地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

トンボロと陸繋島

2009-10-21 | つれづれ
ウィリーウィリーほど頻繁ではありませんが,ときどき誤用される地理用語の一つにトンボロがあります.写真は8月に北海道に行った際に撮影した,函館の夜景です.陸繋島(りくけいとう)である函館山から,陸繋砂州(りくけいさす)である低地の市街地を眺めています.トンボロは陸繋砂州のみを意味する言葉ですが,誤って陸繋島もしくは陸繋島+陸繋砂州の意味で使われることがあります.たとえば,ウィキペディアの「トンボロ現象」の記事は次のようになっています.

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トンボロ現象とは、普段は海によって隔てられている陸地と島が、干潮時に干上がった海底で繋がる現象。陸繋島(りくけいとう - トンボロ)の成立過程の過渡的な状態に起こる現象と考えられている(以下略)。

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この他にも,「陸繋島(トンボロ)」のような書き方をしているウェブの記事が多数あります.さらに,陸繋砂州のことを「陸繋島(トンボロ)」と書いたと読める例もあり,かなり混乱している感じです.

これは日本人が,トンボロという音からは意味を全く連想できないのが原因と思われます.トンボロ(tombolo)は元々はイタリア語とのことですが,英語,ドイツ語,フランス語などでも同じ単語が陸繋砂州の意味で使われています.また,tomboloはラテン語のtumulusに由来し,後者は小丘を意味するそうです.したがって,ヨーロッパ系の言語を母国語とする人であれば,音から意味を連想できるのかもしれません.ただし,小丘の形状を考えると,tomboloは陸繋砂州ではなく陸繋島のように思えます.

しかし,tumulusは古墳のような盛り土による小丘であり,基盤岩の高まりではないので,語源からみても「トンボロ=陸繋砂州」で問題ないようです.

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2 コメント

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Unknown (田代博)
2009-10-21 12:36:18
小口先生
この件、現場でも困っています。さすがに教科書レベルでは混乱はありませんが、公的機関のホームページに「陸繋島をイタリア語でトンボロといい」と書いてあると、あれ、自分が間違っていたのかなと焦ったことがあります。
http://www3.pref.kagoshima.jp/kankou/touris/shosai/471/
何とかしないといけないですね。
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You know! (OGU)
2009-10-21 23:59:12
田代先生

僕は少し前に,帝国書院の資料に関連した記事を書いた際に,誤用がかなりあることに気づきました.

でも,「トンボロの代表例は江ノ島」とか言われたら,僕も頷いちゃいそうです.困ったものです.
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