Duke MBA 日本人ブログ

Duke University - Fuqua School of Business(非公式)

Fuquaの2年間で印象に残った授業:Strategy ImplementationとEnergy, Development and Global Environment Seminar Series

2019-05-02 20:24:50 | 授業紹介

2年生のYNです。最終試験を終え卒業が目前に迫っています。受験生の皆さまにお伝えしたいことは山ほどありますが、今回は特に印象に残った授業2つを取り上げたいと思います。

1.Strategy Implementation

必修で学ぶ戦略論がそのデザインを扱うのとは対照的に、このStrategy Implementationでは戦略の実行を取り扱いました。

事業環境の複雑性や変化の速度が増す今日のビジネスにおいては、戦略のデザインと比して戦略の実行に関する知見の重要性が高まっています。この授業では、戦略の実行を担う組織というシステムを、「人材」「組織文化」「組織構造」「意思決定権」「インセンティブ」「業務プロセス」といったパーツに分け、個別に、またそれぞれの相互作用について分析しました。そのうえで、組織改革や、イノベーション、複数の戦略目標の追求など、現代の組織が直面する重大な課題について議論するものでした。

授業の構成も面白く、冒頭で学生の一人がケースの登場人物であるCEO等の議長として指名され(いわゆる「コールドコール」)、ケースのサマリーと自分の意見を述べたうえで他の学生からとの質疑応答を取り仕切ります。また、授業の終わりにも別の学生が指名され、通常のビジネス会議と同じようにラップアップすることが求められます。誰が指名されるかはその時まで分からないため、他の授業と比べてもずば抜けて準備の負荷が高かったですが、その分学生の集中度が高く議論が白熱しました。

印象に残っているケースは何かと問われれば思わず「全部」と答えたくなりますが、最も印象に残っているFBIのケースをご紹介します。9.11後、FBI長官就任直後のムラー氏は重大な組織的問題に直面します。それまでFBIはリソースの殆どを犯罪の事後捜査に費やしていましたが、国際テロ組織の活性化を受けて、犯罪の未然の阻止という任務も遂行しなければなりませんでした。犯罪の未然阻止には、全く異なる「人材」(足を使って犯人を捜す捜査官vs テロ組織の情報を分析する分析官)が必要で、異なる「組織構造」(地域のネットワークを使う捜査体制vs 地域横断的な協力体制)をもって、異なる「意思決定」のコントロール(支局による迅速かつ柔軟な判断vs 中央による統合的な判断)をしなければなりません。非常に難しい課題ですが、授業の冒頭でムラー役として指名された学生の準備は完璧で、事前課題であった研究論文(戦略論ではambidexterityと呼ばれる分野の論文)に基づくフレームワークに沿って組織システムの変革を提案します。しかしながらその提案に対し、他の学生は「インセンティブ」や「業務プロセス」の面での問題点など、多様な視点でチャレンジしていきます。授業の終わりには、このケースのその後が教授から語られ、論文のフレームワークに基づきFBIの組織改革が実施されたもののうまくいかなかったことが明かされ、理論の限界と現実への適用における調整の必要性が強調されました。このambidexterityは、企業も既存事業と新規事業の両立(例:新聞社における紙新聞vs デジタル新聞)などといった形で直面する論点であり、大きな学びを得た授業でした。

この授業が素晴らしかったのは、扱うテーマの良さもさることながら、担当教授のJohn de Figueiredoの能力や姿勢もあったと思います。Strategy Implementationのあらゆる論点に詳しく、最新の理論に精通しその限界も知ったうえで議論を導ける能力に加えて、学生へのフィードバックだけでなく学生からのフィードバックも大切にするその姿勢により、授業の深みが増したように感じました(実際、論点の広さから授業で取り扱うのが難しいため、トップスクールでも4-5校しかこの分野の授業を提供できていないとのことでした。)。私だけでなく周りのアメリカ人も「こんな授業を取りたくてビジネススクールに来た」と言える、素晴らしい授業でした。

2. Energy, Development and Global Environment Seminar Series

もう一つの授業は、エネルギー・環境分野に興味がある学生であるなら必ず取ることをお勧めするセミナーシリーズです。エネルギー・環境の分野で最先端を走るビジネスパーソンから全6回の講演を受けられる貴重な機会でした。

私は石油開発業界で働いているため、特にStatoil(現Equinor)とGeneral Motorsの講演テーマが興味ドンピシャで面白かったです。石油開発業界では、Equinorは再生可能エネルギーのポートフォリオ構築や油価変動に応じた資産整理について高い評価を受けており、前々から興味を持っていました。講演者はCorporate Venture Capitalのヘッドで、成長モデルとしての社内VCという視点からも得るものの大きい講演でした。また、講演者と昼食をとりネットワーキングをする機会もいただき、講演では語られなかった他の投資機会や、バリュエーション体制、社内で受ける圧力についてなど、突っ込んだ話も伺えました。GMは電気自動車や自動運転等の普及による「0事故、0排出、0混雑」ゴールの達成について講演で、トヨタ自動車との戦略の違いを見出すこともでき、これも面白かったです。

他社の戦略について聞ける機会というのは、働き始めるとなかなか得られないものだと思います。その意味で、このセミナーシリーズは、ビジネススクールの学生の特権を使い、自分の興味あるテーマを掘り下げて情報収集できる格別の機会でした。エネルギー・環境分野の強いネットワークを持つFuquaだからこそ提供してもらえる機会であり、改めてFuquaを選んで良かったと思わせられる選択授業となりました。

 

Fuquaは上記のStrategy / General ManagementEnergyに当たる分野の授業以外にも、面白い授業が沢山あります。もし特に興味のある分野があれば、是非現役の学生にお問い合わせください!