BIRDのブログ&ファンフィクション

往年のアニメ 「科学忍者隊ガッチャマン」の大ファンです。
この話題を中心に日常のことなどを綴ってみました。

火の鳥 その後 #9 青い瞳

2017-04-02 21:33:15 | ニュース
 #9  青い瞳


 「気分はどうかな?何か思い出したことはあるかい?」
ドクター・オーウェンは時間さえあれば捜索隊に救助された生存者の病室を訪れて問いかけてみた。
「いえ、何も…申し訳ありません」
国連から優先的に廻された医療機器や機材で詳しい検査を行った結果、臓器や脳、骨に異常は認められないものの、
男女二人の生存者は未だに記憶を取り戻してはいなかった。

毎度、ドクターから繰り返される問いにはかばかしい返事ができなくて、当惑したような表情を浮かべる
若い彼がいじらしくドクター・オーウェンは柔和な笑顔を向けた。
「謝らなくていいんだよ、君が悪い訳じゃない。それより、脚と腕の具合はどうだい?少しは動かせるかね?
身体の痛みはどうかな?」
「もう大丈夫です、歩けます」
被りを振るその表情を見やって
「無理をしなくていい。腕はまだ腫れが引いていないし、脚の状態もまだ完全とは言えないね。
身体中に打撲傷もある。君にはまだ安静が必要だよ」
右腕に続いて左脚の様子や全身を丁寧に診ながらドクター・オーウェンは静かに言った。

「でもドクター、俺はたいした怪我をしていないし、ここにはギャラクターとの戦いで傷ついた
人達が大勢いる。なにかしたくても、俺は自分の名前すらわからないんだ!」
何も思い出せない焦れったさに感情が昂ぶって来たのか、形のいい手がブランケットを握り締め、
ドクター・オーウェンを見上げる大きな青い瞳が潤んだ。
「きっと君はこれまで多くの人の役に立ってきたのだろうね」
診察を終えたドクター・オーエンは傍らの椅子を引き寄せて腰を降ろし、真っ直ぐこちらを見ている
大きな眸に言い聞かせるように続けた。

「いいかい?たいした怪我どころか、君は左脚の捻挫だけでなく右腕もひどく痛めているんだよ。
広範囲な打撲傷もある。いずれも回復に向かっているとはいえ、特に右腕の方は神経を痛め
なかったのが不思議なくらい深刻な状態だった。まるで何かを強く握り締めていたようだったね。
それに君がここに運ばれて来た時、身に着けていた衣服や靴は焼け焦げ引き裂けてもいて当初、私たちは
重傷を覚悟したくらいだった。しかし、君は身体中に打撲傷があったにもかかわらず、
火傷や頭部の怪我、内臓の損傷や骨折などの重篤な症状はなかった。これは奇跡とも言えるんだよ。
無理をしないで今は怪我を治すことを第一に考えよう。君もギャラクターとの戦いで傷ついた一人なんだ」
ドクター・オーウェンはブランケットを掴む指の長いがっしりとした男らしい手に年輪を重ねた
自分の手を伸べて宥めた。

「科学忍者隊のおかげで地球は救われたんだ。地球を守るために戦い続け、遂にギャラクターを退けてくれた
彼ら、科学忍者隊の為にも我々がこれから為すべきことはたくさんある。焦らなくていいんだよ」
ドクターオーエンは息子ほどの年齢の若い患者に向かって噛んで含めるように諭し、ようやく頷いた彼の長い睫毛から
零れて白い頬に伝った涙を拭ってやりながら慰めた。
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