カディスの緑の風

スペイン、アンダルシアのカディス県在住です。

現在は日本の古い映画にはまっています。

祈りの言葉

2013-08-22 22:48:22 | 日記



先日DVDでみた『たそがれ清兵衛』という映画で、清兵衛の幼い長女が

論語の一節を暗唱する場面があった。


むかしはこうして幼いころから、暗唱する、という学習法があった。

意味などは難しすぎてわからないけれど、言葉として、音として、

耳から聞いたことを口に出して何度も繰り返すことで、

それが若い脳にインプットされる。


その言葉の意味は、成長するにしたがって次第に解読していく、という

プロセスなのであった。



わたしはキリスト教徒ではないが、外国かぶれだった父親が、

どうしても、とわたしを家からバスで10分くらいのところにある、

カトリック系の幼稚園に二年保育させることにしたのだった。


それで、わたしは毎日、バスにのって、幼稚園に通った。

幼稚園の入り口の門の脇には、美しい白い聖母マリア像が

たっていて、修道女たちはそこを通るたびにたちどまり、

膝をまげ、頭を下げて黙礼するのだった。


敷地内には、白いペンキが塗られた木造の洋風建物がいくつか

あって、内部は天井が高く、外国にいる気分にさせた。


そしてその翌年には妹も、三年保育、ということで

幼いのにわたしと一緒にバスで通うことになったのであった。





幼稚園はカトリックの修道院が経営していたから、

日本人修道女もいたけれど、

外国人のシスターたちも多くいらして、それに

恰幅のいい、アッシジの聖フランチェスコのような

こげ茶色の服にロープのようなベルトをしめた神父さんと

言葉をかわすことも頻繁だった。

彼らはカナダ人で、片言の日本語で幼稚園児に

やさしくお話してくださるのだった。




幼稚園では、毎日、聖書のお祈りを捧げるのが日課だった。

今でもその祈りの言葉を思い出すことができる。







天にまします われらの父よ

願わくは、み名の尊まれんことを、

み国の来たらんことを、

み旨の天に行なわるるごとく地にも行なわれんことを。

われらの日用のかてを、

今日われらに与え給え。

われらが人にゆるすごとく、

われらの罪をゆるし給え、

われらを試みに引きたまわざれ、

われらを悪より救い給え。

アーメン。



これは『主の祈り』と言うお祈りだったそうだが、

幼いわたしには何もわからず、言葉の意味もわからず、

ただただ両手を合わせてお祈りの言葉をくりかえしていた。

調べて見たら、このお祈りはもう正式には使われなくなって、

別の翻訳の言葉になっているようだ。



そして聖母マリアにはこのようなお祈りがあった。





めでたし聖寵満ち満てるマリア、主御身とともにまします。

御身は女のうちにて祝せられ、ご胎内の御子イエズスも祝せられたもう。

天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終のときも祈り給え。

アーメン。


これは『天使祝詞』というお祈り、と今になって知った。




久しくこの二つのお祈りの言葉を思い返すこともなかったのだが、

ふと、思い出して、こうして文にしてみると、

『悪』『罪』『罪人』と言う言葉がでてくることに気が付いた。



この『罪』と『罪人』の定義については、今まで検証してきたように

ある程度、理解が進んできているが、

『悪』というもの。これはいまだに不可解である。



「主の祈り」の中には、「われらを悪より救いたまえ」とあって、

悪が常にわれわれをおそおうと虎視眈々とねらっているような

そんな雰囲気がある。


しかしその「悪」とはなんなのか?



神は全知全能の神、創造の神、ではなかったのか。

悪というものが、神とは別に存在し、

われわれはその悪に誘惑される危機につねにさらされている、

というのか。



どうもよくわからない。しかしわからないからミステリアスで

興味深い。「悪」についてはさらにさまざまな視点から考えていく

必要があるし、またそれが楽しみでもある。




一つ、余計なことだが、わたしが通ったクリストロア幼稚園、

クリストロアの意味も知らずにいたが、クリストはキリスト、

ロアはフランス語で「王」の意味があるのだ。



この幼稚園を経営する修道会はもともとはカナダからの

宣教師団だったようで、カナダでもフランス語圏の

ケベック地方から来たのだろう。


幼稚園は園児数減少のため、今年3月で閉園してしまった、という。

でも修道院はまだ残っているらしい。


しかしあの瀟洒な異国風の建物も、

大柄で、ほっぺがピンク色でつやつやして、

片言の日本語でやさしく話しかけてくれた

カナダ人のシスターたちも

もうこの世とは縁のない世界に

行ってしまったことだろう。













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