パブロフの犬じゃないんだ。
条件反射で指先が動くのかもしれない。
でも、まずは君が落ち着け。
女子プロレスラーの木村花さんが亡くなられた。
関係者や友人知人の追悼のコメントが多々紹介されてる。これはわかる。それこそ今だ。
しかし彼女の死の原因が、SNSで誹謗中傷を受けてたことを苦にしてのことだということで、やはりというか案の定というかあちこちで騒ぎ出している。
ネットでの心ない言葉についてに対して、「許せない」と憤るのはまだわかる。彼女を知る人、親しかった人たちのやるせない怒りはもっともだ。
しかしマスコミやメディアまでが便乗して「これは問題です」って。今更何言ってんの?
今まで、たくさんの芸能人や著名人が誹謗中傷を受けていた際に、マスコミは何してた?全くそれを問題としては取り上げていなかったじゃないか。「何々さんのSNSが炎上しています」って他人事だったよな。
だいたいマスコミがそれを取り上げなかったら問題にさえならなかったことも多い。ナインティナイン岡村のラジオ発言だってそうだし、チュートリアル徳井の決算申告してなかった件についてもそう。古くは倖田來未のラジオでの「羊水腐る」も、ベッキーの「センテンススプリング」も。
火のないところに煙。
わざわざ燻ってることを探し出して「ここに火種があるぞ〜」って、けしかけてたのはマスコミだ。そして炎上したら「さらにこんな事実が」と火に油を注ぐこともしばしば。
韓国でKARAメンバーのク・ハラさんや友人のソルリさんがネットで誹謗中傷され、それを苦にして自殺した時も、他国の出来事。韓国の国民性の問題だ。執拗な攻撃行為は日本では起こらない、こんな悲惨な事件にはならないって感じで報道してたよな。
それが、日本で起こってしまったら慌てて方向展開。
「ネットでの心ない誹謗中傷はもはや暴力」だってさ。
報道バラエティ番組が必ず誰かを責め立ててるのは周知の通り。
自国の首相さえコケ下ろし、アベノマスクとバカにしたネーミングをし、夫人さえ小バカにする。政治家に対しては公人だから許されるのか?
辞任した検事長を「懲戒免職にしろ」「賭博で刑事告発しろ」と執拗に責めたてる。もう一般人と一緒なんだが、退職金まで心配してあげる。
これはネットの攻撃者と何が違うんだい?顔出してるか見えないか、実名か匿名かの違いくらいだろ。やってることは一緒に見えても自分たちのは意見や問題提起であって、誹謗や中傷ではないってか?都合のいい解釈だな。
そもそも今回誹謗中傷の原因になったのはテレビ番組の演出と編集のせいだろ?(さらにコスチューム洗濯機事件をあおる未公開映像をYouTubeで公開してるから言い逃れできないぞ)
まぁ、もちろんバラエティや娯楽番組にムキになったり、フィクションとノンフィクションの違いをわからない人が増えてることも問題なんだけどな。どっちもどっちだ。
それを問題すげ替え「誰でも匿名で書き込めるSNS自体が問題が」って逃げるマスコミ・メディア。
問題のあるコメントを書き込む人の発信者特定や、情報公開及び開示請求の制度。ポータルサイト側の管理問題にまで逃げる逃げる。つい先日まで「言論の自由」「表現の自由」とか言ってたのにな。自ら首を絞めることになるぞ。
高市総務相まで、ネット上での発信者の特定を容易にし、悪意のある投稿を抑止するため制度改正を検討すると言い出した。
良いことのように思えるんだけど、パフォーマンスだとしたら危険。
「年内に改正案を取りまとめる方針でスピーディに対処する」だって。
そんなに簡単に決めていいのか?こんなことこそ議論がもっと必要じゃないのか。
すでにプロバイダー責任制限法っていうのはあって、匿名投稿で権利が侵害された時プロバイダー側は削除措置を取れると規定されてる。被害者がプロバイダーに発信者関連情報開示の直接請求できることも定められてる。
実際これだけヤフコメ欄やSNS上に罵詈雑言が飛び交ってても、2019年度に総務省が運営する「違法・有害情報相談センター」への相談件数は、たったの5198件だそうだ。プライバシーの侵害が4293件で、名誉毀損は2380件(重複相談含む)だ。相談センターでもこの程度の数だ。
なんで泣き寝入りが多いのか。
理由は簡単だ。
手続きに時間がかかったり、法的措置のハードルが高いってのもあるが、「権利の侵害」って線引きが分からない(判断しにくい)からなのよ。名誉毀損って難しい問題なのよ。
悪意の書き込みをされた被害者が運営側(プロバイダ)に削除を依頼する。
明らかに個人の権利が侵害された場合(住所や個人が特定される内容とか)ならこれは削除してくれるこだろう。個人情報/プライバシーの侵害だからな。
ただ、運営側が判断しかねる内容、「名誉毀損」とか「権利の侵害」。これが厄介なんだ。
ブスとかハゲとか微妙。言われた側が気にしてることなら全て誹謗中傷にあたるはずだが、これが権利の侵害にあたるのか、運営側(第三者)では判断しかねるだろう。
わかりやすく言えば、俺は痩せてるので人から「ガリガリやなぁ」と言われることがある。「デブ」とか「ブタ」は卑しめ言葉と周知されてるが、「ガリガリやなぁ」は褒め言葉と勘違いしてたりする人も多いのだ。
従来の友人や知人から「相変わらず痩せてるねぇ」と言われるのと、あまり親しくない人から「ガリガリやなぁ」では違うのだ。ましてや「ちゃんと食べてる?」とか「どっか悪いとこないの?」とか、大きなお世話だって言葉言われるともう悪意しか感じられない。言ってる奴は悪気なく言ってる(つもりらしい)が、受け取る側からすりゃ微妙なのだ。
「デブ」だって、それをネタにしてる芸人は多い。だからといってプライベートで言われるのは別だろうさ。「太ってる」「肥えてるな」「ぽちゃっとしてるね」「ぷよぷよして可愛い」・・・どこで悪意と線引きする?
同じようにガリガリやなぁも「スリムだね」「食べてもその体型、羨ましい」「スタイルいいね」などと言われると褒め言葉にしかならない。
「メガネくん」だってメガネかけてるのが本当は嫌な子からすれば悪口だが、キャラ立てで伊達眼鏡かけてる奴なら狙い通りだろう。
「アホ」だって大阪では日常に使われる言葉だ。もちろん親しみを込めて「アホなこと言いな」くらいに使ってる場合だが、同じ言葉でも関東人に言うとバカにされたと感じるだろう。
要は相互の人間性、親しい人なのか見ず知らずの他人なのか、親しみを持って使ってるのか、貶め・卑しめ・蔑むように誹謗中傷としてなのか。
でも、それを判断するのは難しい。
またそれによってどれだけの損害が、権利の侵害があったのか証明するのは厄介だ。
橋下元市長/知事がミヤネ屋で「誹謗中傷って難しい問題だ」「それは表現の自由の問題に絡む」「権力を批判することもダメになる」「表現の自由の規制はできないっていうのが民主国家なんです」と言った。
高市相は「年内に(プロバイダー責任制限法)改正案を取りまとめる方針でスピーディに対処する」と言ってるが、まずは落ち着け。
そんなに簡単に決めれることではない。いや決めちゃいけない。言論の自由や検閲の問題まで絡んでくるぞ。こんな時だからこそ議論をしてみればいいのではないのか。結論はそれからだ。
「リテラシーのある行動すべきだ」ってリテラシーのない人が言う。
やってることは一緒なのに、自覚がないからタチが悪い。いじめの構図と一緒なのだ。
ネットで誹謗中傷するのは「その程度の人たち」と言った坂上忍が、バイキングで執拗に黒川検事長を責め、「テンピンくらいは黙認」とコメントした弁護士を小バカにした発言をする。
カンニング竹山は普段はもっともなことを言う人だと思っていたが、「(黒川検事長がやってた麻雀は)テンピンレート(少額)でも賭博は賭博、法で決まってるんだから逮捕しなきゃダメだ」と喚く。
こんな些細なことまで法のもとに晒される時代が来たらそれは制限・規制だらけの統治国家になるってことだぞ。正義感はわかるがそれでいいのか。またそれはネットで正義感を勘違いして誹謗中傷の書き込みをしてるやつと何が違うんだい?
同じように芸能人や著名人が「これからは訴えます」とか言い出してる。調子に乗ってるっていうか便乗か。
城田優とか、TKO木下とか。蓮舫議員なんてきゃりーぱみゅぱみゅ用語まで言い出してる。
SNSに「未だ」とばかり慌ててそんなメッセージを入れてること自体が、今、問題になってる条件反射のように悪意のあるメッセージを書き込む奴らと変わりがない行為だぞ。(内容は違うけどな)
まずは落ち着け。
お前らが変に騒げば騒ぐほどこの問題は解決しないぞ。それどころか論点ぐちゃぐちゃになってうやむやになり、そしてまた同じような悲惨な事件が起こるぞ。その時もまた同じように騒ぐのか。
ネットでの心ない言葉についてに対して、問題提起するのはいい。議論をするのもいい。
「悪意のある書き込みするな」「匿名でバレないと思っているのか」「指先で殺人に至ることもあるんだ」、うん、正論だね。
罵詈雑言や誹謗中傷のコメントは「落ち込むからやめて」「実際ヘコむ」と言うのも分かる。
でもな、表現の自由、表現の場を広げるために君たちはSNSをやっているのじゃないのか?それで書き込みされて「いいね」なら嬉しくて「批判」なら訴えるってか。何じゃそら。都合いいな。
発信がしたいだけなら、書き込みをされないようにブロックするとか、有料チャンネルにして会員しか見れないようにするとか自衛するとかしかないだろ。オープンチャンネルでは規制も限界がある。
ネット創世記のパソコン通信やホームページの掲示板、BBSの時代から悪意のある書き込みは存在した。ネットによる匿名性ってやつだ。その頃から問題提起はされてた。
でも、その頃から思っていたんだが、新聞に投書するやつも、役所や学校にしょうもないクレーム入れてくるやつもほとんど匿名だ。実名で堂々となんて数えるほどだ。なのにあえてネットだけ匿名性を問題にするからややこしくなるんじゃないのか。
さらにPCの普及に伴いホームページやブログ、Mixiなどの交流サイトがどんどん活性化し、携帯電話の普及〜iModeによりメールで簡単にメッセージを入れれることになった。
そしてスマホの普及でtwitter、Facebook、InstagramなどSNSで個人が自分の情報や感想をアップすることが手軽になった。
それまで発信者は報道やマスコミ、テレビや週刊誌からしかなかった。
一般人は、政権の闇や芸能人のスキャンダルをそれらから知り、井戸端会議で奥様方は噂話と意見交換。おじさんは喫茶店や飲み屋で会社の愚痴や上司の鬱憤ばらし。若い奴らは深夜のファミレスでうだうだと情報交換。
それが、通信ネットワークを利用して各個人それぞれが直接発信でき、不特定多数がそれを見ることができ、知ることができる。不特定多数の人がまた発信し、不特定多数の人がそれに対しての意見を言えるようになった。
相互間の情報交流システム。その進化形がSNSだ。
twitterもFacebookもInstagramも、本当は進化と同時にルールやモラルが進行して確立されなければいけなかった。
でも、外国で生まれたものだ。「自由」が最優先。そして「OPEN」でなければいけない。
日本のようにあらゆるものに流派や、がんじがらめの作法があるわけではない。マナーやモラルが曖昧で、個人のリテラシーによる道徳だけが頼りだが、それには基準がない。時代にルールが全く追いついていない。
ただそれだけだ。
法的に整備されていないし、いや、できない。
卑怯者とか、臆病者だとか、悪意のある書き込みをする匿名の指先コメンテーターをあぶり出すのは、今がチャンスだと思ってるのかもしれない。どんどん訴えるべきだと騒ぐ。
でも、つい最近まで日本で唯一の起訴できる機関である検察を批判してたよな。
つい先日まで法律を決める立法府の国会議員は給付金を返還せよとか、内閣を無能扱いにし、総理を責めてたよな。
まずは君が落ち着け。
シン・ゴジラで松尾諭演じる泉が、長谷川博己演じる矢口蘭堂にペットボトルの水を渡した時の台詞じゃないが、今騒いでる人よ、まずは君が落ち着け。
じっくり考えて意見交換して、そして結論出していかないと、取り返しつかなくなっちゃうぞ。