不思議活性

『青春の恋と詩』 <趣味の部屋・詩と私>

 『青春の恋と詩』



 今になって言える、青春の恋。男女がお互いに惹かれる恋愛ですが、青春の恋は最終的に別れてしまうことが多いのでは・・・・。長い年月が過ぎ、振りかえってみると結ばれなかったことによって、かえってその恋は、いつまでたっても青春の想い出として・・・・。
 
(日本大百科全書によると、恋愛は男女の対人関係の一つであって、相手と合一しようとする強い愛情をいう。 その根底には強い性的興奮がある。青年期に多くみられる現象で、青年期に性の発達が進み、異性を求める欲求が強まるためと解されている。とあるのですが。)

 ときに、文学的というか、ロマンチックなおもいの青春の恋。どこへ向かって行くのかわからなくて、ときに心がざわざわして・・・・。でも、どこか純粋なおもいの『青春の恋と詩』です・・・。

<アルバム SOUNDS OF SILENCE>より。

『4月になれば彼女は』

4月になれば 彼女はきっとくるだろう
雨で小川の水かさが増す頃は

5月になれば 彼女はここに落着くだろう
ぼくのうでの中で再び眠りながら

6月になれば 彼女は気分をかえ
落着かない素振りで夜をさまようだろう

7月になれば 彼女は飛んで行ってしまう
行ってしまうなんて一言も告げずに

8月になれば 彼女はきっと死んでしまう
秋の風は寒々と冷たく吹いて

9月になれば ぼくはきっと想い出す
一度は新しかった恋も古びてしまったことを

<立原道造詩集>より。

『またある夜に』

私らはたたずむであろう 霧のなかに
霧は山の沖にながれ 月のおもを
とうせんのようにかすめ 私らをつつむであらう
灰のとばりのように

私らは別れるであろう 知ることもなしに
知られることもなく あの出会った
雲のように 私らは忘れるであろう
水脈のやうに

その道は銀の道 私らは行くであらう
ひとりはなれ・・・・・・(ひとりはひとりを
夕ぐれになぜ待つことをおぼえたか)

私らは二たび逢はぬであらう 昔おもふ
月のかがみはあのよるをうつしていると
私らはただそれをくりかへすであらう

 『のちのおもひに』

夢はいつもかへつて行った 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を

うららかに青い空には陽がてり 火山は眠っていた
―そして私は
見てきたものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいていないと知りながら 語りつづけた・・・・・・

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう

<永瀬清子詩集>より

『あけがたにくる人よ』               

あけがたにくる人よ
ててっぽっぽうの声のする方から
私の所へしずかにしずかにくる人よ
一生の山坂は蒼くたとえようもなくきびしく
わたしはいま老いてしまって
ほかの年よりと同じに
若かった日のことを千万遍恋うている

その時私は家出しようとして
小さなバスケット一つをさげて
足は宙にふるえていた
どこへいくとも自分でわからず
恋している自分の心だけがたよりで
若さ、それは苦しさだった

その時あなたが来てくれればよかったのに
その時あなたは来てくれなかった
どんなに待っているか
道べりの柳の木に云えばよかったのか
吹く風の小さな渦に頼めばよかったのか

あなたの耳はあまりに遠く
茜色の向うで汽車が汽笛をあげるように
通りすぎていってしまった

もう過ぎてしまった
いま来てもつぐなえぬ
一生は過ぎてしまったのに
あけがたにくる人よ
ててっぽっぽうの声のする方から
私の方へしずかにしずかにくる人よ
足音もなくて何しにくる人よ
涙流させにだけくる人よ


・『4月になれば彼女は』は、ポール・サイモンの奏でるギターに乗せて、詩の内容は別にして、ロマンチックな響きです・・・・。
 立原道造の詩『またある夜に』、『のちのおもひに』は、24歳で逝去した立原道造のまさしく青春の詩であるのですが、そこには、24歳とは思えないどこか人生を達観したようなおもいがあり、私の心を不思議な世界に運んでくれます。
 また、『あけがたにくる人よ』は、八十歳を過ぎた永瀬清子さんの詩ということを知って驚いた私です。老いを見つめつつ、生を瑞々しく描き出した作品ということで、私自身、自分を見つめ直すとともに前向きな気持ちになります・・・・。

                    <趣味の部屋・詩と私




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