C-LEAD2は、夏休みを終えてキャンパスに戻ってきた二年生を対象とする四日間の集中プログラムです。このコースは、本格的な秋学期の再開を前に、各人のself-awarenessを高め、二年目における成長目標やリーダーシップのあり方を考察する機会として設けられています。
C-LEAD2の一日目から三日目は、学生のフィードバックを受けて年により大きく内容が変わります。本年度は、Diversityを促進するためのInclusive Leadershipに関するクラスディスカッション、教授陣からのDiversityに関する最新の研究成果のプレゼンテーション、チームでのアウトドアアクティビティ等が行われました。

(*国立ホワイトウォーター・センターでのアウトドアアクティビティの一風景より。アクティビティの種類はチーム単位で主体的に選ぶことができます。)
例年、四日目には、Marketplace of Ideas / Fuqua Legacy Incubatorと題して、Fuquaのコミュニティを改善するアイデアを二年生から募る催しが行われます。ここでは、約2時間の間に可能な限り多様なアイデアを出して一気に集約するため、以下のような3ステージ方式がとられています。
最初に、400人の学生が5-6人単位のチームに分かれ、ブレインストーミングをした上で、各チームベストのアイデアを30-40人一組のディスカッションルームに持ち寄ります。次に、12部屋に分かれた各ディスカッションルームでそれぞれ一つの提案に集約していきます。最終的に、400人全体の前で各代表提案について3分×12人のプレゼンと投票が行われ、高い支持を得た案を当年度以降のコミュニティの改善案として採用するという仕組みです。


投票の結果、昨年度はInternational StudentのRecruitingを支援するための取り組みが選ばれ、本年度は、普段接点のない学生とサポート関係を構築するための、Fuqua Scramblesと銘打った行事案が最多得票を集めました。
日本の教育機関でコミュニティを改善するといえば、校則・規則の制定や施設・物品の整備といった、学校側からのトップダウンの取り組みをイメージする方が多いのではないでしょうか。Fuquaではなぜこのような改善プロセスを採用しているのでしょうか?C-LEAD2を終えて振り返ると、学生側の発案と投票からなるボトムアップのプロセスには、次のようなメリットがあると考えられます。
まず、ボトムアップの改善プロセスは、解決案の量と質においてトップダウンの改善を圧倒的に凌駕するポテンシャルがあります。多様な人材が集まっている中、400人からのアイデアを集約するプロセスでは、予想もできなかったような意見も多く集まります。各学生の実感から生まれたアイデアには、かゆいところに手が届く妙案を期待することもできます。FuquaのようなDiversityに富む環境にあっては、ボトムアップ方式で思考を拡散させる段階を確保することは、Diversityを成果に転化する正攻法になるようです。
また、参加的な意思決定プロセスには、実行する際の当事者意識を高める効果が見込まれます。誰しも自分が関わったアイデアには多少なりと愛着がわき、主体的に携わる傾向が強くなるものです。学校側から見れば、アイデア自体を得ることに加えて、改善プラン実行時のコミットメントを高められるのは一石二鳥の方法です。つきつめれば、ボトムアップ方式でアイデアを募る学校側の真意としては、学生が当事者意識を持って課題解決を真剣に考えるようになる「人の育成」という要素が大きいのだろうと思います(Fuquaでは、この姿勢をImpactful Stewardshipと呼んでいます)。
そして、プロセス自体がリーダーシップやコミュニケーションスキルを鍛える実践の場となります。コミュニティを改善しようとする中で、アイデアを出し、集団で意見を集約し、説得していくという過程には普遍性があります。3分間のプレゼンというスタイルは、プロセス自体から学んでほしいという学校の意図を象徴しています。アイデアを比較する際にも、ニーズの大きさや予算・人員の制約を考慮した、成熟した議論が交わされていました。
このように学校にとっても学生にとってもメリットの多い方法ながら、ボトムアップでアイデアを集約するプロセスは、スピードの遅さや参加者のモチベーションのばらつきが問題となりやすいものです。しかし、この日のMarketplace of Ideasは活発な議論がありながら非常にスムーズに進み、投票に迷うような質の高いアイデアが集まりました。2時間で400人分のアイデアを集約するというスケールで決定プロセスをうまく機能させたのは、チーム単位で意見を出し合ってまとめることを常日頃繰り返してきた、Team Fuquaらしいワンシーンでした。
