだ行なわれてはいない。
 
参議院選後が鬼門になる
菅内閣は、すがる国民新党を振り切り国会延長せずと決めた。私が関係をする「平和への結集をめざす市民の風」という団体では、きたる参議院選挙で民主党が単独過半数をとることは良しとしないという議論をしている。普天間問題にしても、自然エネルギーの普及にしても、「弱い国民を強くする」という観点からも民主党内の意見の分布は、あまりよろしくはない。
普天間問題では、事なかれ主義で適当にアメリカにおもねれば良いという意見、自然エネルギーではなく従来型の原発(プラス石油)、派遣の禁止や年金改革よりも消費税と法人税下げ・・、そんな意見の議員が大勢では。これでは菅氏がいくら良いマインドを持っていたとしても、良い政策はできまい。
絶妙に過半数に届かず、国民新党や社民党などの意見を反映することで、そのときどきの方針のバランスが取られる方が良い。しかし今の世論調査の結果では民主党圧勝の勢いである。おそらく郵政法案は廃案(財務省はがっかり)、辺野古は強行(沖縄は反乱)、消費税の強引な引き上げ(経済の決定的な冷え込み)というとんでもない方向に進みそうである。
支持率はまた十パーセント台になり、次の衆院選では民主党は四分五裂ということにもなりかねない。安定的な「国民本意」の政治が何であるのか、菅さんにもう一度落ち着いてよーく考えて見ていただきたい。


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