シャボン玉の詩

前へ前へと進んできたつもりでしたが、
今では過去の思い出に浸る時間も大切にしなければ、
と思っています。

お願い (夕焼日記より)

2009-05-25 08:53:59 | Weblog
作品63(夕焼日記)

そんなこと言わないで、お願いだから。
どこかにきっと美しいところがあるから。
びっくりするような、
それはそれはすごいところがあるから。
そこへ行ったら何もかも忘れてしまうから。
感動の果てだよ。
体が吸い込まれていくよ。
大草原の中に大きな木があってさ。
その近くにはね、青い鏡のような湖があってね。
いろんな鳥や魚や動物がいてね。
みんな友達なんだ。
太陽が沈むころは、天まで届く壮大な天然色が見えるよ。
いやなことなど吹っ飛んじゃうから。
うそじゃない、きっとあるから、そんなとこ。
ここは地球だよ、気の遠くなるほど広いんだから。
ねえ、そこをさがそうよ。
そこへ行こう。
つらいときはね、そんなことを考えるんだよ。
へんなこと考えないで、お願い、ね。
何もかも忘れて、さあ。

自然体で行きます (夕焼日記より)

2009-05-18 08:59:58 | Weblog
作品62(夕焼日記より)

今日は体調がよい、とか、
今日は気分がよい、とか、
そんなことを言うようになりました。
まだまだ、と思っていましたが、
いけません、身体の各部品がかなりやられてきています。
孫と手をつないで歩くとき、
孫と一緒に遊ぶとき、
あの元気さにはとてもついていけません。
ただニコニコ笑っているばかり。
これがおじいちゃんと呼ばれるゆえんでしょうか。
でも、これでいいのです。
おじいちゃんになって幸せです。
ここまで生きてこれたら本望。
もはやこれ以上何をも望むものはありません。
体調の波のままに自然体でいきます。

つつじの花 (夕焼日記より)

2009-05-11 09:17:42 | Weblog
作品61(夕焼日記より)

ひだひだの、真白のスカートをはいた少女のように、
長い髪を風になびかせながら砂浜を歩く少女のように、
清楚で美しく、
萌えるような白無垢の花をつけた一本のつつじ。
ところどころに緑の花をのぞかせて、
それはため息の出るような気高き花。
芯の芯まで、何もかも、真っ白。
私は、朝に夕にそれを眺めます。
心が洗われます。
気持ちが澄んできます。
見ることの出来る幸せに酔い、かの花に声をかけたくなります。
おまえはいつの間にここへ来て、咲いた。
おまえは毎年こうして咲いていたの。
いつから。
私は忘れていたのであろうか。
それとも、見る目を失っていたのであろうか。
まさかこんなにも感動させる花が我が家にあったとは。
勿体ない、一日でも長く元気でいて欲しい。
神々しいまでの花びらを満載にしたこのつつじ。
私は毎日毎日楽しみにしています。
そして来年も。

世代交代 (夕焼日記より)

2009-05-04 09:35:18 | Weblog
作品60

ここに住んでもはや三十余年。
これまでの人生の大半をここですごしたことになる。
その間のことを物語にしたら、
DVD何枚になるだろう。
原稿用紙何枚になるだろう。
時間は短くても中身はぎっしり、三十年の話。
景色も変わった。
人々の様子も変わった。
いろいろあった、本当にいろいろあった。
あのあどけない息子たちが今や四十二歳、三十八歳だもの。
それに孫たちが。
いつの間に。
ただ、ただ驚くばかり。
語れば長い。
この話、まだまだ続くだろう。
地球に二つとないこの物語を私は不思議に思う。
せめてそのひとかけらでもいい、
誰かに伝えてみたい。
なぜか残しておきたい。
私という生き物が存在したことを。
そして、世代交代の始まるさまを。