こんにちは、2年生のYTです。Fall 2も終わりに近付き、MBA生活も残り5カ月となりました。最近、「MBA生活、アメリカ生活もあとわずかか…」と感慨に浸ることが多くなってきましたが、それと同時に「MBAは自分にとって価値があったか?Fuquaに来てよかったか?」と考えることも多くなりました。本来MBAの価値についてブログで語るのはMBA卒業間近にすべきことなのかもしれませんが、卒業が近付くと想い出が美化される可能性もありますので(笑)、卒業を5カ月後に控えた今というのがいいタイミングなのかなと思いますし、このブログを残りのMBA生活をよりintentionalに過ごす契機にしたいと思います。
なお、私は日系金融機関からの社費派遣です。従いまして、「転職して給料がアップするので、授業料や2年間の機会費用(給料が貰えない)を考えても数年間でpayする」といったROI系の話ではなく、純粋に“学び”という視点で私にとってのMBAの価値を考えてみたいと思います。
1 MBA志望動機について
・Essayで書いたかどうかは別にして、私の本音ベースのMBA志望動機は以下の通りです。
①銀行での事業再生の経験を通じて、自身のスキル不足を痛感。経営全般にかかる知識を体系的に習得し、自身のスキルアップを図りたい。
②受験英語は苦手ではないが、純ドメであり英語でのコミュニケーション力は著しく不足。勤務先は日本有数の機関投資家として海外に広く投資しており、今後を見据えて英語をビジネスレベルまで引き上げたい。
③元来保守的で自分の殻に閉じこもりがちなので、厳しい環境に身を置くことで人として、ビジネスマンとして成長したい。
④大学時代部活に明け暮れて一切勉強しなかったことを後悔(笑)仕事に役立つことを社会人という立場で目一杯勉強したい。
・日系企業においてはMBAが昇進等において評価されないことが多いと思いますが、私の尊敬する優秀な先輩も「MBA取得を考えたけど、社内で評価されないから」という理由でMBAを取得しないという選択をされました。私自身、MBA取得自体が評価されるものではないという点については百も承知でしたが、「他人に評価されるかされないかという部分に軸を置くのではなく、自分自身が成長できるかできないかという部分に軸を置きたい」と考え、MBAに行くのと行かないのとでどちらがより成長出来るか、という点を考え、MBA取得という選択をしました(なお、どちらがより成長出来るか、というのは個人の価値観によりますので、MBAを取得しないという選択をされた方を否定するものではありません)。
・なお、Fuquaについては、general management全般に強いことに加え、チームワークを重視する校風で名高いことから、経営全般にかかる知識習得、英語力・ソフトスキルの向上という面で自身のMBA志望動機と合致していたことから、進学を決めました。
2 実際にMBA生活を送ってみて感じたこと
・上で書いたMBA志望理由を、①ビジネス知識習得、②英語力向上、③ソフトスキル(リーダーシップ、思考力 etc)向上、④勉強欲(笑)、と簡記させて頂くと、この全てを満たしてくれたというのが正直に思う所です。特に④については、受験生時代を含めて嫌というほど満たしてくれました(笑)②の英語力については、自分の英語は本当に下手くそで2年間では全然足りない、生涯学習が必要、と気付いた点が一番の学びだった気もします。
・一方で、①、②、④はMBAの本質的価値ではないのではないか、という気もしています。
①ビジネス知識習得:strategy, marketing, finance, accounting, operation, economics, statistics…と沢山の知識を学び、とてもためになったのですが、MBAの本質的な価値なのか、と問われると違う気がしています(自分のMBA留学の主目的は、①だったのですが)。MBAに来た方が効率的に学べる、という点は否定しませんが、これだけ専門書やオンラインコース等が出回っていますので、本当にやる気があればMBA留学をしなくとも日本で仕事をしながら学べるのではないかと思います。従って、MBAで学んだ知識をその後の仕事でapply出来る場面があったかどうかをもって「MBAは役に立たない、価値がない」「MBAは役に立つ、価値がある」というのは、個人的に少し違和感があります。
②英語力向上:MBA留学をした方が英語力を伸ばしやすいとは思いますが、英語力を伸ばすということだけであれば、海外赴任であったり、その他の留学であったり、日本で死ぬほど会話の練習をしたりすれば代替出来ないことはないのかなと思います(自分が出来る自信は全くありませんが…)。
④勉強欲:論ずるまでもありません(笑)
・というわけで、私は③ソフトスキル向上、が私にとってのMBA留学の本質的価値なのではないかと思っていますので、項を改めて記載します。
3 MBAの本質的価値について
・私が思う仕事が出来る人というのは、i)人間的に素晴らしい方、ⅱ)協調性がある方、ⅲ)決断力があって頭のキレる方、なのですが、FuquaでのMBA生活はどの点についても自分に大きな学びを与えてくれました(自分が現時点でi), ⅱ), ⅲ)を満たしているとは口が裂けても言えませんが…)。
i)人間性:正直に申し上げて、私の人間性は特段優れてはいません。日本での大学時代は、外国人留学生には見向きもしませんでしたし、会社に入って同じ課で仕事をしている後輩がいても「何でこんなこと出来ないんだろ?自分でやってしまった方が速いな」と思っていたりしました。但し、留学をしてminorityの立場に置かれ、言葉の壁があっても自分の意見を言わないと生きていけないMBAという環境に置かれて初めて、“やろうと思っていても出来ない”ということがどういうことか分かりました。そして、今までの自分がどんなに小さく、一人よがりな奴だったかということを痛感しました。それと共に、そうした私のことを気に掛けてくれるチームメートに接し、「自分が逆の立場だったらここまで出来るだろうか?」「自分もこういう人間、リーダーでありたい」と思うようになりました。これは私の場合ですが、海外赴任をしてもそこでのmajorityは日本人であるためこうした学びは得られなかったのではないかと思いますし、海外で多くの外国人との本気のinteractionが求められるMBA留学だからこそ気付くことの出来た学びなのではないかと思っています。
ⅱ)協調性:留学前は、“自分自身の能力を高めること、自分の主張を通すこと”に傾注しがちでした。チームで仕事をするということはあまりなく、銀行特有の稟議というものが上司、その上司に上がって行って最終的に決済が下りる、という“縦の仕組み”に慣れきっていました。自分の提出したA案に対し上司がB案を提示してきたら、A案が何故B案より優れているのかを説明することに躍起になっていましたし、最終的にB案がチョイスされた場合には、最初からB案を提示できなかった自分の理屈不足を嘆いていました。しかし、留学を経て考え方が変わりました。Fuquaでは、全ての授業においてチームワークが徹底され、”Diversity”こそがチーム・組織を強くする“ということを理論・実践をもって学びます。前までは自分と他者を比較し、どうにかして他者を上回ることを考えていましたが、他者は自分がどう背伸びしても適わない強みを持っていること、そうした強みを持つ他者と自分が協力すればさらに素晴らしいものが出来ること、を学びました。自分がA案を提出し、上司がB案を提示してきたなら、互いの案に固執することなく補完し合うことでよりよいC案に辿り着くことが出来るのではないか、と思うようになりました。既にチームワークが徹底している上にinternationalな環境にいらっしゃる方にとっては本質的価値にはならないのかもしれませんが、私自身はチームワークを重視するFuquaのMBAプログラムに来て本当に良かったと思っていますし、チームワークについて身をもって学べたことは私にとってFuqua, MBAの大きな価値の一つです。
ⅲ)決断力・思考力:私は、大量に記憶したものをペーパーテストで正確にアウトプットする、という日本式教育に慣れきっており、“答えのない問いに対して自分なりの理屈を立てて他者に対して論理的に説明する”ということが苦手だと感じています。ⅱ)で自分なりの理屈を立てて…、と書きましたが、それは前例踏襲の部分が大きかったり、限られた論点だけ見て理屈を立てればよい、というような類のものでした。しかし、今後会社の中でポジションが上がり、マネージャーとして種々の判断をしていく上では、より大きな視点を持って考え決断する能力が求められると思いますので、こうした思考力・判断力を磨きたいと考えていました。この点において、MBAのケース分析は、“自分が経営者ならどうするか”という大きな視点で自分なりの判断を下し、それを理屈立って説明することが求められますので、思考力・判断力養成のトレーニングとして大きな意味をもっていると思います。ケース分析は時間が掛かる、takeawaysが分かりにくい、実際のビジネスと異なる、等の批判はありますが、限られた情報の中で判断を下すトレーニングとしてはとても優れていると感じます。さらにFuquaでは、どの授業でもチームアサイメントが課されるため、授業外の場面でも“自分ならどうするか”という意見を持つことが常に求められます。仕事でも頭を使いますし毎日何らかの判断は下しますが、“経営者の視点、大きな視点で自分なりの判断を下す”というトレーニングを毎日大量に積めるのはMBAの大きな価値の一つだと思っています(因みにFuquaはケースメソッドで有名という訳ではありませんが、多くのケースメソッドの授業を提供しています)。こうした思考力・判断力養成のトレーニングは、ⅱ)で述べた協調性と相俟ってさらに力を発揮するのだと思います。
4 最後に
・大変長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。MBAのその他の価値としてネットワークもあると思いますが、留学前の動機としてあまり重視していなかったことに加え、私にとってはソフトスキルの面が大きかったので割愛させていただきました。但し、C-Leadのチームメンバーを含め、自分の強み・弱みを含めて全てを理解している色んな国の友達を持てたことは、自分にとってMBAの大きな財産です。
・社費派遣の私にとってMBAに来た意味があったかどうかを考えるということは、“MBAに来て得たもの”と“MBAに来ずに働いていたら得たであろうもの”を比較することに他なりません。働いていたら得たであろうものを想像することは難しく、この比較は非常に困難なのですが、単純に短期的に一つの仕事(企業融資 等)を極めることだけを考えればMBAに来ずに働いていた方がよい気もします。また、MBAに来て、自分がアメリカ人と勝負出来るのはfinance, accountingの知識やチームの議論の流れをまとめる部分であると思いましたが、そうした知識・能力は実務によって培われたものであり、MBAに来ることによって逆に実務の重要性を痛感したりもしました。但し、そうしたことを踏まえても、やはり自分はMBAに来て、Fuquaに来てよかったと心から思っています。FuquaのMBAは、言葉では表しづらいのですが、今後仕事をしていく上で、人を率いていく上で重要なことを教えてくれたと思いますし、そうしたものは今後ビジネスマンとして働いていく自分を長期的に支えてくれるのだと確信しています。
・MBAに何を求めるかは人それぞれ違いますし、MBAを目指すも目指さないも、MBAに価値を感じるも感じないも人それぞれだと思いますが、是非一人でも多くの方にFuqua Communityの一員になって頂ければ幸いです!私は、残り5カ月間の留学生活を全力で過ごしてさらに学びを大きくしたいと思いますし、卒業後に留学での学びを活かせるよう、全力で働きたいと思います!!