煙草を止めたらその内きっといいことがある。
何しろ40年間、40本も吸い続けてきたじゃないか、
きっと体が見違えるように元気になる。
そう思って思い切って決断した。15年前のことである。
きっかけはある。
仕事上で親しかった友人が「退職して退屈だからタバコを止めたよ」と電話してきた。
これには仰天し、それなら俺もという気になった。
何しろ2人は酒も煙草も群を抜いての豪酒家、ヘビースモーカーであった。
煙をもうもうと燻らせ、コップ酒片手に
「酒と煙草は絶対にやめないぞ」
「男がやると決めた以上それを止めるなんて、そんな意志の弱い事でどうする」
などとほざいたものである。
そんな彼が「煙草を止めた」と電話してきたのである。負けてなるものかと思った。
禁煙して1ヶ月、体調が良くなるどころか「吸いたい、吸いたい」の、際限のない欲望に見舞われ、何事も手につかなくなった。例えば囲碁、読書、地図などでの旅行の計画。
「大丈夫だよ、3カ月もすれば慣れるさ」
そう言われて頑張ったが、それは真っ赤な嘘、症状は益々ひどくなる一方である。
それに身体の状態が良くなってきたとはとても思えない。
害あって益なしじゃないのか。何故斯様な苦しい目に逢わなければならないのかと思った。
6カ月後、迷いはピークに達した。
その気になればいつでも吸えるのに何故なんだ、そんな誘惑に駆られながらも折角ここまでやってきたではないか。挫折するは如何にも悔しいと思う気持が強くなってきたのである。
今思い起こせばこれがどうやら禁煙成功の兆候らしいのであった。
3年後の日記には、「こうして書いていても未だによよと手が震え、左手が煙草を探し求めている。空パイプを吸って耐えてはいるが、赤ちゃんの哺乳瓶ではあるまいし、
この滑稽な姿が恥ずかしい」と書いてある。
煙草を吸っている夢を見て「しまった」と思い飛び起きたことがある、とも書いてある。
15年後の今では反射的に煙草の煙を避けるようになっている。
それは結構だが7つもの病を抱え、その中でも重篤な病を2つもっている。
悉く酒と煙草に起因しているらしい。
彼も又「あの当時、ちょっとやりすぎたなあ」と言う。
然し、15年前のあの時、もしも禁煙していなければ今頃7回忌を迎えていることだろう。
遅きに失したとはいえ、先ずは上出来の決断であったと思っている。
曲りなりに命長らえて静かに余生を送っているのである。
何しろ40年間、40本も吸い続けてきたじゃないか、
きっと体が見違えるように元気になる。
そう思って思い切って決断した。15年前のことである。
きっかけはある。
仕事上で親しかった友人が「退職して退屈だからタバコを止めたよ」と電話してきた。
これには仰天し、それなら俺もという気になった。
何しろ2人は酒も煙草も群を抜いての豪酒家、ヘビースモーカーであった。
煙をもうもうと燻らせ、コップ酒片手に
「酒と煙草は絶対にやめないぞ」
「男がやると決めた以上それを止めるなんて、そんな意志の弱い事でどうする」
などとほざいたものである。
そんな彼が「煙草を止めた」と電話してきたのである。負けてなるものかと思った。
禁煙して1ヶ月、体調が良くなるどころか「吸いたい、吸いたい」の、際限のない欲望に見舞われ、何事も手につかなくなった。例えば囲碁、読書、地図などでの旅行の計画。
「大丈夫だよ、3カ月もすれば慣れるさ」
そう言われて頑張ったが、それは真っ赤な嘘、症状は益々ひどくなる一方である。
それに身体の状態が良くなってきたとはとても思えない。
害あって益なしじゃないのか。何故斯様な苦しい目に逢わなければならないのかと思った。
6カ月後、迷いはピークに達した。
その気になればいつでも吸えるのに何故なんだ、そんな誘惑に駆られながらも折角ここまでやってきたではないか。挫折するは如何にも悔しいと思う気持が強くなってきたのである。
今思い起こせばこれがどうやら禁煙成功の兆候らしいのであった。
3年後の日記には、「こうして書いていても未だによよと手が震え、左手が煙草を探し求めている。空パイプを吸って耐えてはいるが、赤ちゃんの哺乳瓶ではあるまいし、
この滑稽な姿が恥ずかしい」と書いてある。
煙草を吸っている夢を見て「しまった」と思い飛び起きたことがある、とも書いてある。
15年後の今では反射的に煙草の煙を避けるようになっている。
それは結構だが7つもの病を抱え、その中でも重篤な病を2つもっている。
悉く酒と煙草に起因しているらしい。
彼も又「あの当時、ちょっとやりすぎたなあ」と言う。
然し、15年前のあの時、もしも禁煙していなければ今頃7回忌を迎えていることだろう。
遅きに失したとはいえ、先ずは上出来の決断であったと思っている。
曲りなりに命長らえて静かに余生を送っているのである。