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燃えにくい新規電解質を用いたリチウムイオン二次電池の試作成功

2018-02-18 | 科学・技術
 (株)日立製作所と東北大学多元物質科学研究所の本間格教授らの研究グループは、従来の有機電解液よりも引火点が高く、燃えにくい新規電解質を用いた高安全なリチウムイオン二次電池(Lithium Ion Battery:LIB)の試作に成功した(2月16日)。容量100Whのラミネート型電池を用いて充電や放電などの電池特性を確認し、さらに、従来の有機電解液LIBでは発火に至る釘刺し試験において、試作機の不燃性を実証した。
 LIBはスマートフォンの小型携帯端末用電源や電気自動車用電源、再生可能エネルギーの需給調整など様々な用途で活用されている。LIB用の電解質には、安全性を担保するための高い引火点に加え、スムーズな充放電反応を進行させるための高いリチウムイオン伝導性が必要である。一般的なLIBでは、引火点が20度以下の有機溶媒を電解液として用いており、異常発生時に発火する恐れがある。このため、現行の電池システムには発火を抑制する補強材や冷却機構が設けられており、システム小型化などの妨げとなっている。
 研究グループは、新規電解質内のリチウムイオン伝導挙動をシミュレーション解析し、リチウムイオン伝導を促進する液体成分を探索することで、従来比4倍の高リチウムイオン伝導性と、有機電解液よりも100度以上高い引火点の両立に成功した。 この開発した新規電解質を用いてラミネート型電池を試作した。界面改質技術により電解質の電気化学的安定性を向上させることで、電池容量低下の要因となる正極および負極表面での新規電解質の分解反応を抑制し、設計値どおりの電池容量で充放電の繰り返し動作を実現した。さらに、ナノ・ミクロスケール領域の電解質材料分布の最適設計、製造条件の最適化を施すことで、電池の信頼性低下の要因となる電解質材料の凝集や空隙、クラック形成を抑制し、エネルギー密度の高い電池容量100Whラミネート型電池試作に成功した。さらに、従来の有機電解液LIBでは発火に至る釘刺し試験において、試作したLIBの不燃化を実証した。
 本技術により、安全性を確保しつつ、車載や民生用途向けなどのLIBの高容量化、高エネルギー密度化が可能となる。
 ◆ラミネート型電池
 通常、リチウムイオン電池に使用される正極活物質には、コバルト酸リチウムが多く使用されている。ラミネート型リチウムイオン電池にはマンガン酸リチウムが用いられており、コスト・安全面において優れた特徴がある。
 ラミネート型電池とは、正極と負極をセパレーターを挟んで交互に重ねたものをラミネートで封止した構造の電池のこと。この構造により軽量化が容易で、コスト面でも優位性を持っているとされる。円筒形電池と比べて表面積が広いため放熱性が高く、充放電によるセル全体の温度上昇を低く抑えることが可能である。

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