父は紙袋に包んだ2房のバナナを飯台に置いて「さあ食べよう」と言ってドカッと座った。
当時バナナは高くて滅多に食べられないご馳走であった。
3人が黙々と食べ始めた。
「どうだ、彰ノ介、美味いだろ。もう一つ喰ってもいいぞ」
それは舌を溶かすような美味しさであった。僕はあっという間に2個食べて御飯に切り替えた。
3人での食事は幾カ月ぶりであろう。それはそれで嬉しいのであるが雰囲気はぎくしゃくしていた。僕はさっさと食事を終え、読みかけの本の続きを読むために大急ぎで布団の中にもぐりこんでうつぶせになった。
僕が一緒だとやりづらいだろうという配慮もあった。僕は僕なりに神経を使っているのである。
聞き耳立てて様子を伺っていたがどうやらお金の話ばかりであった。静かに話し合っていた。
僕は安心して本を閉じ、眠りに就いた。
僕は5年生になった。級長とか学校委員に祭り上げられて、それでもそれなりにクラスをまとめていた。5年生は1クラス40人位で7クラス位あったように記憶しているがこの記憶は自信がない。ただ僕にとっては大勢の仲間をそれなりに束ねていかなければならない立場であった。然し自身この事は嫌いではなかった。自己顕示欲、どうやらこの頃からこのような性格が垣間見えたようである。
クラスには暴れ者の不良が3人いた。腕っぷしがめっぽう強く真面目にやっている仲間の者たちに嫌がらせを言ったり持ち物を壊したり、皆困っていた。僕たちは彼等のことを「不良」呼び、出来るだけ取り合わないように難を避けていた。
ところが気の弱いある仲間がついに捕まった。その仲間の足に自分の足が絡まって転んだ。「不良」は怒った。
喧嘩の始まりである。この時の喧嘩は双方怪我もなくすぐに終わったが、その後も陰でいざこざが続いていた。
僕はとうとう堪忍袋の緒を切った。このまま放っておいたらクラスの団結が崩れる。
僕は彼に「1対1での決闘書」なる手紙を渡した。友人が「やるの」と聞くから「やる」と答えた。殴り合いの喧嘩は誰が考えても相手の方が強い。身体の大きさも顔つきも違う。この件は先生も知っていたようだったが知らぬ顔であった。「喧嘩するなら皆の前で堂々とやれ」主義の先生であった。
十数人が取り囲む中で互いに声をかけ合い殴り合い倒し合いの喧嘩が始まった。双方の服は土にまみれてどろどろである。僕は必死であった。明らかに押されていることは分ったが決して参ったとは言わず、鼻血で顔面を真っ赤に染めながら戦った。決闘であるから誰も手を出さない。遂に先生が現れた。誰かが知らせたのであろう。
「そこまでだ、止めろ」雷のような声が落ちた
当時バナナは高くて滅多に食べられないご馳走であった。
3人が黙々と食べ始めた。
「どうだ、彰ノ介、美味いだろ。もう一つ喰ってもいいぞ」
それは舌を溶かすような美味しさであった。僕はあっという間に2個食べて御飯に切り替えた。
3人での食事は幾カ月ぶりであろう。それはそれで嬉しいのであるが雰囲気はぎくしゃくしていた。僕はさっさと食事を終え、読みかけの本の続きを読むために大急ぎで布団の中にもぐりこんでうつぶせになった。
僕が一緒だとやりづらいだろうという配慮もあった。僕は僕なりに神経を使っているのである。
聞き耳立てて様子を伺っていたがどうやらお金の話ばかりであった。静かに話し合っていた。
僕は安心して本を閉じ、眠りに就いた。
僕は5年生になった。級長とか学校委員に祭り上げられて、それでもそれなりにクラスをまとめていた。5年生は1クラス40人位で7クラス位あったように記憶しているがこの記憶は自信がない。ただ僕にとっては大勢の仲間をそれなりに束ねていかなければならない立場であった。然し自身この事は嫌いではなかった。自己顕示欲、どうやらこの頃からこのような性格が垣間見えたようである。
クラスには暴れ者の不良が3人いた。腕っぷしがめっぽう強く真面目にやっている仲間の者たちに嫌がらせを言ったり持ち物を壊したり、皆困っていた。僕たちは彼等のことを「不良」呼び、出来るだけ取り合わないように難を避けていた。
ところが気の弱いある仲間がついに捕まった。その仲間の足に自分の足が絡まって転んだ。「不良」は怒った。
喧嘩の始まりである。この時の喧嘩は双方怪我もなくすぐに終わったが、その後も陰でいざこざが続いていた。
僕はとうとう堪忍袋の緒を切った。このまま放っておいたらクラスの団結が崩れる。
僕は彼に「1対1での決闘書」なる手紙を渡した。友人が「やるの」と聞くから「やる」と答えた。殴り合いの喧嘩は誰が考えても相手の方が強い。身体の大きさも顔つきも違う。この件は先生も知っていたようだったが知らぬ顔であった。「喧嘩するなら皆の前で堂々とやれ」主義の先生であった。
十数人が取り囲む中で互いに声をかけ合い殴り合い倒し合いの喧嘩が始まった。双方の服は土にまみれてどろどろである。僕は必死であった。明らかに押されていることは分ったが決して参ったとは言わず、鼻血で顔面を真っ赤に染めながら戦った。決闘であるから誰も手を出さない。遂に先生が現れた。誰かが知らせたのであろう。
「そこまでだ、止めろ」雷のような声が落ちた