GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

接客に正解はない

2018-05-13 05:06:01 | FOOD&DRINK
京都・祇園の日本料理店が火事で全焼した。
このニュースで気になったのが、やたらタイトルに「ミシュラン三ツ星店」ってついてること。
所詮フランスのタイヤメーカーがつけた格付け。そんなものをありがたがる京都の店がどれくらいあるのかわからないが、ニュース記事にミシュランの欲しがって必要?

ブリジストンやダンロップ、横浜タイヤの社員が覆面で調査した格付けだったらどうだ?ありがたいか?
外国人の舌と日本人の舌は違うし、さらに日本人でも土地土地で馴染んだ味は違うからね、こんなものあまり意味はない。

京都の「お口に合いますやろか」はそのまま受け取ってはいけない。
あれは「うちの味がアンさんにわかりはりますかね」って言ってるのである。もっとはっきり言えば「当店のは出汁を感じさせないで素材の魅力を引き出した繊細な味だけど、化学調味料の味に慣れてはったらわからへんのとちゃいますか」って言ってるのだ。同じ食材でも焼いたのと煮たのと生と蒸したので違うし、旬や四季によって調理方法やメニューが変わる。

だから、タイヤメーカーであろうと、なんとかウォーカーとかガイドブックであろうと、ましてやぐるなびや食べログの高評価ってのと同じく不必要なものだ。
だいたい観光客がブラっと入れる老舗なんてのは無い。一見さんお断りは何も無理やり敷居を高くしてるわけでは無い。店側の自己防衛だ。雰囲気を壊されたく無い、一回や二回来たくらいで語られたくないってね。

だいたい京都で老舗と呼ばれるには100年の歴史が必要と言われる。実際そのくらいの歴史の店がゴロゴロある。
今回焼けた店は1946年創業だから、世間一般で言えば老舗なんだろうけど、京都では老舗とは言われない。だから星がどうたらこうたらを受け入れたのかもしれない。

京都には若手が出した創業まだ10年ちょっとって店でもいい店はいっぱいあるし、暖簾も看板も無い老舗割烹の横に外国語を羅列した看板を出してるバルがあったりと、混沌としてるのも事実だ。なんせ年間5000万人の観光客が訪れる町だからな。おばんざいの店もあればシャンパン専門店だってあるし、江戸時代から続くお茶の店もあれば、ラーメン屋も結構多かったりする。

ちなみにそのミシュランの星を取った北海道のラーメン屋さんが、今月店を閉めるらしい。
理由は、星を取ってからガイドお見てくる客、観光客でいっぱいになって常連さんが遠のき、毎日忙しく朝から晩までラーメン作ってるけど一体誰のために作ってるのかわからんようになったからって。なんて潔い店主さんだろう。素晴らしい。

東京でも星を取ったラーメン店があまりに行列ができて、近隣の店に迷惑をかけたことで閉店や移転をした。調子に乗って騒ぎ立てるガイドブックやメディアはそういったことは全然取り上げない。そして店側とお客様のバランスが崩れていく。

よく勘違いされてる、お客様は神様。
客だからわがまま言っていい、金を払ってるんだからってのはちょっと違う。

おどんなお店でも接客業の店は、インサイド、アウトサイド、アラウンドの3つでできている。かっこよく言うとそれが店のコンセプト(方針)であり、これによってどの客層、どのレベル、どんなお客様を受け入れる店にするのかを決めるのだ。だからそれにそぐわない客は店側で断るべきだ。
それを不特定大多数の人に案内するガイドブックに乗せてる時点でちょっとやばいよね。集客は手っ取り早いが、選別はできないってことだから。

だからかな、最近ではこの3つの柱がちょっとおかしい店も増えてきた。
アラウンド=立地条件によって間口が広い店なのか、隠れ家的な店なのかも違うのに、ガイドブックやネット、グーグルなんかではこれが無視される。どんな路地にあろうが表通りに会う店と一緒に扱われる。

アウトサイド=客層や客筋もこうなったら関係ない。
通から食べ歩き好き、常連も一見も、自称グルメ(グルマンディーズ)からガストロノーム(半可通)、ユーチューバー、インスタグラマー、ブロガー・・・。店のコンセプトにそぐわなかろうがあっていようが、押し寄せる客に対応できなくなってる。

そしてインサイド=心理が接客と呼ばれるもので、これが一番大事なのだがここが崩れていってるところが多い。
ある京都のバカな振興団体が「接客マニュアルのある店ほどランクが高い」などと勘違いも酷すぎることを言ってたくらいだ。接客マニュアルはできない人をできるようにする、手順や作業の間違いをさせない、お客様を不快にさせないための最低限の事例集でしかないのだがね。

だからかなぁ、客側も勘違いした人がだいぶ増えた。さらにそいつらがスマホを片手にサーチして、暇なのか、それとも鬱憤ばらしがしたいだけなのか自分の考えが正しいってUPし、書き込む。相変わらず多いねぇクレーム入れる人。

「店員の接客がなんか自分に合わなかったのよね」って呟いた石田ゆり子さんへ攻撃する人の気持ちがよくわからん。

石田ゆり子さんはその日ブティックに入って服を物色しててところ、店員さんが色々喋りかけてきたが、それが自分の望む接客とはちょっとずれてたから相性ってのがあるのかな?って自分のSNSに書いただけなのだが、それを批判したりする奴がめっちゃ多かったそうだ。
石田ゆり子さんからすりゃ、なんで顔も知らない奴、しかも芸能人でもない奴になんで説教や批判をされなきゃいけないんだぁって思うだろう。

だいたいなんで自分の意見をいちいち人のSNSに書き込むのかがわからん。「それ、わかります」って賛同コメントならまだわかるが、「その考えは間違ってる」とか「こう考えるべきだ」って上から目線で注意されなきゃいけないんだろう。

多分この石田ゆり子へクレームを書きこんだ奴らは先に書いたチェーン店のマニュアル接客や、ファストフード、コンビニなどの感情の入らない接客に慣れてるんだろうね。気分悪くすることも少ないが、気持ちよくなることもない、問題が起こらないように設定されたマニュアル通りの接客って奴ね。そんな人には絶対わからん。

俺も飲食店でも服屋さんでもスーパーでもなんでも店員の態度はすごく気になる。
特に飲食業の接客は気になることが多い。だからと言っていちいちその店のホームページに書き込んだり、その店を褒めt流人のSNSをサーチして否定コメント入れたりはしないけどね。

初めて入った店で、今日のオススメは?って聞いた時に、「なんでも」って答える店員。これが女将や大将だったらその瞬間店を出る。
自分の店のオススメくらいあるだろうよ、それをなんでもオススメって。すごいなぁ、って一見自信に満ち溢れてるように聞こえるけど、結局逃げてるだけだからな。
深夜食堂のマスターの「材料さえあればなんでも作るよ」ってのとは違うよ。「オススメはなんでも(全部)」という店はどれもこれもたいして美味くない店だ。

もう一つ上乗せして嫌いなのが「●●注文される方は多いですけどねぇ」って答えられた時。俺が聞いてるのは人が何をよく頼むかではなくてこの店のオススメ。「●●は人気があって結構これ目当ての人も多いんですよ」だったら別だが、なんで見も知らない人の味覚を俺に勧めるのかわからん。

もっとダメなのが「好みがありますからねぇ」。これほど逃げてる言葉もないな。
ホヤとかナマコのように人によって好き嫌いが分かれるような食材ならまだわかるよ。「うちは●●がイチオシやけど、これは好き嫌い分かれるからねぇ」って言うんだったらわかるけどなぁ。

今日のオススメは何?って聞かなくても黒板に書かれてたり、メニューに掲載されてる場合もあるし、壁に貼られてたりしてる店もある。
接客をはなから放棄した自販機で食券購入・水はセルフサービスなんて店はもはや接客云々のレベルではない。

言葉がなんか変な店員も気になる。
料理を運んできて「こちらなになにになりま〜す」ってテーブルに置かれるのが最近多い。これはダメなファミレスのマニュアルがそのまま伝わってしまったケース。
本来は「こちら●●でございます」か「●●ご注文の方はどちらさまでしたか」だ。運ばれてきた時はハマチだがそのあとブリになるとかなら「●●になりまーす」でいいけどね。ならんやろ。「こちらアイスクリームの天ぷらですが早くお食べにならないとなんのこっちゃわからんぐちゃぐちゃのものになりま〜す」なら納得だけどな。

二人で入った店で、ガラガラなのに狭い隅っこの席に案内された時。
こんな店は注文せずにすぐ出るなぁ。いつ来るかわからん奴のためになんで今来てる客に狭苦しい思いをさせるかがわからん。「こちら四人席ですので、もし店が混んできた時は席の後移動をお願いすることがあるかもしれません」って一言言えば済む話じゃないの?

人によっては「そんなん気にならへんわ」って人もいるだろうし、「そう言えって教育されてるんだから(またはバイト店員だから)仕方がないだろう」って人もいるだろう。

一人で初めて入った店でやたら人の素性を根掘り葉掘り聞いてくる店も苦手だ。何回か通って「こんな時間まで仕事かいな」とか「今日は早いねぇお休みだったの?」とかいう会話があって「ところで何の仕事してんの?」と聞かれるならまだいいんだけどね。職業別オススメメニューがあるというのなら別だがね。それとも税務署内偵や某タイヤメーカーの覆面調査員を警戒してるのかな。

店主が偉そうに指図する店も嫌いだ。寿司屋で「これは味がついてるからそのままで」とか天ぷら屋で「これはゆず塩で」とかは素直に従えるが、ラーメン屋で「うちのラーメンは完成してるから胡椒やラー油は入れるな」とか「純米酒をお燗なんかできない」などという店はガッカリする。好きに喰わせろ。

ラーメン屋で言えば、店員全員が黒いTシャツ&バンダナ&大声の店もちょっと苦手。こういった店は必ず食券売器だし、こだわってるウンチクがあちこちに書かれてたりするが、たいして美味しくない店が多い。

オーガニック何ちゃらって謳い文句にしてる店も苦手だ。健康志向、安全なもの、健康・・・。それをこだわるなら街でご飯やランチは食わないことだ。産地直送、自給自足、明るい農村生活。オーガニックってのはいいけど、美味しくないんだもの。高いし。無農薬とか契約農家から直送ってのは一見安全性高そうだけど、実は逆に毒性高いしね。

開店前に「一生懸命支度中」とかでかい看板が掲げられてる店も苦手。謎の中国人ジュンビーチュー(準備中)でいいやん。一生懸命とか、真心込めてって当たり前のことやん?

「自家製何ちゃら」って書かれてるメニューも結構苦手。同義語に「手作り何ちゃら」ってのもある。
これ以外のメニューのものは自分のところで作らずどこからか仕入れてるんだろうか。手作りじゃ無いってことは工場や機械で?うどん・そば・ラーメン・パスタなど手打ちとか機械とか業者麺とかあるのはわかるし、手打ちならあえてそれを打ち出しアピールしたいのもわかる。でもさ、ハンバーグとか漬物とかって自家製手作りが当たり前じゃ無いの?ソーセージやベーコンなど自家製にしろなんて無茶は言わないよ。専門店ならするべきだけどね。

人によって気持ちのいい接客とか、居心地のいい店の雰囲気ってのは違って当たり前だ。
だから俺が上記にダラダラと書いた店も、人によっては満足する店とか、期待していい店かもしれない。だから完全否定する気はない。俺は行かないだけ。

地方に行くと人懐っこいおばちゃん店員が「若いねんからいっぱい食べ」ってご飯を山盛りにしてくれたりされると嬉しいどころかげんなりする。(もう若くもないし)
これだって人によっては「え〜?嬉しいじゃないですか」なんていう人もいれば、「そりゃ迷惑だわな」という人もいる。中華料理のように食べ残すのが礼儀って店なら別だが、「残さず食べなさい」「お米一粒には八十八人の神様がいる」と言われて育った俺にはちょっと無理ってだけだ。

人としゃべるのが好きで行く人もいれば、出来るだけこちらに関わらないで欲しいって思ってる人もいる。
こだわってる頑固な主人に叱られたいとか、うるさい女将に説教されたいって人もいるかもしれない。
素材の産地を知りたがる人もいれば語りたい人もいるし、プロの料理法やコツを聞きたい人もいる。
店員の女の子目当てとかイケメン目当てってやつもいるだろうし、常連さんとワイワイ楽しみたい人もいるし、味を一人噛み締めながら楽しみたい人もいる。

店のコンセプトに合わせ、入店時、瞬時に客を見極めて対応するのが接客だと思うのよね。

これも先に書いたが、もちろんその店のコンセプトに合わない客は、店が断ってもいいのよ。京都の老舗割烹のように一見さんお断りとまではいかなくても、明らかに他でかなり飲んで出来上がってるなって客が暖簾くぐって入ってきた瞬間に「今日は予約でいっぱいなんですわ」って断ってもいい。
泥酔、大声、器物破損、他人に迷惑かけた時点で強制退店・出入り禁止って店もあるし、中には「女性一人客お断り」って店もあるし。角打や串カツ屋だってビール三本までとかって規制してたりする店もあるよ。(以前は吉野家でもこのようなことが張り紙されてた)

店だって客を選んでいいし、客だって店を選ぶのは自由だ。
「合わへん店にはもう二度と行かんかったらええねん」って身も蓋もないことをすぐいうやつだっているくらいだ。それも一つの手だ。
何が気持ちいい接客で、どんな店が居心地いい店なのか、人それぞれだからな、思いは百人十色だ。万人に合わせきれるわけない。それが現実だ。

接客に正解はない。
気に入ってリピーター屋常連になるか、二度と来ないか、それを決めるのは味だけではなく接客がかなりウェイトを占めてる。
ただそれだけのことだ。