2017年9月14日、ニッポンイノベーター塾が主催のイベント、Premium Innovators Collegeが開催されました。登壇したのは、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて14年間活躍し、現在はブレークスルーパートナーズ株式会社にてマネージングディレクターとして企業の経営を支援している赤羽雄二氏。「10年後の未来と働き方」と題して、AIなどの発展によって急速に変化するビジネス環境や、これからのビジネスパーソンの在り方について、参加者と意見を交えながら語りました。「将来、AIに仕事を奪われる」というのは本当なのか? 技術の進歩によって私たちの生活はどう変わるのか? すべてのビジネスパーソンに贈る、10年後も生き残り続けるために必要なマインドセットを解説します。
ブロックチェーンという新しい仕組み
赤羽雄二氏(以下、赤羽):「ブロックチェーン」という言葉があまりわからない人は手を挙げてください。
(会場挙手)
ブロックチェーンというのは、インターネット上に台帳を置く技術です。普通のやり方だと改ざんされてしまいますが、ブロックチェーンであれば、改ざんがほぼ不可能となり、非常に信用できます。クレジットカード番号を入力しても漏洩する心配がなくなります。「人事情報や人事評価情報をインターネット上に置くとハッキングされるかもしれない」という問題も一切なくなります。
たとえば、ドナルド・トランプ氏が大統領に選ばれた後、数ヶ月してもミシガン州などでは投票数を再集計してるんですね。集計のしかたが信用できないから、改ざんされているからという理由ですが、ブロックチェーンという新しいインターネット上の仕組みを使うと、投票した瞬間に誰が何票獲得したかというのが出せて、しかもウソ・いつわりがありません。
仕事についても大きな変化が起きます。ここにいらっしゃる方は日本のピラミッドの上から10パーセントに入る上の方々だろうと思いますが、それでも10年後には仕事の半分はなくなると思っておいたほうがいいです。そして残りの半分もAIを補助的に使うようになる。
エクセルへの入力、資料作成などは大半がなくなっていく。自動車が発明されたために、御者、馬車、馬自体が必要なくなったようなことです。「電話交換手」という仕事がなくなったようなことです。
多くの仕事が置き換えられていきます。少し勉強された方は「いや、そういう状況でも、新しく導入される機械のオペレーションやメンテナンスなど、新しい仕事が増えるので心配いらないはず」と考えているかも知れません。確かにそういう面もありますが、今回はこれまでと同じようには増えないと思います。
たとえば産業革命では「肉体労働はなくなったが、機械のオペレーターになれた」ということもありましたが、おそらく今回はロボットに代わりますので、代わりの仕事がそこまで増えません。
今の仕事は10年後には半分なくなる
この変化は人類史上初めてくる「大きな波」と思っておいたほうが無難です。私は「10年後に今の仕事の半分はなくなる」と言っていますが、「いや赤羽さん、それは誇張でしょう。3割くらいではないでしょうか」という人もいます。そうかも知れません。もちろん3割なくなっても、1割なくなっても大変なことになります。
仕事が1割でもなくなるとなぜ大変かと言えば、みなさんよりも競争力の高い人たちが職を失って、みなさんが今されている仕事に乱入してくるからですね。その場合、高い確率で上の人に押し出されてしまうという問題だと考えています。
秘書という仕事は多分なくなりますよね、経理事務もなくなる、記帳はスマートコントラクトで終わっていますから監査業務の大半もなくなりそうです。そもそも東芝や昔のEnronでは、監査機能が正常に機能していなかったと思いますが。
(会場笑)
信用してはいけないものを信用させたという大問題を起こしました。この点は「改ざんされないデータベース」があれば、それで終わりです。これからはすべての入金・出金が自動的に記載されますので、ルールさえ適切に決めておけば現在の経理・会計・監査業務の大半は必要なくなってしまいます。
弁護士の仕事もかなりあぶないでしょう。弁護士の仕事の定型的な部分から置き換えられていきます。それに、判例を読むのはコンピューターの方がよっぽど得意ですからね。
医師の仕事もロボットやAIができる
医師はどうでしょうか。毎日「ガンの最新治療方法」に関して多数の論文が出ています。それを全て読みながら臨床することは到底できません。今、会社によってはインドで医学博士を多数雇い、その人たちに読んでもらって、サマリーをアメリカのガン専門医に提供していますが、これもAIでできますね。
また、具合が悪くなると治療のために病院に行きますが、病院は病気の巣窟とも言えるわけで結構危険です。院内感染で死ぬ人も多いです。子どもを小児科に連れて行かなければいけないが、他の病気をうつされるのではないかと心配されるお母さん方も多いと思います。
下着が、体温変化や排出する二酸化炭素量の変化などの情報を送って、風邪になりそうな兆候をウェアラブルのIoTで把握するようになれば、病院に行かずに診断し、病院に行かずに治療を受けられるというふうになります。医師の需要もこれまでとはかなり変わると思います。
それから「ゴッドハンド」と言いますか、「体の奥のほうの難易度の高いものでもうまく手術できます」といった名医も、ロボットのほうがうまくなっていきます。実際、アメリカの最先端の外科手術はロボットハンドで行われています。患者が寝ていて、医師もいるんですが操作のために違う方を向いてるんですね。
医師は別の場所から遠隔で手術をしていて、患者は1人で放置されてるという状況もでてきます。「神の手」より、ロボットのほうがもっと細かな作業ができるようになってきました。
雇用されていても、その会社自体が潰れる
赤羽:ということから、少なくとも10年後にはかなり多くの仕事がなくなっていくとお考えください。「そんなことはない」と主張されても、みなさんよりも競争力の強い人々がなだれ込んできますので、勝ち目はあまりありません。質問・ご意見があればどうぞ。