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ホウ素と水素のみからなる導電性を持つ新たなナノシート材料を開発

2020-03-07 | 科学・技術
 研究
 NIMSと筑波大学を中心とする研究チームは、ホウ素と水素のみからなる導電性を持つ新たなナノシート材料を開発した。またJASRIと共同で、ナノシートを構成する水素原子が特殊な配置を取っており、その構造が原因で分子が吸着することにより導電性が大きく変化することを明らかにした。軽量かつフレキシブルで、導電性を制御できる本材料は、ウェアラブルな電子デバイスや新しいメカニズムのセンサーなどへの応用展開が期待できる。本研究成果は、「Chem」誌にて現地時間2019年12月9日午前11時 (日本時間10日午前1時) にオンライン公開。
 共同研究チーム
 本研究は 、国立研究開発法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)ソフト化学グループ 冨中悟史主任研究員と、国立大学法人筑波大学数理物質系近藤剛弘准教授、公益財団法人高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 尾原幸治 主幹研究員、国立大学法人東京大学物性研究所松田巌准教授および国立大学法人東京工業大学 元素戦略研究センター 細野秀雄栄誉教授らの共同研究チームによって行われた。
 研究の背景
 電気が流れる特性(導電性)は、金属を除くと限られた材料でのみ見られるものであり、分子・原子レベルの厚みを有するナノシート材料では、グラフェンや酸化ルテニウムナノシートなどの限られた材料でのみ報告されている。導電性はキャパシターなどの電子デバイスなどに必須であり、電子・情報化社会において非常に重要な特性である。さらに、1種類のナノシート材料のみではなく、異なるナノシート材料を組み合わせて利用することで、新たな機能の発現が期待できるため、これまでにないデバイスの誕生も期待される。
 ホウ素と水素のみからなるホウ化水素ナノシートはボロファンという通称名で知られ、理論的に多様な原子配置を取りうることや導電性を有することが予想されてきた。新しい水素吸蔵材料や電子材料としての優れた特性が期待されていたが、実際に合成をすることは困難であった。しかし、筑波大学が中心となりNIMSを含む研究機関と共同で、2017年に世界で初めて、そのホウ化水素ナノシートの生成に成功した(参考:新しいシート状物質「ホウ化水素シート (ボロファン) 」の誕生)。
 理論的にホウ化水素ナノシートはさまざまな構造が予想されており、非常に魅力的な材料群の先駆的な合成の成功と言える。しかし、実際に合成した試料は計算による予測とは異なり、結晶ではなっかた。そこで、化学的に合成したホウ化水素ナノシートに関して、「導電性を有するのか?」という問いと、「なぜ非晶質なのか?」という問いに答えることが本研究の学術的な目的である。
 研究内容と成果
 導電性の計測実験では、研究を開始した当初は、計算の予測とは異なり、ホウ化水素ナノシートは絶縁体であった。NIMSが主体となり、前処理を変えた計測を繰り返し、導電性の発現には試料の純度を高めることが極めて重要であることを見出し、筑波大学と連携し、高純度試料の測定を繰り返し行った。試料の合成は筑波大学が中心となり、東京大学、東京工業大学、NIMSが共同で、高純度のホウ化水素ナノシートの合成に成功した。その試料をNIMSが繰り返し測定し、導電性が発現する前処理を発見した。微量ではあるものの合成に用いた有機分子が残存し、その吸着により導電性が発現しないことが分かり、適切な前処理を行うことで、安定して高い導電性(ホウ化水素としては最高レベル、0.13 S/cm)が得られるようになった。
 残存分子は微量であり、通常の導電材料の評価では問題になるものではなかった。興味深いことに、残存分子が存在する時には導電性が発現していても、温度上昇とともに30 ℃付近で絶縁体に変化する現象が見られた。この現象は可逆的であり、温度の低下で元の導電性が回復した。そこに化学的に重要なことが隠されていると考えられた。
 詳細な理解のためには、原子の配置を明らかにする必要があるが、この材料は非晶質であり、構造解析の一般的な手法の回折法が利用できない。X線散乱データから得られる二体分布関数であれば、非晶質であっても構造に関する情報が得られるため、NIMSとJASRIが共同で、大型放射光施設SPring-8のBL08WにてX線散乱実験を行い、二体分布関数の導出を行った。非常に複雑なデータであり、通常の手法では解析は困難ですが、NIMSが実験データを機械的に解析するベイズ最適化を用いたプログラムと、結合電子も含めた全電子状態を解析する全電子二体分布関数解析法を世界で初めて開発したことで、水素が特殊な配置を取っていることが明らかとなった。これらの解析により、特殊な水素原子の配置により微量の有機分子の吸着が可能となり、結果的に導電性が安定していなかったことが分かった。
 〇ホウ化水素ナノシート
 ホウ化水素ナノシートを化学的に合成。分子レベルの厚みのシート状物質で、特殊な水素の配置を有する。電気が流れ、その導電性は分子の吸着に敏感。
 今後の展開
 軽量かつフレキシブルなホウ化水素ナノシートは、ウェアラブルな電子デバイスへの応用が期待できる。さらに、ホウ化水素ナノシートの大きな特徴の1つとして分子の吸着性を考えると、分子の吸着で導電性が大きく変わる材料として使うことが可能である。実際に30 ℃以上で、6桁も抵抗が大きくなる現象が見られた。分子応答性のセンサー材料の開発に繋がる基礎特性と考えられる。また、特殊な水素の配置により、酸点と塩基点が存在するため、触媒材料への応用も期待できる。
 現在、研究チームは、さまざまな応用を目指して、この新しい材料の研究を続けている。これまでにはない特性を持つ材料の開発により、全く新しいデバイスの誕生が期待できる。
 ◆用語説明
 〇二体分布関数
 原子ペアの距離と密度の関係を表すヒストグラムである。結晶にのみ有効な伝統的な回折データとは異なり、全ての物質の指紋に当たる情報として近年、物質・材料の研究で注目されている。
 〇大型放射光施設SPring-8
 理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援はJASRIが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。
 〇ベイズ最適化
 データの解析の際に、これまではランダムな試行の繰り返しによる最適化が一般的であったが、近年、機械的に最適な値へと導く手法が検討されている。ベイズ最適化はその中でも広く知られた方法で、ランダムではなく、過去の試行結果を学び、如何に最適値へと導くかを機械的に調整しながら試行を繰り返す手法で、今回は二体分布関数の解析に初めて導入した。
 〇全電子二体分布関数解析法
 二体分布関数の解析は、孤立した原子が分布していることを仮定して解析するのが一般的である。しかし、原子同士の結合を作る結合電子が無視できない場合、従来の手法では解析が困難である。NIMSでは物質の全電子位置と数を計算し、それに対する二体分布関数をシミュレーションして実験データの解析を行う新しい手法の開発を行った。これにより、水素とホウ素、ホウ素とホウ素の結合電子まで考慮した解析が可能になった。

 天気は晴れ、雲が多い。気温は最高気温9℃とか、風が強くないので、お日様が温かい。
 散歩で、小さなお庭で”フクジュソウ”の花を見つけた。春を告げる花の代表である・・春がやって来る。新春を祝う花でもあり、元日草(がんじつそう)とか朔日草(ついたちそう)と呼ばれる。南天(難転)の実と福寿草(招福+長寿)の花とで、”難を転じて福となす”の縁起ものである。
 江戸時代からの古典園芸植物で、多数の園芸品種が作られている。根・茎には毒(アドニンという成分)があり、芽が出たばかりの様子はフキノトウと似ており、間違えて食べると中毒を起こす。花が終わるころ、細かい葉(人参の葉の様)が出てくる。
 フクジュソウ(福寿草)
 別名:元日草(がんじつそう)、朔日草(ついたちそう)
 学名:Adonis ramosa
 キンポウゲ科フクジュソウ属
 多年草
 開花時期は2月~4月
 花色は基本的に黄色(黄金色)、花径は数cm
 開花は光・温度に敏感で、日が陰ると直ぐに花はつぼむ
  花びらの開閉で花の中の温度を下げないようにしている


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