GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

HEP FIVEからダイブした17歳の少年

2020-10-25 20:52:48 | Talk is Cheap

「束の間彼女はツバメになった in Rainy Sky なんて肌寒い午後でしょう」

1979年に松任谷由実が書いた『ツバメのように』という曲の歌詞だ。この歌で空を飛んだのは女の子だが、10月23日一人の少年が大阪梅田のHEP FIVEからダイブした。

少年は17歳。

彼がたった17年の人生で、なぜこの世界に見切りをつけたのか、なぜ死を選んだのかはわからない。残念ながら知るすべもない。年間3万人も自死を選ぶこの日本では、学生が自殺するのも珍しいことではない。

 

ただ不幸なのは、全く関係ない女の子が巻き添えになったこと。

不幸にも落ちてきた少年とぶつかったのは、兵庫県加古川から友達と遊びに来てた19歳の大学二年生。まだ19歳だ。

梅田のHEP FIVE。昔、阪急ファイブと呼ばれてた頃からこの場所は、いつも大勢の人がごった返す場所。新型コロナウイルスの影響でだいぶ人が少ないとはいえ、それでも多くの若者が待ち合わせに使い、その子ら目当てのナンパ師や怪しいキャッチがうろちょとしてるような場所。(献血の車もよく停まってる)

 

そんな人が溢れかえってるとこにわざわざ飛び降りなくても・・・と思ってしまうが、自殺を考えてる少年にはそんなことは考えられなかったんだろう。

HEP FIVEの屋上には観覧車があり、てっきりそこから飛び降りたのかと思ったが、どうやら違うようだ。

彼は従業員専用のエレベーターを使い、関係者以外立ち入り禁止の10階(最上階)まで行き、屋上に出たみたいだ。

鍵は?ってほとんどの人が思うだろう。ちゃんと施錠されててカバーがされてる。しかし、火災などの緊急用にそのカバーを壊せば鍵は開けられるようになっている。と同時に警備員室には通報ベルがなるのだけどね。

 

俺は以前このHEP FIVEの向かいにある阪急グランドビルで働いてたことがある。阪急32番街の別名がある通り、このビルは32階建て(ちなみに旧阪急ファイブ時代は5階建て、三番街は地下2地上1の三階建てだ)。当然上層階は窓も開けれないし、ベランダに出ることも普段はできない。

そこの23階にいたのだが、ある日窓がめっちゃ汚かったの。中国からの黄砂と中途半端なにわか雨のせい。窓拭き業者が定期的に綺麗にしてくれるのだが、とにかく早く綺麗にしたかったので、汚れた窓を外から拭こうと思い俺はぐるっと回って非常口に行ってみた、初めてチャレンジしたけど以外と簡単に鍵は開いたのだよ。当時はまだそんなカバーなんて代物はなかったような気がする。

外に出てみたら、めっちゃビル風がきつい。この風の中、細い出っ張りの上を窓の外枠を頼りに雑巾を持って向こうに行ってさらに窓を拭くなんて芸当は無理。それこそロッククライマーか自殺志願者だけだ。なんて考えてたら知らない間に警備員4-5人に取り囲まれてた。

そりゃそうだわな。普段は開かない(誰も触らない)非常ドアが開けられたんだもん。「なんかあったのか!」ってすっ飛んできてくれたんだろうね。散々説教されました。

 

今回、少年が飛び降りしたのは10階だが、それでもけっこうな高さだ。

HEP FIVEを抜けてずーとまっすぐ行った先のビルにその後店を構えたのだが、そこは10階建てのビルだったがそれでも結構な高さだった(家賃もべらぼうに高かったけどね)。でも、HEP FIVEのような大型商業施設はワンフロアの天井高があるから、同じ10階でも普通のビルで換算すると15階くらいの高さがあると思う。

その高さからボルトやナットを落とすと、車のボンネットくらい軽く通過するらしい。

ニュートンの落体の法則や公式はよくわからないが、高さが高いほど落体速度や与える衝撃は上がると思う(重さでは変わらないんだったっけ)。

そういや、以前グランビア大阪だったか大丸梅田店だったか記憶が曖昧だが、迷惑な撮り鉄の誹謗中傷を書いたビラを屋上からバラ撒いた少年がいた。彼がどこから屋上に上がったのかも問題だが、彼が撒いたのは紙(コピー用紙)だ。

紙ならまだマシだが、今回友達と待ち合わせしてた何も関係ない19歳の女の子には、いきなり50-60kgの肉の塊が落ちてきた。想像しただけで悪夢でしかない。

まさか人を巻き添えにするとは想像もつかなかったのだろう。

 

自殺した人のことを悪く言うのは気がひけるが、死ぬのならせめて迷惑かからない方法で。

 

以前も書いたが、最近の自死の報道はデリケートだ。

三浦春馬くん、芦名星さん、竹内結子さん、そして「赤い公園」のギタリスト・津野米咲さん。有名人、著名人が自殺するたびデリケートな報道がなされる。

後追い自殺防止のためにと、死亡現場の詳しい内容を書かないとか、どんな状況だったかとか、原因はどんなことが考えられるとか曖昧に報道するようにし、ケアセンターの連絡先とかも記載するようにしている。それはいいことだと思う。

でもね、逆にそのせいで自死に対する怖さやその後の迷惑とかも曖昧になってしまってるんじゃないかな。

 

電車に飛び込んだら一瞬でって思うのかもしれないが、そのあと電車は止まりダイヤは乱れ多数の人が迷惑を被るのだぞ。もちろん遺族は莫大な弁償金を払わなければいけない。

部屋で首を吊ったら、そのあとの処理が大変だ。筋肉は弛緩して汚物は垂れ流しになるからな。賃貸なら事故物件に当然なる。

ガスでも手首切っても睡眠薬でも一緒だ。一番綺麗に死ねるのは雪山で遭難して凍死とか言われるが、それだって遺族は捜索隊は出さなきゃいけないし、遺体の回収とかも大変だ。

何より残された遺族の無念さやるせなさ、そして現場を目撃した人のPTSD・ケアはもっと大変だ。

人に迷惑を更ににかけることになるってのも、抑止力になるんじゃないのか。思いとどまらせれるんじゃないのか。

 

遺書があったとか無かったとか、最近悩んでることがあったように見えた見えなかったとか、今更知ったところでどうしようもないしね。ましてや友人や親しかった著名人の追悼コメントなんてのを拾い集められても、本当はそれもどうでもいいことなのよ。

マスコミ・メディアは「死を選ぶのは簡単だが、ちょっと待て」ってことをもっと報道すべきじゃないのかな。

生きてても何もいいことがなかったとか、これからもないだろうとか、生きる目的が見つからないとか、死んでお詫びするとか、いろんな考えが駆け巡り、その結論として自死を選ぶのだろう(突発的な場合もあるだろうが)。

でも、ちょっと待て。本当にそうなのかってメディアからも問いかけてよ。

漫画の主人公やドラマではいつも問いかけてるけど、それだけでは足りないのよ。アニメもドラマも所詮作り話だからな。

 

自殺だけがしんどいことから逃げれる唯一の方法ではないし、そして、誰にも迷惑をかけずに死ぬことはほぼ無理だ。

その場所から逃げて自由になるというもう一つの選択がある。いじめとか対人関係で悩んでる人は特にね。逃げちゃえよ。

死んじゃダメだよ。生きろよ。

 

大阪には他にも高いビルはいっぱいある。

空中庭園展望台がある梅田スカイビル。40階建て173m(大淀)

屋上の空中庭園展望台からの夜景は恋人たちをロマンティックにさせるんだから邪なことを考えないでね。

 

日本一高いあべのハルカス。60階建て/300m(展望台部)(天王寺)

地上300mから見る絶景。ビルの警備はかなりしっかりしてるぞ。

 

大阪二重行政の象徴、大阪市のワールドトレードセンタービル(通称WTC/住之江区)と、大阪府りんくうゲートタワービル(泉佐野市)は共に256mで、たった10cmの差しかない。

WTCの横にはATCというこれまた負の遺産みたいな高層ビルがある

 

各ビルを警備してる人たちは、しばらくピリピリしてるだろうな。

真似する人が出ませんように。

 

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高いビルの上からは 街じゅうが

みんな みんな みんな ばからしかったの

あぁ束の間彼女はツバメになった in Rainy Sky

なんて肌寒い午後でしょう

 

もう会えない 彼女は年をとらず

生きてゆく私には 綺麗だわ

哀しいリムジン 彼女の最後の旅

裏切った恋人のせいじゃない

 

薔薇のように 舗道に散った汚点を

名も知らぬ 掃除夫が洗ってる

 

どんな言葉に託そうとも 淋しさは

いつも いつも いつも ひとの痛みなの

あぁ束の間彼女はツバメになった in Rainy Sky

流れる記憶は走馬灯

 

もう会えない 彼女の最後の旅

サイレンに送られて遠ざかる

 

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抜粋「ツバメのように」松任谷由実/OLIVE 



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