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安定して水を電気分解するマンガン触媒の開発に成功

2019-03-30 | 科学・技術
 地球上で最も効率よく太陽エネルギーを利用しているのは、植物などの光合成生物である。植物は、豊富に存在する中性の水と大気中の二酸化炭素からデンプンなどの有機物を作り出す。これにより、地球上の生態系が支えられている。
 植物の光合成を人工的に再現する試みを「人工光合成」と言い、究極的な課題となっている。化石燃料の大量消費による環境破壊が深刻化するにつれ、環境に優しいエネルギー変換技術としての人工光合成への期待が高まっている。
 人工光合成を行うアプローチの一つに、太陽光発電により得られる電力を用いた水電解反応(2H2O→4H++O2+4e-)がある。この反応により水から獲得した電子とプロトン(水素イオン)は、水素製造や有機物合成に使うことができる。しかし、水電解反応を行うための触媒として、資源量が少ないイリジウム(Ir)などの希少金属が必要となっている。これに対し、マンガン(Mn)や鉄(Fe)など、自然界に豊富に存在する元素を用いた触媒では活性が低く、すぐに分解・劣化するという問題がある。
 理化学研究所環境資源科学研究センター生体機能触媒研究チームの中村龍平チームリーダー、李愛龍(リ・アイロン)国際プログラム・アソシエイト、大岡英史特別研究員らの国際共同研究チームは、11カ月以上にわたり安定して水を電気分解(電解)するマンガン(Mn)触媒の開発に成功した。
 研究手法と成果
 国際共同研究チームは、高い耐久性を持つ水電解反応の触媒として、鉱物としても存在するガンマ型の酸化マンガン(MnO2)に着目した。ガンマ型酸化マンガンは、マンガン乾電池にも利用されている材料である。
 まず、ガンマ型酸化マンガンを、熱分解法によりフッ素ドープ酸化スズ電極上に合成した。得られた電極触媒の構造を電子顕微鏡で観察したところ、原子レベルで大きさが異なる2種類のトンネル構造(1X1と1X2)が粒子中に形成されていることが確認できた。次に、得られたガンマ型酸化マンガンを作用電極として用い、水電解反応の特性を評価した。真水など中性の水を電解すると、プロトン(水素イオン)の生成により溶液のpHが酸性に変化する。このpH変化への耐久性を評価するため、今回の評価はpH2の強酸性環境において行った。
 通常、このような酸性領域で水電解反応を行うと、酸化マンガンはすぐに分解し、溶け出すため、これまで酸化マンガンは、水電解触媒としては利用できないと考えられていた。研究チームは、水電解反応の反応経路可視化技術を用い、ガンマ型酸化マンガンが水を電気分解するメカニズムを詳細に検討した。その結果、三電極系において電位を精密に制御することで、ガンマ型マンガン酸化物が劣化せず、安定して水を電気分解できる電圧領域(基準となる可逆水素電極に対して1.6~1.75V)が存在することを見いだした。そして、この安定電位領域に基づき反応環境を調整することにより、非貴金属系の触媒の中で世界最高の活性(電流密度10mA/cm2の水電解電流を作り出すのに必要な過電圧が489mV)で、水を電気分解できた。
 さらに、この触媒は10mA/cm-2の条件において11カ月以上活性を持続することが実証された。一方で、安定電位領域からわずか50mV外れた環境で水電解反応を行うと、酸化マンガンはすぐに溶出し、5日後には活性は完全に消失した。
 また、ガンマ型酸化マンガンを、固体高分子型水電解槽の触媒として用い、水素製造能を評価した。
 その結果、安定電位領域において水電解を行うことで、ガンマ型酸化マンガンを用いてもエネルギー変換効率約70%にて、350時間(約15日間)にわたり、真水から水素と酸素を作り出せることを確認した。一方で、安定電位から外れた反応条件においては、8時間程度で触媒の劣化が見られた。
 今後の期待
 鉄やマンガンから作られた水電解触媒は、酸性環境下においてはすぐに溶出する、というのがこれまでの常識だった。本概念は、新たな電極触媒の開発や、最適な反応環境を特定するための新たな戦略になると考えられる。
 本成果は、今後さらに活性を高めることで、イリジウムなどの希少元素に依存しない新しい水電解技術の開発につながると期待できる。さらに、太陽電池などで得られる再生エネルギー由来の電力を用いることで、太陽と水から燃料を作り出す人工光合成システムの実現につながると考えられる。
 ◆補足説明
 〇マンガン(Mn)触媒
 光合成生物が行う、水から電子を引き抜き酸素とプロトンを作り出す水分解反応を、人工的に行うための触媒。光合成生物が四つのマンガン原子(Mn)を含む酵素(生体マンガン4核酵素)を用いていることから、マンガンを含む金属酸化物や金属錯体が触媒として検討されている。
 〇固体高分子型水電解槽
 水を電気分解する際、固体高分子(例えば、ナフィオン)を電解質として用いる手法。特徴としては、真水を基質として用いることができるため、環境負荷が低い水素製造法として期待を集めている。
 〇水電解反応
 水の電気分解(水電解)とは、正確には水から水素と酸素を作る反応(2H2O→2H2+O2)を指す。この反応は、酸素を生成する陽極反応(2H2O→O2+4H++4e-)と、水素を作る陰極反応(2H++2e-→H2)に分けられる。つまり水の電気分解とは、陽極において水から電子(e-)とプロトン(H+)を引き抜き、陰極でそれらを組み合わせることで水素を作る反応と捉えることができる。陰極材料としてはニッケルやモリブデンなど、非貴金属系で既に優れた材料が開発されているため、今後、水電解による水素製造を実現するためには、陽極材料の開発が重要である。今回合成した酸化マンガン触媒は、この陽極反応を担う材料として有望である。
 〇ガンマ型酸化マンガン
 酸化マンガン(MnO2)の構造の一つ。一般に酸化マンガンは、材料の中に四角形の空洞があり、このトンネル構造により触媒活性が変化する。トンネルの大きさは一つの辺に含まれるマンガン原子の数で表し、ガンマ型は1×1と1×2の二種類のトンネルを持つ。他にも2×2のトンネルのみを持つアルファ型や、1×1のみを持つベータ型酸化マンガンなども存在する。
 〇水電解反応の可視化技術
 水から電子を引き抜き酸素とプロトンを作り出す水分解反応が、どのように進行しているかを観測する技術。水分子の構造、マンガン触媒の電子状態、構造のゆがみの変化などを、リアルタイムで計測することが可能である。
 〇三電極系
 本来、正極と負極の二つの電極があれば水電解を行うことは可能である。一方、触媒反応のメカニズムを解析するためには電圧の精密測定が不可欠であり、このため三つ目の電極として参照電極が活用される。参照電極を含めた電極系を三電極系という。一般に、二電極系は工業プロセスで、三電極系は基礎研究で活用されることが多い。
 〇可逆水素電極
 溶液のプロトン(水素イオン)濃度を考慮に入れた参照電極。三電極系を用いた計測において、触媒となる電極(作用極)電位の基準点を与える。

 朝は晴れ、午後から曇り~雨・雪・霙と忙しい天候。寒さは、寒の戻りで寒い。畑仕事の手が悴む(かじかむ)。
 小さな空き地で、”ツクシ”が顔を出していた。
 ”ツクシ”はスギナの胞子茎(胞子穂、胞子体とも言う)で、胞子茎(ほうしけい)とは胞子嚢(ほうしのう、胞子が入っている袋)をつける茎。ツクシの後に続いて、横から栄養茎(主軸の節ごとに取り巻くように細い線状の葉が付く)が出てくる・・これがスギナ(杉菜)。”ツクシ”群の中に”スギナ”がチラチラと見える。
 名(ツクシ)の由来は、スギナに付いているから付子(ツクシ)説、ツクヅクシ(突く突くし、突出している様子)の転訛のツクシ説、突々串〈つくつくくし、串の様に突き出ている)からの説、澪標〈みをつくし、航路標識:水から突きでた柱)からの説、などがある。漢字での「土筆」は、土から伸びる筆の姿を表している。
 因みに、ツクシは食用となると言い、「胞子のほろ苦さと茎の歯ざわりは最高」らしい。
 ツクシ(土筆、付子)
 英名:horsetail(馬の尻尾)
 スギナ(杉菜)の胞子茎、スギナはトクサ科トクサ属
 出る時期は、桜の開花と同じ頃の3月下旬~4月上旬



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