作品170(夕焼け日記より)
恐怖に身を震わせながら、
最後の最後まで助かりたいと願い、
息を引き取る瞬間まで家族のことを思い、
津波に飲まれていった沢山の人々。
跡形も無い無残な傷跡を繰り返し見た。
そして先日、
一寸先は闇、とはいうが、
私の身近なところで思いもよらぬことが起こった。
彼女は絶対大丈夫、頑丈なひとだからと思っていたのに、
やっぱり生身の身体であった。
痛い、痛いといって睡眠も取れない有様。
見通しの立たぬ不気味な病に取り付かれている。
身をよじるほどの痛みに苦悶する彼女が可哀想でならぬ。
私も病人、余程肝を据えてかからねばならん。
今日は又やけに気分のすぐれぬ日である。
冷たい雨がパタパタと音を立て、心の張りを打ちのめす。
ふらふらした頼りない心臓が身体を動かすことを拒む。
悶々としながらもごろごろばかりではどうにもならぬ。
けたたましく気合を入れ、慣れぬ家事に取り掛かる。
残り少ない人生とはいえ、まだ先がある。
行き着くところまでは行かねばならぬ。
あの、被災に遭った人々のことを考えてもみよ。
我、はるかに及ばず。
これも試練、その先には必ず光があるはず。
人の道は遠く、つくづくそう思う。
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