9ヶ月間の介護福祉施設の倒産が、昨年1年間の倒産件数(23件)をすでに上回っているそうだ。訪問介護では「お金をかけない予防介護」、施設介護では「ホテルコストと食事の保険外し」という法改正(改悪)が大きく影響していると言える。
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福祉・介護事業の倒産、上半期29件(10月24日キャリアブレイン)
今年1月~9月までの老人福祉・介護事業の倒産件数が、昨年の同じ期間より6件増えて29件になったことが、東京商工リサーチの調べで10月24日、分かった。介護保険制度がスタートした2000年以降ではこれまで最悪だった昨年1年間の倒産件数(23件)を上半期だけで既に6件上回ったことになる。
東京商工リサーチがまとめた「07年1月~9月 老人福祉・介護事業の倒産状況」の集計対象は、特別養護老人ホームや通所・短期入所介護施設、有料老人ホームなどの施設系事業と、高齢者や障害者の居宅で介護・ケアなどを提供する訪問介護系事業。破産や民事再生などの法的整理以外に、銀行取引停止処分などの私的整理もカウントした。自主的な廃業や解散などは含まない。 集計結果によると、07年1月~9月の倒産件数の内訳は、施設系が16件、訪問介護系が13件で、老人福祉・介護事業全体では06年の同じ期間と比べて13件多い29件になった。06年には年間ベースで23件の倒産が発生しており、今年は9月時点でそれを既に6件上回る勢い=表=。
また、負債総額は68億2,300万円と06年の同期から35.6%減少したが、過去10年間(年間ベース)では同年に次ぐ高い水準で推移している。
介護保険制度が始まった2000年以降の倒産件数の推移(年間ベース)を見ると、施設系では05年に前年より4件多い11件が発生し、増加傾向が鮮明になっていることも分かった。訪問介護系の倒産は当初は低水準で推移していたが04年(4件)ごろから増え始め、06年には12件と前年の4件から一気に3倍に増えた=表=。06年は年間で施設系11件、訪問介護系12件となっており、07年は上半期だけでこれらをそれぞれ上回ったことになる。
商工リサーチは、05年10月に実施された施設入所者の居住費・食費の全額自己負担化が、費用の徴収難や退所者の増加につながっていると分析。さらに、施設に給付されていた「基本食事サービス費」が同じ時期に廃止されたことで施設系のサービスが「大きな影響を受けた」と指摘している。
一方、訪問介護系の倒産が増加傾向にある点については、06年に実施された介護報酬の引き下げや制度の抜本改正が「事業者を直撃している」とした。
商工リサーチの担当者は「小規模事業者の倒産が多く、法改正の影響が大きいと見ている。事業所数は年々増えているが、人材不足などの課題もあり、収支を成り立たせるのは実際には容易ではないということだろう」と話している。