シャボン玉の詩

前へ前へと進んできたつもりでしたが、
今では過去の思い出に浸る時間も大切にしなければ、
と思っています。

老いの幸せ (夕焼日記より)

2009-07-27 08:50:14 | Weblog
作品72(夕焼日記より)

ばあさんは太陽を背にして編み物。
じいさんはごろりとなってうつら。
ラジオからはメロディーが流れています。
何の語らいもありません。
それ以上の動きもありません。
二人は穏やかな空気に包まれているのです。
まるで時が止まったように。
生きていることさえ忘れたかのように。
やがてじいさんが頭をもたげました。
今何時ごろかな。
気持ち良さそうに眠っていましたね。
眠ってはいないよ、目を閉じていただけ。
いびきをかいていましたけれど。
へえ、そうかなあ。
婆さんは編み続けます。
そのうちに再びいびきが聞こえ始めました。
何の変化もありません。
時間は止まったままです。
幸せってこんなことをいうのでしょうか。

愛の旋律 (夕焼日記より)

2009-07-20 09:21:31 | Weblog
作品71(夕焼日記より)

愛とは優しさの奏でる美しい旋律。
耳を澄ませてごらん。
あっちからもこっちからも聞こえてきます。
体が震えてくるでしょう。
喜びが体の中へ入ってきたのです。
やがてそれは、全身を揺さぶり始めます。
心の中が洗われているのです。
全てを忘れましょう。
全てを捨てましょう。
全てを受け入れましょう。
思い切り幸せになればいいのです。
思い切り信じればいいのです。
ほら、あなたの顔は優しさに溢れてきます。
愛。
愛の旋律が伝わっていきます。

信じていきます (夕焼日記より)

2009-07-13 09:04:20 | Weblog
作品70(夕焼日記より)

どうしても分からないことがあります。
人はどうしてこんなに欲深いのですか。
人の進化って、欲の塊になっていくのですか。
自分の生まれた地球を食べつくすなんて、
自分の生まれた地球を壊すなんて、
人が人を殺すなんて、
どうしても分かりません。
涙、愛、これらは見せかけの英知なのですか。
いやです、いい加減にしてください。
私、疑いたくはりません。
けれど、何か変です。
何かが起こりそうで怖いのです。
でも、信じるよりほかにすべはありません。
それは私に出来るたった一つのこと。
信じて、ひたすらに信じていきます。
それでいいですね。
本当にそれでいいですよね。

じいさんの写真 (夕焼日記より)

2009-07-06 09:10:42 | Weblog
作品69(夕焼日記より)

ばあさん、この写真あまり良くないね。
写しかたが悪かったのかしら。
いや、それは問題ない、大丈夫だ。
では、何が気に入らないの。
どうもね、人相があまりよくないね。
どんなふうに。
皺が多すぎるよ。
それは仕方がないですよ、写真は正直だから。
これでは葬式用には使えないね。
いいじゃない、ありのままで。
いや、だめだ、しばらくはあの世には行かないことにする。
そのほうがいいわよ、頑張って。
だけど、とき経てば経つほどこの皺増えるかな。
それは増えますよ、でも、貫禄の皺。
なるほど、貫禄の皺か。
そうなれば皆さんも納得すると思いますよ。
それもそうだな、やっぱりもう少し先送りだ。