goo blog サービス終了のお知らせ 

地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

イタリア・シンポジウム

2010-02-11 | できごと
本日,東大農学部の弥生講堂で,イタリアの考古発掘プロジェクトに関するシンポジウムが行われました.僕は過去7年間ほど,このプロジェクトに関与してきましたが,今回が一つの区切りになります.そこで,これまで多数の仲間と行ってきた研究を総括する発表を行いました.

発掘の場所はヴェスヴィオ火山の北麓で,ワインを醸造していた部屋を含む建物が,5世紀の噴火の後に生じた土石流によって埋没しています.噴火で生じた裸地からの土砂流出が重要であるため,1991年の噴火で土地が荒廃したフィリピンのピナツボ火山でも研究を行い,比較しました.

今回の発表では,建物がなぜそこにあったのかを,上流域の地形・地質から推定される水資源の分布と関連づけました.同時に,噴火後の土砂移動を強く規定する,植生の回復速度についても検討しました.

このシンポジウムは毎年2/11に行われ,イタリア人の発表者が多数招待されます.プロジェクトのリーダーである,国立西洋美術館館長の青柳先生のパワーを感じます.

発掘が進んで古代のワイン醸造が明らかになった時点で,僕のやる気が倍増しました(笑).ワインの醸造にはブドウと水が必要です.火山の山麓は,土壌や日射の点ではブドウ栽培に適することが多いのですが,水を得やすいとは限りません.ヴェスヴィオ火山には涸れ谷が多いので,地下水の得やすさがワイン醸造の成否を決めたと考えられます.実際,遺跡の上流域は,ヴェスヴィオ火山に発する流域の中で,水の供給が相対的に多いことを示す特徴を持っています.

The water will change to cherry wine.
And the silver will turn to gold.
(Time out of Mind / Steely Dan)