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横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

腹部大動脈瘤手術時の出血とその対応

2020-04-15 17:13:02 | 大動脈疾患
 腹部大動脈瘤の人工血管置換術において、大動脈瘤の中枢、末梢側遮断したあとに瘤を切開して、壁材血栓を除去したあとに、腰動脈からの出血を止血してから、中枢側、末梢側と人工血管を吻合して再建します。大動脈瘤切開したときに起こる出血は自己血回収装置で回収し、洗浄赤血球として患者さんの体に返血します。しっかり血管遮断されていれば遮断部位から出血することはほとんど経験しません。よって腹部大動脈瘤手術の多くは瘤切開時に腰動脈からバックフローとして出血してくるものが殆どです。また、石灰化高度などの理由で末梢側遮断ができない症例に関しては、フォーリーカテーテルを血管内腔から挿入してバルーンを拡張させて遮断する場合もあります。このときにバルーン遮断が不十分であると、末梢側からのバックフローが出血として手術視野の妨げになることもあります。
 手術操作で他に、剥離面、大動脈瘤壁を切開したときに静脈損傷をしたり、など他の要因の出血もありえます。

 腰動脈のバックフローやその他の出血で、その出血量が多いと出血性ショックに陥る危険があり、特に自己血回収装置のほうへ1500ml以上回収される場合は血行動態が不安定になりやすく、早期に輸血、回収血の返血などで循環血液量を維持する必要があり、これが間に合わないとショックから心停止に至る危険もあるため、この腰動脈の止血は迅速に行う必要があります。
 石灰化が著しくて縫合糸の針が通らない場合は、石灰化病変をペアン鉗子などで破砕して除去し、針が貫通しやすくしてから糸かけをすることが必要です。この際に大動脈瘤壁の外膜を損傷して、下大静脈や腸骨静脈から出血させるとさらにリスクが上がります。大静脈の損傷による出血の場合は、直接縫合糸をかけると静脈壁が裂けてしまうリスクがあるため極力周囲組織と一緒に縫合閉鎖して止血することがコツです。

新型コロナウィルス対策を応援する企業、一般の方、ありがとうございます。

2020-04-15 09:02:39 | 心臓病の治療
 新型コロナウィルスのパンデミックに関連して、医療機関を応援してくれるという一般の方、たいへんありがとうございます。
 横須賀市立うわまち病院は現時点ではCOVID-19の受け入れ施設ではありませんが、今後感染が蔓延して重症患者さんがあふれるようになれば人工呼吸器、ECMO等を必要とする症例に関して受け入れる必要が出てくるものと予想されます。
 現時点ではCOVID-19疑いの患者さんのPCR検査を保健所の指示で提出することは行っております。そうしたCOVID-19対応に対する応援として、横須賀市内の和菓子屋 いづみやさんがお菓子を差し入れしてくれました。ありがとうございます。
https://wagashi-izumiya.co.jp/

 市民一体となって対策に協力していただいていることに連帯感を感じます。今後も市民一体となってこの国難を乗り切っていきたいものです。

 外出を自粛して感染拡大にご協力頂いている市民の方々にも感謝いたします。

PPEとは

2020-04-15 07:25:43 | 心臓病の治療
 最近の新型コロナウィルス対応に関する言葉としてPPEが取り上げられています。PPEとはPersonal Protective Equipment=個人防護具のことです。医療関係者を感染などから防護するマスク、ガウンなどのことをいいます。問題はこれらPPEが品薄というか、病院に足りなくなっておりこれによって医療崩壊を促進するということです。医療関係者が感染してしまうようでは、医療は成り立ちません。しかもその感染症の治療法がない、というのが現在の大問題です。
 どうしてこんなにたかが、マスクと思っているものが無いのでしょうか?やはりすべてディスポーザブルにする文化に慣れすぎている弊害でしょうか?手術部位感染にしてみれば、ディスポーザブルにする前後で感染症の発症はかわったのでしょうか?いろいろな対策をしてきて、昔、布のマスク、ガウンを着ている時代と変わっていないように思います。人工物を移植する、または感染リスクの高い症例以外の通常の手術は布製品を使用して、PPEの消費を減らす努力が必要なのかもしれません。やはりCOVID-19感染予防にはディスポーザブルにせざるを得ませんのでそこにPPEがいきわたるような運用も今後必要になると思います。
 またこれほどPPEがひっ迫している理由として、日本で流通する製品の多くがワールドサプライチェーンに組み込まれていることも問題です。特に覇権を狙う独裁国家が世界の工場として中隔を担うようになっていることが世界の平和を乱す原因に今後なっていくものと思われます。やはり、そうした国の製品に頼らない流通システムを構築していく必要があります。
 国営のPPE製造工場を建設して、失業者を雇用して今必要なPPEを増産してはどうでしょうか?お金をいくらもらえる?ネット難民はどうする?などとマスコミが騒ぐのもいいですが、建設的な話題も報道してほしいものです。