理化学研究所環境資源科学研究センター植物ゲノム発現研究チームの関原明チームリーダー、佐古香織特別研究員(研究当時)らの共同研究グループは、新しい化合物「FSL0260」が植物の耐塩性を強化することを発見した。本研究成果は、人体への悪影響が少なく、農作物の耐塩性を強化する肥料や農薬の開発に貢献すると期待できる。
塩害は、かんがい農業による塩類集積、または海沿いの地域で発生し、農作物の生産に大きな悪影響を及ぼしている。これまで、農作物の耐塩性を高めるために品種改良が行われてきましたが、育種的な方法では時間がかかるという問題があった。
共同研究グループは、理研NPDepo化合物ライブラリーを用いて、植物の耐塩性を強化する化合物の探索(スクリーニング)を実施した結果、新規化合物FSL0260の同定に成功した。さらにFSL0260は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Ⅰを阻害することで、ミトコンドリア代替呼吸系を活性化し、高塩ストレスで発生する活性酸素の蓄積が抑制された結果、植物の耐塩性が強化されることを明らかにした。
本研究は、科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版(5月26日付)に掲載。
背景
塩害は、かんがい農業による塩類集積、または海沿いの地域で発生し、農作物の生育や収量低下をもたらす環境ストレスである。今後、世界の人口が100億人に達すると予測されていることから、持続的な食糧生産を維持するためには、塩害に強い農作物や肥料の開発など早急な問題解決が求められている。
これまで、農作物の耐塩性を高めるためには主に品種改良が行われてきたが、これには時間がかかる。そこで、共同研究グループは、植物に化合物を散布することで耐塩性を強化することを目指して、そのような化合物の探索を行った。
研究手法と成果
共同研究グループは、耐塩性を強化する化合物を同定するため、理研NPDepo化合物ライブラリー(405化合物)とモデル植物である双子葉植物のシロイヌナズナを用いて、耐塩性を強化する化合物の探索(スクリーニング)を行った。その結果、「FSL0260」という新規化合物が耐塩性を強化することが分かった。
次に、FSL0260による耐塩性強化のメカニズムを明らかにするために、網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、ミトコンドリア電子伝達系のバイパスとして機能するミトコンドリア代替呼吸系の遺伝子発現が、FSL0260処理によって増加することが分かった。そこで、ミトコンドリア電子伝達系の活性を調べたところ、複合体Ⅰの活性がFSL0260処理によって阻害されることを見いだした。一方、動物ミトコンドリアでは阻害されなかったことから、FSL0260の機能は植物ミトコンドリア特異的である可能性が示された。
また、ミトコンドリア代替呼吸系は、活性酸素の発生抑制に働くと考えられている。実際に、高塩ストレスにさらされたシロイヌナズナをFSL0260で処理をしたところ、活性酸素の蓄積が抑制されることが分かった。以上の結果から、FSL0260は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Ⅰを阻害することで、ミトコンドリア代替呼吸系を活性化し、高塩ストレスで発生する活性酸素の蓄積が抑制された結果、植物の耐塩性が強化されることが明らかになった。さらに、単子葉植物のイネでも、FSL0260処理によって活性酸素の蓄積が抑制されたことから、単子葉植物・双子葉植物のいずれにおいても、FSL0260は耐塩性を強化することを確認した。
今後の期待
今回の研究から、新しいミトコンドリア阻害剤FSL0260が植物の耐塩性を強化することを発見した。FSL0260による阻害効果は植物特異的であることから、本成果を応用すれば、人体への毒性が低く、農作物を塩害に強くする肥料や農薬の開発、それに伴う収量増産につながると期待できる。
◆補足説明
〇NPDepo化合物ライブラリー
天然物化学を基礎とした理研天然化合物バンク。微生物(放線菌、糸状菌など)、植物の二次代謝化合物を精製単離するとともに、天然化合物の誘導体や類縁体、人工合成化合物などを収集して、約4万化合物をライブラリー化したもの。
〇ミトコンドリア電子伝達系、複合体Ⅰ
「ミトコンドリア電子伝達系」ではⅠからIVの複合体を電子が移動することで、プロトン(水素イオン)勾配を形成し、そのプロトン駆動力によってATPを産生する系である。「複合体Ⅰ」は、解糖系およびクエン酸回路から得られたNADHより電子を受け取り、ユビキノンにわたす反応を行う。ストレスなどによって電子伝達系が不安定になると、活性酸素が産生される。
〇ミトコンドリア代替呼吸系
ミトコンドリア代替呼吸系は電子伝達系のバイパスとして機能し、活性酸素の発生抑制に働くと考えられている。
〇活性酸素
化学的に活性になった状態の酸素。生体内のエネルギー代謝や感染症の防御過程で発生するほか、高塩濃度、高温、乾燥、強光などの環境ストレスによっても発生する。さまざまな生命現象に重要な役割を果たすが、過剰な蓄積は細胞に対して毒性を持つ。
天気は晴れ。明日は夜から雨の予想、畑での水やりはせず。
歩道横の生垣は”ベニカナメモチ”。”ベニカナメモチ”は春の新芽・若葉が赤くなる、秋に街路樹が紅葉となったかの様である。でも紅色なのは新芽の頃で、次第に緑となる。刈り込みをすると新芽が出るが、この新芽・若葉も赤い。赤くなるは若葉を紫外線から守るための”アントシアニン”(赤い色素)によるもの。秋のカエデなどの紅葉もアントシアニン系の色素によるものだ。
この”ベニカネメモチ”に小さな白い花が纏まって咲いている。例えれば、コデマリの大きな鞠(まり)と言う感じかな。緑・赤・白と色豊かで、雨あがりでは色が映える。
ベニカナメモチ(紅要黐)
別名:アカメモチ(赤芽黐))
学名:Photinia glabra
バラ科カナメモチ属
常緑広葉樹
樹高は3m~5m
開花期は4月~6月
花は小さい(7mm~8mm位)5弁花で白色
★アントシアニン
アントシアン(果実や花の赤、青、紫を示す水溶性色素) のうちの一つ。高等植物では普遍的な物質で、花・果実の色を表す。フラボノイドの一種で、抗酸化物質として知られる。
塩害は、かんがい農業による塩類集積、または海沿いの地域で発生し、農作物の生産に大きな悪影響を及ぼしている。これまで、農作物の耐塩性を高めるために品種改良が行われてきましたが、育種的な方法では時間がかかるという問題があった。
共同研究グループは、理研NPDepo化合物ライブラリーを用いて、植物の耐塩性を強化する化合物の探索(スクリーニング)を実施した結果、新規化合物FSL0260の同定に成功した。さらにFSL0260は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Ⅰを阻害することで、ミトコンドリア代替呼吸系を活性化し、高塩ストレスで発生する活性酸素の蓄積が抑制された結果、植物の耐塩性が強化されることを明らかにした。
本研究は、科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版(5月26日付)に掲載。
背景
塩害は、かんがい農業による塩類集積、または海沿いの地域で発生し、農作物の生育や収量低下をもたらす環境ストレスである。今後、世界の人口が100億人に達すると予測されていることから、持続的な食糧生産を維持するためには、塩害に強い農作物や肥料の開発など早急な問題解決が求められている。
これまで、農作物の耐塩性を高めるためには主に品種改良が行われてきたが、これには時間がかかる。そこで、共同研究グループは、植物に化合物を散布することで耐塩性を強化することを目指して、そのような化合物の探索を行った。
研究手法と成果
共同研究グループは、耐塩性を強化する化合物を同定するため、理研NPDepo化合物ライブラリー(405化合物)とモデル植物である双子葉植物のシロイヌナズナを用いて、耐塩性を強化する化合物の探索(スクリーニング)を行った。その結果、「FSL0260」という新規化合物が耐塩性を強化することが分かった。
次に、FSL0260による耐塩性強化のメカニズムを明らかにするために、網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、ミトコンドリア電子伝達系のバイパスとして機能するミトコンドリア代替呼吸系の遺伝子発現が、FSL0260処理によって増加することが分かった。そこで、ミトコンドリア電子伝達系の活性を調べたところ、複合体Ⅰの活性がFSL0260処理によって阻害されることを見いだした。一方、動物ミトコンドリアでは阻害されなかったことから、FSL0260の機能は植物ミトコンドリア特異的である可能性が示された。
また、ミトコンドリア代替呼吸系は、活性酸素の発生抑制に働くと考えられている。実際に、高塩ストレスにさらされたシロイヌナズナをFSL0260で処理をしたところ、活性酸素の蓄積が抑制されることが分かった。以上の結果から、FSL0260は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Ⅰを阻害することで、ミトコンドリア代替呼吸系を活性化し、高塩ストレスで発生する活性酸素の蓄積が抑制された結果、植物の耐塩性が強化されることが明らかになった。さらに、単子葉植物のイネでも、FSL0260処理によって活性酸素の蓄積が抑制されたことから、単子葉植物・双子葉植物のいずれにおいても、FSL0260は耐塩性を強化することを確認した。
今後の期待
今回の研究から、新しいミトコンドリア阻害剤FSL0260が植物の耐塩性を強化することを発見した。FSL0260による阻害効果は植物特異的であることから、本成果を応用すれば、人体への毒性が低く、農作物を塩害に強くする肥料や農薬の開発、それに伴う収量増産につながると期待できる。
◆補足説明
〇NPDepo化合物ライブラリー
天然物化学を基礎とした理研天然化合物バンク。微生物(放線菌、糸状菌など)、植物の二次代謝化合物を精製単離するとともに、天然化合物の誘導体や類縁体、人工合成化合物などを収集して、約4万化合物をライブラリー化したもの。
〇ミトコンドリア電子伝達系、複合体Ⅰ
「ミトコンドリア電子伝達系」ではⅠからIVの複合体を電子が移動することで、プロトン(水素イオン)勾配を形成し、そのプロトン駆動力によってATPを産生する系である。「複合体Ⅰ」は、解糖系およびクエン酸回路から得られたNADHより電子を受け取り、ユビキノンにわたす反応を行う。ストレスなどによって電子伝達系が不安定になると、活性酸素が産生される。
〇ミトコンドリア代替呼吸系
ミトコンドリア代替呼吸系は電子伝達系のバイパスとして機能し、活性酸素の発生抑制に働くと考えられている。
〇活性酸素
化学的に活性になった状態の酸素。生体内のエネルギー代謝や感染症の防御過程で発生するほか、高塩濃度、高温、乾燥、強光などの環境ストレスによっても発生する。さまざまな生命現象に重要な役割を果たすが、過剰な蓄積は細胞に対して毒性を持つ。
天気は晴れ。明日は夜から雨の予想、畑での水やりはせず。
歩道横の生垣は”ベニカナメモチ”。”ベニカナメモチ”は春の新芽・若葉が赤くなる、秋に街路樹が紅葉となったかの様である。でも紅色なのは新芽の頃で、次第に緑となる。刈り込みをすると新芽が出るが、この新芽・若葉も赤い。赤くなるは若葉を紫外線から守るための”アントシアニン”(赤い色素)によるもの。秋のカエデなどの紅葉もアントシアニン系の色素によるものだ。
この”ベニカネメモチ”に小さな白い花が纏まって咲いている。例えれば、コデマリの大きな鞠(まり)と言う感じかな。緑・赤・白と色豊かで、雨あがりでは色が映える。
ベニカナメモチ(紅要黐)
別名:アカメモチ(赤芽黐))
学名:Photinia glabra
バラ科カナメモチ属
常緑広葉樹
樹高は3m~5m
開花期は4月~6月
花は小さい(7mm~8mm位)5弁花で白色
★アントシアニン
アントシアン(果実や花の赤、青、紫を示す水溶性色素) のうちの一つ。高等植物では普遍的な物質で、花・果実の色を表す。フラボノイドの一種で、抗酸化物質として知られる。
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