スリーコインズ下北沢店の隣には、輸入食材などを扱う「カルディコーヒーファーム」の店舗がある。人の出入りが多い店に近接する形で出店するのも戦略の1つだ(記者撮影)
4月上旬の平日、JR新橋駅の構内にある「3COINS(スリーコインズ)」の店先には、冷感グッズやレジャー向けアイテムなど、大型連休や初夏の訪れに備えた商品が所狭しと並んでいた。通勤客や就活生、観光客らが入れ替わり立ち替わり入店し、10分もしないうちに複数の商品を購入していった。明るい黄緑色を基調としたロゴで知られるスリーコインズは、300円を中心とした価格の生活雑貨やアクセサリーを取りそろえ、最近は駅やショッピングセンターで目にする機会が増えた。それもそのはず、スリーコインズの店舗は2010年に62店だったのが、2018年には176店(いずれも2月時点)となり、この8年間で3倍近くに伸びている。
9割超がオリジナル商品
特徴的なのは、商品の入れ替えの早さだ。年間を通して店頭に並ぶ商品は全体のごく一部。毎週新商品を入荷し、雑貨は月400~500アイテムを新たに投入する。陳列される商品は変化を続け、収納ボックスやキッチン用品などの定番品も、デザインや機能を定期的に見直している。商品の9割以上が定価(正規価格)で売られており、小売業では日常茶飯事ともいえる、値引きによる在庫処分は極めて少ない。キッチン用品などの定番商品もデザインや機能を定期的に見直している(写真:パル)
現在、スリーコインズで販売される商品のうち、9割超をオリジナル商品が占める。メイン顧客は30歳前後の女性。通勤途中に店をのぞく客も多いため、飽きられない売り場づくりを目指している。
スリーコインズのブランド長を務める、パル第四事業部本部・澤井克之部長は「売れるからといって、同じ商品ばかりをずっと売ることはしない。事業規模が大きくなると安定志向になりがちだが、つねに攻めの姿勢でいることを重視している」と話す。女性スタッフの1人が頻繁にコンサートに行くことから発案された「うちわカバー」(写真:パル)
商品企画を担うのは女性を中心とした8人のスタッフだ。強みとするのは、ファッショントレンドや季節需要に対応した商品。特にアクセサリーは雑貨と比べて納期が短く済むこともあり、最新のトレンドに沿った商品を積極的に投入する。
女性を主なターゲットとした「かゆいところに手が届く」商品の開発にも力を注ぎ、うちわカバーやペンライトケースなどのオタク向けグッズは昨年大ヒットを記録した。
1994年に大阪で初出店
出店先の見極めも功を奏している。店舗面積は10~100坪と幅広いが、外せないのはつねに人通りが多い立地であること。ターミナル駅の構内だったり、商業施設内や路面店でも、人の出入りが激しいス-パーや、飲食関連の店舗に隣接していたりすることが多い。ブランドの“色”が重視されるアパレルと比べ、各店舗の顧客の年齢層や特性に合わせて、柔軟に商品構成を変えやすいといったメリットもある。
スリーコインズの主要顧客は30歳前後の女性。飽きられない商品展開を意識している(写真:パル)
スリーコインズを運営するパルは、女性向けを中心としたアパレル事業を主力とし、「チャオパニック」や「ガリャルダガランテ」など多数のアパレルブランドを展開する。1994年、社内で「ファッションを切り口に雑貨を売ることはできないか」という声が上がり、大阪市内で第1号店を開いたのがスリーコインズの始まりだった。
当時「100均」はあったものの、100円以外の価格での均一ショップはまだなかった。ファッショントレンドに対応した雑貨として付加価値をつけながらも、「衝動買い」ができるぎりぎりの価格帯を考慮して、300円を基軸とすることに決めたという。今年2月に発売したカラーチケットホルダー。うちわカバーと同じく、オタクを意識して投入した商品だ(写真:パル)
初出店後しばらくは国内のメーカーや問屋からの仕入れが中心で、シーズン切れの雑貨や型落ち品も買い集めるなど、商品の確保に苦労が続いた。ただ、店舗数が増え、一定のロットで商品を供給できる体制が整った段階で、自主企画商品の比率を徐々に高めていった。
ダイソーも"300均"に参入
潮目が変わったのは、今から10年近く前のこと。「いつ、どの商品を販売するか」といった年間計画を明確に作り、スリーコインズのブランド化を推し進める戦略を確立。それ以降、出店や自主企画商品の開発に攻勢をかけ、スリーコインズの名が広く知られるようになっていった。