作品272(夕焼け日記より)
ガー君は僕の友達さ。
あの白鳥はね、「ガー君」と呼んだら僕のところへ来るんだ。
首のところを撫でてやるととても嬉しがるんだ。
いろんな話をするんだけれど、
何故か殆ど分かり合っていると思うよ。
「背中に乗ってみたいな」と言ったら、
僕の足元まで擦り寄ってきてさ。
「ガー、ガー」と声を立てるんだ。
勿論足だけを乗っけるのだけれど、
くるくる回って僕の顔を見上げるんだ。
きょとんとした目で「どうだいこれでいいかい」と言うんだ。
それが嬉しくて可愛くて、
それから一緒にお菓子食べるんだ。
ポケットの中をがさがささせていたら羽根をバタバタさせて、
「早く、早く」と催促するんだ。
代わる代わるにパクパク食べて、ガー君はね、
何度も頭を下げ、「ありがとう」を言うんだ。
それからガー君は「もう出かけるよ」の合図を送るんだ。
「気をつけろよ、明日又会おうぜ」
僕は小さくなっていく真白の背に大声で声をかける。
ガー君はくるりともう一回転して、
それから見えなくなった。