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米国FTCが”Fandango” ”Credit Karma”に対しモバイルApp等の第三者機関セキュリテイ評価等の和解命令

2014-08-28 16:05:45 | 消費者保護法制・法執行

Last Updated:April 30,2024 

 連邦取引委員会によるモバイル・ビジネス事業者が開発するモバイルAppに対するセキュリテイ・チェックはわが国に比べきわめて厳しい内容である。これら事業者のカテゴリーも映画のチケット販売業者であるFandangoや個人信用情報提供ニュービジネスであるCredit Karma等が対象になってきている。 

 去る8月19日、 FTCは被申立人たるFandango とCredit Karmaに対する責任を明示した最終和解命令(final orders settling:Decision and Order) (筆者注1)につき承認した旨リリースした。

 これらのニュービジネスの中身もさることながら、筆者が見て共通的な問題点は(1)セキュリテイ対策の不十分性と(2)消費者向けの説明文言の不適格性である。

 これらの問題点は実はわが国の類似の事業者でもきわめて共通的に見られる内容であり、わが国の監督機関の不十分性を補完するとともに、個別企業に対する警告という意味で本ブログをまとめた。 

 FTCの両社との間の最終和解命令にかかるリリース文は、きわめて簡潔に2社の問題と最終和解命令の内容を説明している。そこで本ブログは実務面からFandangoに対する告訴状の内容を詳しく紹介すべく仮訳するとともに、今後20年間にわたる具体的法令遵守、職員・子会社等への徹底、FTCへの報告義務等を概観するものである。 

 なお、Credit Karmaのニュー・ビジネス自体についても、個人情報保護やプライバシー保護の観点から念入りに検証すべき問題と考えるが、それ自体が大きなテーマなので概要のみ取り上げる。 

1.被申立人Fandangoに対する告訴状

(1)FTC最終合意命令にいたる経緯

 FTCサイトFandango, LLC」が次のとおりまとめている。

○2014年3月28日:FTCとFandangoの同意命令を含む合意文書(Agreement Containing Consent Order)

○〃 :FTCの申立書(Complaint) 

○〃 :パブリックコメントを補助する同意命令(案)の分析文(Analysis of Proposed Consent Order to Aid Public Comment In the Matter of Fandango, LLC) 

(2)FTC最終合意命令に関する文書

○2014年8月19日: FTCの最終申立書

 FTCが告発する事実関係・Fandango自体が擁するセキュリテイ上の問題を正確に理解するため、申立書の主要部を仮訳しておく。 

1,2は略す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Fandangoのビジネス実践内容からみた問題点 

3.Fandangoは、消費者が映画の切符、ショータイムを見たり、トレーラ- (筆者注2) 、およびレビュー(映画批評)を購入できるウェブサイトとモバイルアプリケーションを提供している。 

4. Fandangoは、2009年3月にアップルInc.のための同社が開発するオぺレーション・システムであるiOSに対応した「Fandango Moviesアプリケーション」を開発・起動した。

 2010年12月に、FandangoはアプリケーションのiPadバージョンを起動した。Fandangoは、iTunes Appストア (筆者注3) を通してアプリケーションを配布した。そこでは、アップル・コマーシャル(itunes)で同アプリケーションを特集する「 #1:映画のチケット発売業者」として記載されている。iTunes Appストアでは、娯楽カテゴリーにおけるトップ10の無料のアプリケーションの中にFandango Moviesをリストアップしている。同アプリケーションは1,850万回以上ダウンロードされている。 

5. Fandango Moviesアプリケーションのインストールは無料であるが、fandangoは消費者が映画の切符を購入する時にサービス料金を課す。2013年8月の時点で、Fandangoの総チケット売上高の20パーセントはiOSのモバイルアプリケーションの利用顧客から得ている。 

6.Fandango Moviesは、消費者にすでにFandangoアカウントがあるかどうかにかかわらず消費者に映画の切符を購入させる。消費者がチケットを購入するとき、Moviesアプリケーションは、クレジットカードで支払うためにオプションを含む支払い方法の選択を提供する。消費者は、今後の使用のための携帯デバイスの彼らのクレジットカード情報を保存するのを選ぶことができる。

 ユーザがチケットを購入する都度、クレジットカード番号を入れるかまたは以前にデバイスに保存されたカード内情報を選択することで、Fandango MoviesアプリはFandangoのサーバーに「カード番号」、「セキュリティ・コード」、「有効期限」および「請求書送付郵便番号」等消費者のクレジットカード情報を伝える。 消費者が、Fandango Moviesアプリケーションで、Fandangoアカウンを作成するか、またはログインするのを選ぶ時は、同アプリケーションはFandangoのサーバに、Eメールアドレスとパスワードを含む消費者の認証資格証明書(authentication credentials)を送信する。

 セキュリティソケットレイヤー(SSL)証明済認証(Secure Sockets Layer Certificate Validation) 

7.消費者は頻繁に公衆無線LAN(public Wi-Fi )ネットワークを利用すべく、喫茶店、ショッピングセンター、空港などでモバイル・アプリケーションを使用する。 消費者はそのような公共の環境下でFandango Moviesアプリケーションを使用できる。 実際に、同アプリを起動させた時、Fandangoは消費者向けの広報文言として「外出時でも米国中の約1万6000個以上のスクリーン映画と劇場情報に絶えずアクセスでき、そのチケットの購入ができる」と謳い、Fandango MoviesアプリケーションをPRした。 

8.オンライン・サービスでは、消費者との正統かつ暗号化された接続を証明するのにしばしばセキュリティ・ソケット・レイヤー("SSL")プロトコルを使用する。 正当なオンライン接続を認証し、暗号化するために、SSLは「SSL証明書」と呼ばれる電子文書に依存する。 

9.モバイルアプリケーションの文脈では、オンライン・サービス(例えば、Fandango)は、サービサーの本物性(identity)を保証するために消費者のデバイス(例えば、Fandango Movies)におけるアプリケーションにSSL証明書付きである旨を表示する。 次に、事実上、オンラインサービスの本物性について確認するため、アプリケーションはアプリケーションが真性のオンラインサービスに接続することであるのを保証するためにSSL証明書を有効にしなければならない。 この過程を完了した後に、オンラインサービスと消費者のデバイスにインストールされたアプリケーションは、認証されて、暗号化された安全な接続を確立できるのである。 

10.もしアプリケーションがこのプロセスを完全に実行できないとするなら、攻撃者は、無効の証明書をアプリケーションに提示することによって、消費者のデバイスにおけるアプリケーションとオンラインサービスの間に自分を置くかもしれない。 このアプリケーションは、攻撃者がアプリケーションとオンラインサービスとのすべてのコミュニケーションを解読するか、モニターするかまたは変更するのを許容してアプリケーションと攻撃者の間に無効の証明書を受け入れるという取引関係を築くことになる。 このタイプのサイバー攻撃は「中間者攻撃(man-in-the-middle attack)」 (筆者注4) と して知られている。 アプリケーションを使用している消費者もオンラインサービス業者も攻撃者の存在をうまく検出できなかった。 

11. 多くの公衆無線ネットワークでは、攻撃者は中間者攻撃を容易にするのによく知られる「なりすまし技術(spoof techniques)」を使用する。 

12. これらの攻撃から守るために、SSLを使用することで安全な接続を創造するようにアプリケーションを許容するインタフェース(「API」) (筆者注5) に準拠しながら、iOSオペレーティングシステムはアプリケーションを開発者に提供する。 初期設定で、アプリケーションに提示されたSSL証明書が無効であるなら、これらのAPIは、SSL証明書を有効にして、接続を拒絶する。 

13.iOS開発者ドキュメンテーションは、開発者が初期化時の有効設定を無効にするか、またはそうでなければ、SSL証明書を有効にすることができないのを避けるように警告する。その目的は、「有効としないと、あなたが安全な接続を使用することから得られるいかなる利益も除去する」と説明している。

 結果として無効設定による接続では、にせのサーバ接続によりだますことからの保護を全く提供しないため、非暗号化されたHTTPで要求通信を送る場合に比べ安全面で劣る。

14.アプリケーションの開発者は、この点につき無料または低価格で公的な形で利用可能なSSL証明書の有効化につき簡単なテストおよび脆弱性の特定が可能である。 

Fandangoの十分なセキュリテイ検査の不履行 

15. 2009年3月から2013年3月の間、iOS用Fandango Moviesアプリケーションは、iOS APIによって提供された初期設定を無効とし、SSL証明書を有効としなかった。 

16. 2013年3月以前においては、Fandangoは自社の開発アプリケーションがSSL証明書を有効化し、安全な形で消費者の機密個人情報を通信しているのを確たるものとするため必要といえるFandango Moviesアプリケーションを検査しなかった。 Fandangoは、2011年から提供開始したアプリケーションの限られた範囲のセキュリティ監査を行ったが、iOSアプリケーションの公開の2年以上後において、応答者Fandangoはこれらのセキュリティ監査の範囲をデバイスに対し「コードが逆コンパイル (筆者注6) されるか、または非アセンブルされる」、すなわち、脅威が単にそうした攻撃者から起こって物理的アクセスであるときに提示された問題に限定した。その結果、これらの監査ではクレジットカード情報を含むiOSアプリケーションの情報伝送が、安全であるかどうかを査定・評価しなかった。

 17.そのうえ、Fandangoはセキュリテイに関する明確な脆弱性報告を受け取る有効なチャンネルを明確に公表せず、かつ従業員に徐々に脆弱性意識を拡大する代わりに一般的な顧客サービスシステムによる対処をあてにした。

 2012年12月に、セキュリティー研究者は、顧客サービスのウェブフォームを通してSSL証明書を有効にしていないので、iOSアプリケーションが中間者攻撃に被害を受け易いことをFandangoに知らせた。このセキュリティー研究者のメッセージが「パスワード」という用語を含んでいたので、パスワードリセットが自動メッセージで要求して、返答したとき、Fandangoの顧客サービスシステムは、どうパスワードをリセットするかに関する指示を研究者に提供しながら、メッセージに旗を揚げさせた。 次に、Fandangoの顧客サービスシステムは、「解決済」として、セキュリティー研究者の警告メッセージをマークして、更なる調査のためにその情報の検討を深化させなかった。 

18. FTCの専門スタッフがFandangoにこの経緯等を連絡した後、FandangoはiOSのFandango Moviesアプリケーションを検査して、同アプリケーションがSSL証明書を有効にしてないことを確認した。また、ファンダンゴは、脆弱性がFandangoが第三者のために開発して、かつ主催した別々のiOS映画チケット発行アプリケーションに影響したことを見出した。 FTCのスタッフによって連絡された後3週間以内にFandangoは、iOS APIの既定の設定を修復することによって、SSL証明書の有効化を可能にした両方のiOSアプリケーションのアップデート版を発行した。その結果、セキュリティの脆弱性は修正された。 

19.本告訴の被申立人(Respondent:Fandango)は、共に、モバイルアプリケーションの開発およびメインテナンスにおける以下の内容を含む合理的、適切なセキュリティを提供しないという多くの問題ある慣習に取り組んでいた。

a。 iOS APIによってSSL証明書有効化の欠陥を補うため安全化のための他のセキュリティ策を実装せずに提供された初期化時SSL証明書有効化設定を無効化した。

b。 機密の個人情報の伝達が確実に安全となることに失敗するのを含んだ適切なテスト、アプリケーションを監査するか、評価するか、または批評することの保証に失敗した。 

c。 セキュリティの脆弱性の関する第三者からのレポートを受け取ったり取り組むといった適切なプロセスを維持するのを怠った。 

20.これらのFandangoのセキュリテイ検査の失策の結果、攻撃者は、ネットワーク・トラフィックの出力先の変更(redirect)、傍受・妨害、非暗号化、監視・モニタリング、アプリケーションまたはアプリケーションに通信される「クレジットカード番号」、「セキュリテイコード」、「有効期限」および「請求書送付郵便番号」情報の変更ができ得た。

この、クレジットカード情報や認証資格証明書(autentication credentials)の悪用は成りすまし、金銭的被害、保有する個人情報の漏洩やその他のオンラインサービスや関連する消費者の損害を引き起こすものである。 

21.Fandangoは、単にデフォルトSSL証明書合法有効化設定を実装することによって実際の費用をかけずにこれらの脆弱性を防ぎ、またクレジットカード情報を含む消費者の機密個人情報の安全な伝達を確実にしえたたかもしれない。 

Fandangoのプライバシーとセキュリティに関する説明表示問題(Fandango's Privacy and Security  Representations) 

22. ひろめられかつ迷惑がかけられたFandangoは、広めるか、または保存されまたアプリケーションを介して伝送されたクレジットカードやアカウント情報のセキュリテイに関し以下のアプリ内の表現が消費者に広めさせられた。

「あなたのFandango iPhone Applicationは、あなたのデバイス内に関するクレジットカードとFandangoアカウント情報を保存させるため、あなたは便利に映画の切符を購入できるようになる。あなたの情報は、あなたの使用端末に確実に保存され、各取引の間、あなたの承認を持って送信される。」 

23.今後、消費者がFandango Moviesアプリケーションを利用して、チケットを購入する旨「買う」というオプションを選んだ時は、希望するなら消費者のクレジットカード情報につき装置内を格納されるため、利用者は今後安全なチケットを購入するにのあたりアカウント作成は不要である。

Fandangoが行った欺瞞的な表示(Fandango's Deceptive Reperesentations) 

24. Paragraphs22と23で説明したとおりFandangoは明示または暗黙のうちにiOSとしてのFandango Moviesアプリケーションでチケット購買に妥当で適切なセキュリティを提供すると表示していた。 

25.実際のところ事実、Paragraphs7から21の間で述べた多くの例で詳しく説明したとおり、FandangoはiOS用のFandango Moviesアプリケーションでされたチケット購買に関し合理的でかつ適切なセキュリティ措置を提供していなかった。 したがって、Paragraph24に詳しく説明したFandangoの表現は、誤っているか、または誤った情報を与えているといえる。 

申し立てられるとしてのこの苦情に関し、被申立人Fandangoの行為と商慣行は、連邦取引委員会法(15 U.S.C. §45(a))のセクション5(a)違反「不公正または欺瞞的な行為または慣行(unfair or deceptive acts or practices)または影響を受ける商取引」に該当するものである。 

○2014年8月19日:FTCの最終合意決定(Consent Order) 

○ 〃 :コメント者(デラウェア州 Mirta Collazo )に対する礼状 (筆者注7) (筆者注8) 

2.被申立人Credit Karmaの告訴内容、経緯FTC最終合意命令にいたる経緯

(1)FTCサイトCredit Karma,LLCが次のとおりまとめている。仮訳は略す。 

○2014年3月28日:FTCとCredit Karmaの同意命令を含む合意文書(Agreement Containing Consent Order)

○〃 :FTCの申立書(Complaint) 

○〃 :パブリックコメントを補助する同意命令(案)の分析文(Analysis of Proposed Consent Order to Aid Public Comment In the Matter of Credit Karma, LLC) 

○2014年8月19日:最終申立書 

○ 〃 :FTCの最終合意決定(Consent Order;Decision and Order) 

○ 〃 コメント者8名に対する礼状、なお当然であるが文面は描くコメント内容に応じて異なる点は言うまでもない。 

(2)Credit Karmaのビジネス・スキーム

 わが国で詳しく論じているサイトは少ない。その最大の理由はわが国でも与信にあたりスコアリング・システムはあるが、米国のスコアリング・システムと比較するとその機能は大きく異なる。すなわち「クレジットカードを新規に作成する際、日本では勤務先や年収、家族構成、持ち家の有無等から個人の信用力が評価されるのに対して、米国では公共料金や医療費、金融機関からの支払い請求に対して、これまでいかに健全な返済を行ってきたかの実績(クレジットヒストリ)が信用評価の主な対象である。・・・個人のクレジットスコアは、旧来はクレジットカードン作成や融資の申請時に参照されるだけのものであったが、近年では融資以外の与信に関わる様々な場面でクレジットスコアが利用されるようになってきた。各種ローンの金利、保険の料率計算を始め、住宅の賃貸や売買における不動産仲介、携帯電話の新規購入、果ては就職面接に至るまでクレジットスコアが参照されている。・・・個人の信用プライバシー尊重と信用情報開示を求める世論の高まりを受け、1996年の法改正(FCR法)により本人に限り有料で開示請求が行えるようになった。そして、2003年12月には、自分の信用情報を年1回は無料で参照できる権利などを定めた法律(FACT法)が成立し、2004年12月の西部を皮切りに、2005年9月からは全米規模で、より簡易にクレジットレポートが取得できる社会基盤が整えられたのである。」(筆者注9)

 しかし、データ主体がこれら信用情報機関から自身のスコアリング情報を得ようとするとき、手続きは決して容易ではない。その隙間を狙ったニュービジネスがCredit Karmaなのである。 

 ここで、Credit Karmaサイトから事業内容に関する部分を抜粋して、仮訳しておく。一読して理解しがたい内容といえる。 (筆者注10)

Credit Karmaは、あなたのクレジットスコアーを追跡する新しい方法とそこから得られる利益を得るユニークな方法を提供する。初めてあなたは隠れた費用や義務を伴わずに真に無料によるクレジットスコアを得ることができる。あなたのスコアに基づき、あなたはあなたの信用力を評価する会社に排他的な申込のアクセス権を得る。・・・・当社のサービスは無料のクレジットスコアを得ることで始まる。クレジットカードや文字列(strings)の添付は不要である。当社は、もしあなたが当社の別のサービスを利用する場合に関わらず、あなたのプライバシーを保護する最善の措置をもってこれらの無料のスコア提供を続けるでしょう。

・・・あなたが無料のスコアーにアクセスするとき、当社はあなたのクレジットプロファイルに基づき個人的な申込内容を示すことになる。この申込は顧客を力ずけることに付きビジョンを共有する広告主からなされる。あなたがCredit Karma利用の優位性を望むなら、それはあなた次第です。当社はあなたの同意なしに共有はしません。・・・当社が送信するメッセージはパートナー会社からの一方向通信で送るものです。広告パートナーは個人化された申込を提供し、当社は適切な人のみが扱うかたちで照合させます。この申込に消費者が回答しない限りユーザー情報の開示は行いません。消費者の理解がないまま個人情報の売買を行って、その後で情報を追いかけてきた伝統的なクレジットマーケテイングと異なり、当社は消費者に権利と選択権を与えるのです。 

3.FTCのIT事業者に対する同意命令についての関連情報

 2013年12月5日、FTCは「スマートフォンのアンドロイド・フラッシュ・アプリ(Brightest Flashlight)の開発事業者(Goldenshores Technologies,LLC)が消費者の同意なしに位置情報を第三者に提供し消費者を欺いたとされた事件で連邦取引委員会と同意命令(Android Flashlight App Developer Settles FTC Charges It Deceived Consumers:‘Brightest Flashlight’ App Shared Users’ Location, Device ID Without Consumers’ Knowledge」で合意したと報じている。

超光懐中電灯無料アプリ(GoldenShores Technologies, LLC )URLhttps://play.google.com/store/apps/details?id=goldenshorestechnologies.brightestflashlight.free&hl=ja 

*******************************************************************************

(筆者注1) FTCの法執行手順については、例えば、「消費者庁 アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、ブラジルにおける集団的消費者被害の回復制度に関する調査報告書 第1章 各国の制度および状況 1.アメリカ調査報告」が詳しく解説している。その中で、次の解説が参考になるため一部引用する。

「FTCがとりうるエンフォースメント手段は、手続的に分類すると、大きく行政手続である審判(同意命令(consent order)がある。・・・同意命令の手続を利用することによっても、審判手続を経て排除措置命令が発せられた場合と同様の効果が得られる。もっとも、同意命令手続においては、相手方に責任があることを認めなくてよい点が異なる。・・・同意命令は、一種の和解(consent agreement settlements)であるとされている」 

(筆者注2) ”trailer”とは映画、テレビ等の予告編を見せる前宣伝のこと。 

(筆者注3) iTunes Store(アイチューンズ・ストア)は、アップルが運営している音楽配信、動画配信、映画配信、映画レンタル、アプリケーション提供などを行うコンテンツ配信サービスである。(Wikipedia から引用)

 (筆者注4)「中間者攻撃」問題につき、筆者は2006年7月23日ブログで取り上げている。より専門的な解説としては情報セキュリテイソリューション専門会社カスペルスキーの解説e-Wordsの解説が基本となろう。 

(筆者注5) APIとは、あるコンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のこと。

個々のソフトウェアの開発者が毎回すべての機能をゼロから開発するのは困難で無駄が多いため、多くのソフトウェアが共通して利用する機能は、OSやミドルウェアな どの形でまとめて提供されている。そのような汎用的な機能を呼び出して利用するための手続きを定めたものがAPIで、個々の開発者はAPIに従って機能を 呼び出す短いプログラムを記述するだけで、自分でプログラミングすることなくその機能を利用したソフトウェアを作成することができる。(e-Wordsより引用)

 (筆者注6) 逆コンパイル( decompile )とは、機械語で書かれたオブジェクトコードを、コンパイラ型言語によるソースコードに変換すること。そのためのソフトウェアは逆コンパイラと呼ばれる。(e-Wordsより引用) 

(筆者注7) パブリック・コメントに対するFTCの回答文書(仮訳しておく)

親愛なるCollazo様(デラウェア州):

標記に関し、現在進めている本委員会で提案された合意命令に関するコメントをありがとうございます。あなたのコメントは、Fandango、LLCが自社のセキュリティ面の不十分性に気づかず、同時にあなたの自身個人情報のセキュリティに関する懸念を表します。

本委員会は、あなたにとってセキュリティが非常に重要であることを理解しています。今回委員会に提案された同意審決内容は、Fandango、LLCが包括的安全保障プログラムを実行すること、特に今後20年間の本命令の有効期間の間、独立した第三者機関による2年に一度の検査・査定を得るのを必要とした。 これらの要件は、あなたの個人情報が将来保護されるのを確実にするのを助けことになるでしょう。

本委員会はFTCの提案された同意審決のご支援に感謝します。 委員会のRules of Practice 4.9(b)(6)(ii)(16C.F.R.§4.9(b)(6)(ii))(筆者注3)に応じて、本委員会は公的記録に関するあなたのコメントを置きました。本委員会は、現在、最終形態としてまったく修正なしでComplaint、DecisionおよびOrderを発行することにより公益に役立つのが最も良いことを決定しました。最終的なDecision、Orderおよび他の関連材料は本委員会のウェブサイトから利用可能です。本委員会は、重ねてあなたのコメントにつきあなたに感謝いたします。  

(筆者注8) FTCの「Rules of Practice(施行規則)」は、FTCがどのように組織化され、その調査手続き、行政手続きおよび司法手続きに関する行動原則を記述する。 

(筆者注9) 野村総合研究所 角田充弘「消費者個人の信用力指標、米国のクレジットスコア」から一部引用。なお、同レポートは最後に「クレジットスコアに対するID窃盗の脅威」をFACT法との関連で述べている。今回のCredit Karmaのappのセキュリテイの脆弱性の指摘の背景が理解できよう。

(筆者注10) Credit Karmaのビジネススキームについてわが国での解説例を2つ引用する。

○Finance Startupsの2012.9.10 「カードの信用情報を簡単にチェックできる Credit Karma がす げー伸びてる」の解説

「普通の広告ではなく、保険やローンの切り替えや特典の利用といったものだ。 しかも、カードの信用情報というかなり重要な個人情報をベースにマッチングを行なっているので、金融商品の広告には とても相性が良い。2007年5月に創業し、2011年の9月時点で合計300万ドルを調達、既に年商570万ドルを達成している。」 

アーキタイプ社の説明文

「無料で自分のクレジットスコアが知りたいユーザーはCredit Karmaにソーシャルセキュリティーナンバーを登録します。ソーシャルセキュリティーナンバーとはアメリカ国民の個人識別番号で、この情報をもとに Credit Karmaは金融機関から集めた情報をかけ合わせてスコアを計算し、ユーザーにスコアを上げるアドバイスと共にクレジットスコアを通知します。

クレジットカード、ローン、保険商品などを扱う金融機関は通常の広告よりも精度の高い情報をCredit Karmaのユーザーに届ける対価として広告料を支払います。」 

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カリフォルニア州連邦地裁はYahoo!の「暫定クラス・アクション」の棄却申立てを一部認め、一部却下

2014-08-19 18:22:41 | クラス・アクション・ADR

 Last Updated:April 30,2024

 わが国では、米国の民事訴訟における集団訴訟(クラス・アクション)につき実務的な観点から本格的に論じたものが意外と少ない。 (筆者注1) 筆者も決して専門家とはいえないが、米国の大手ローファームであるCovingt on & Burling LLPの8月14日付けブログを読んで、この際、多少踏み込んだ説明を行うべく米国のクラスアクションに関する民事手続法関係サイトを調べてみた。 (筆者注2) 

 その結果、特に「連邦民事訴訟規則(Federal Rules of Civil Proceduret)」第23条(d)および(e)(1)(A)等に定める「暫定クラス・アクション(Putative Class Action )」の正確な定義を述べた解説サイトが意外と少なく、また読者層の反応も薄いと感じた(筆者注3) 。一般的に言えばクラスアクションの要件を厳格に訴訟指揮すべ観点から裁判所による適切な命令や被告との示談、却下、和解を許可することがその内容といえるが、この運用は連邦裁判所により運用が一律的でなく、今回取り上げるような裁判所の解釈が話題になる背景と考える。特に筆者が問題視したのは、同裁判所(裁判官はカリフォルニア州北部地区連邦地裁判事 District Judge Lucy Haeran. Koh(46歳) (筆者注4)(筆者注5)がYahhoo!の実務慣行における連邦の人権保護関連法に対する解釈を行った点に注目した。

Lucy Haeran. Koh

  なお、本件で見るとおり、クラスアクションが起こされこととなった場合、被告は本訴に入る前に、防衛的裁判手続きを取ることはいうまでもないし、クラスアクション自体を起こすことが法律上禁止されている米国法があることも理解しておく必要がある。 (筆者注6) 

1.本裁判の論点の概要

 推定段階にあるクラスアクション事件「In re Yahoo Mail Litig.」における原告の申し立て内容は次のとおりであった。

 ”Yahoo!Mail”の ユーザーと非ユーザー間のやり取りのなかに含まれる情報につき”Yahoo!”が従来から慣行として行っている「傍受(intercept)」、「検査(scanning)」、「解析(analyzing)」、「収集」、「保存」行為は連邦法である「通信傍受法(Wiretap Act)」 (筆者注7) 「保管された通信に関する法律(Stored Communications Act)」の(注5参照)、「カリフォルニア州プライバシー権侵害法(California Invasion Privacy Act):(刑法である)」「カリフォルニア州憲法(California Constitution )」に違反すると申し立てた。また同時に原告はこれらの法律違反に基づき、非ユーザーによる推定クラスアクション原告は「差止め救済(injunction relief)」、「宣言的救済(declaratory relief)」、「法定損害賠償(statutory damages)」 (筆者注8)およびYahoo!が得た「不正利益引渡請求(disgorgement)」を求めた。 

2.同裁判所は、これら各法律につき、順次、次の決定を行った。

(1)連邦通信傍受法(18 U.S.C.§ 2511(1)(a))の適用について

 被告Yahoo!は原告の申し立ての却下をもとめ、現在広く一般的な主張すなわち、通信傍受法は本事件においてEmailにアクセスや検査した時点において、問題となったEmailは保存中で、通過しておらず、傍受は行いようがなかった。この点につき、被告がこの立場を補強すべ裁判手続き上とりたてた証拠を認めなかったとして、この主張は時期尚早であるとして認めなかった。その結果、裁判所は告訴状にいうアクセスした時点でEmailが通過中であったとして事実に関する原告の主張を認めた。

 次にYahoo!は傍受法違反に関する告訴を破棄させるべく2番目の主張である「ユーザーの同意」を持ち出した。すなわち、Yahoo!は全Yahoo!Mailのユーザーが同意する”Global Communications Additional Terms of Service(ATOS))”により、傍受や検査に付き同意を得ていると主張した。裁判所は、ASOS文言を改めて検証した結果、メール内容を公開することにつき.同意文言の明確性が得られているとして、原告の請求を棄却した。 

(2)「保管された通信に関する法律」の適用について

 同裁判所は、同法についての原告の主張すなわち、Yahoo!はYahoo! Mailユーザーと非ユーザー間のメール内容を検査し、その内容を不適切に第三者に開示したという次の申し立てを検討した。

 Yahoo!は、原告の主張はどの情報が被告などの間で共有されたかの具体的内容や誰との間で共有されたか、またいかなる目的で共有されたかという「公訴棄却を申し出に対抗するには、告訴内容は裁判所が真実と受け入れる十分な事実を含み、少なくともその告訴が「もっともらしい(plausibly)こと」を暗示させる側面的に支援させるものでなければならない」という連邦最高裁の解釈判例である「Bell Atlantic Corp.対Twombly事件」 (筆者注9)が求める事実関係の特異性を欠くと主張した。同裁判所はYahoo!の主張および棄却申し立てを拒否し、一方原告のYahoo!が第三者とEmailの内容を共有して事実を証拠だてる参照証拠は却下の申し立てを乗り切るの十分であると判示した。 

(3)カリフォルニア州プラバシー権侵害法について

 カリフォルニア州プラバシー権侵害法に基づく棄却を指示するYahoo!の主張は、前述の通信傍受法に関する主張の繰り返しであった。前述と同様の理由から同裁判所はYahoo!の棄却申し立てを拒否した。 

(4)カリフォルニア州憲法について

 最後に、裁判所は憲法改正を要するとする原告の要求を破棄した。その際、裁判所はカリフォルニア州憲法がプライバシーの侵害権を確立するために「高いバー」を設定することに言及した。そして一般的に、プライバシーの利益とEmailに関するプライバシーの期待はカリフォルニア法において十分に確立していると言うものであった。

 このように、プライバシーの侵害による訴因を申し立てるためには、原告は傍受されたEmailの内容が「機密情報(confidential)」でありかつ「機微情報」である旨申し当てなければならないが、実際はそうではなかった。裁判所は、これらEmailは私的なモノであったとする不十分な主張証拠だけでは被告の申し立て却下させるにははるかに及ばないと判示した。

     *************************************************************************************************

(筆者注1)わが国で全体像が見える資料としては、消費者庁「集団的消費者被害回復制度等に関する研究会」第4回(平成21年2月20日)資料 2-1~9「 アメリカにおけるクラス・アクションについて 」が平易かつ詳しい。 なお、2021年2月28日現在「集団的消費者被害回復制度等に関する研究会・報告書」しか閲覧はできない。

なお、消費者庁サイトで「会議・研究会」の資料は2014年以前は閲覧できない、

(筆者注2) 米国の民事訴訟手続に関する法源や関連先URLに付き基本的な解説がコーネル大学ロースクール・サイト”Civil Procedure :An Overview”にある。わが国でも米国訴訟手続きに関する解説書は広く出版されているが、同サイトは基本となる点を理解するうえで必ず目を通しておくべきであろう。

 なお、わが国の民事訴訟手続きとの比較に置いて米国の裁判手続き上特筆すべき点をあげておく。 

(1)米国では連邦裁判所は「連邦民事訴訟規則」および「連邦証拠規則(Federal Rules of Evidence)」に従い、他方、州裁判所は自州の民事訴訟規則および証拠規則に従う。

(2)連邦裁判所手続きの法源(2009.5.14 筆者ブログなども参照)

① 「裁判準則法(the Rules of Decision Act:28 U.S.C.§1652)」:同法は、州の法(laws)が、合衆国憲法、条約または連邦の制定法に異なる定めがない限り、連邦の裁判所において適用されることを定めている。すなわち、連邦裁判所が州籍相違事件において実体法を生成させることを禁じている

②「連邦最高裁判所規則制定権(授権)法(Rules Enabling Act of 1934:28 U.S.C.2072):同法は連邦裁判所のために実務と手続に関する一般的規則である。規則により実体的権利を縮小、拡大または変更してはならないという重大な制約を課している。 

 なお、クラスアクションは州籍相違事件としての問題が多々発生する。この事態については、駿河台大学・太田幸夫教授「アメリカ法における近時の実体・手続識別論」が詳しく論じており、本ブログでも一部引用した。 

(筆者注3) 「暫定クラスアクション(putative class action)」の説明として、弁護士・ニューヨーク州弁護士 宇野 伸太郎氏の解説「クラスアクション承認基準を厳格化する米国連邦最高裁判決と日本への示唆」から一部抜粋する。 

■クラスアクションの承認

 クラスアクションは裁判所から「承認」(certification)されて初めて正式なクラスアクションとなる(それ以前は暫定的なクラスアクション(putative class action)として手続が進められる)。

 連邦民事訴訟規則23条は、3種類のクラスアクションを定め、それぞれが成立するための要件を定めている。まず、23条(a)は3種類のクラスアクションに共通する要件として、

(1) 提案されているクラス構成員が十分に多数であり(多数性)、

(2) クラス構成員が共通の事実問題又は法律問題を有し(争点の共通性)、

(3) クラス代表者がそのクラスに典型的な請求又は防御を有し(代表者の請求・防御の典型性)、

(4) クラス代表者が公平適切にクラスを代表できる(代表の適切性)

 ことを定めている。

 なお、より米国の詳しい解説としてはJustice Matters Action Center”What Is Putative Class Action”等が参考になる。

(筆者注4) コオ判事は、160年にわたるカリフォルニア州北部地区連邦地裁における歴史において初代のアジア系アメリカ人の裁判官であり、また、最初の女性の韓国系アメリカ人の合衆国憲法第3章(Article Ⅲ)にもとづく裁判官であり、2人目の韓国系アメリカ人の連邦地裁判事である。米国メデイアが注目している女性判事である。

 なお、同判事の両親は韓国からの移民であり、母親は脱北者(탈북자)で元韓国の単科大学教授である。(ニューヨークタイムズのブログ解説) 

(筆者注5) わが国で憲法Article Ⅲ判事の関する政治的プロセスなどは、ほとんど解説らしきもものはない。裏話を解説しているリーガルガイド・サイト「第Ⅲ章連邦地裁判事にあるために必要とされるステップ」を参考として引用しておく。 

(筆者注6) 例えば、連邦裁判所の場合、被告が連邦政府や州政府やその官吏であったり、被告の団体規模が100人以下の場合はクラスアクション自体を起こすことはできない。  

(筆者注7) スノウデン事件や国家安全保障、国際テロの発生など通信傍受法めぐる議会など改正の動きは著しい。 

(筆者注8) 「法定損害賠償」とは、私法上の損害賠償の一種であり、与えられた損害の程度に応じて賠償額を算定するのではなく、制定法の範囲内で規定するものをいう。 

(筆者注9)  Bell Atlantic Corp.対Twombly事件」2007年5月21日判決(550 U.S. 544(2007) の先例としての意義につき、2010年8月28日の 筆者ブログ「米国「スケアウェア詐欺」に見る国際詐欺グループ起訴と国際犯罪の起訴・裁判の難しさ(その1)」の(筆者注9)で次のとおり解説引用している。

*同判決は、連邦民事訴訟規則(the Federal Rules of Civil Procedure)12条(b)(6)に関し、連邦最高裁は約50年間普及してきた「訴えの却下の申立(motion to dismiss)」の解釈につき一連の判決でその解釈基準を変更した。(以下、略す)

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EU保護指令第29条専門家会議が欧州司法裁判所判決を受け検索エンジンと「忘れられる権利」の実装対応の検討

2014-08-15 16:31:02 | EU加盟国・EU機関の動向

 

last updated :August 9 ,2018

  欧州司法裁判所判決やEU情報保護規則草案が定める「忘れられる権利」に対する英国議会上院EU問題特別委員会・F小委員会の第二次報告については、別途本ブログで言及すべく作業中である。 

 一方、EU全加盟国28か国の個人情報保護機関等が構成メンバーである「EU保護指令第29条専門家会議」(以下、「WP29」という)は、主要検索エンジン企業3社(Google、 Microsoft(bing)、Yahoo!)との間で判決内容を統一的に実装・対応すべくガイドライン策定の材料の整理等のための会合を重ねている。 

 今回のブログは、この問題につきWP29のプレス・リリース(7月17日、同25日)および同会議の議長であるフランスCNIL(「情報処理および自由に関する全国委員会:Commission nationale de l'infromatique et des libertes)サイトにもとづき公表している具体的検討内容を紹介するものである。 

 なお、国立国会図書館カレントアウェアネス・ポータル2014年7月28日「EUのデータ保護指令第29条作業部会(筆者注1)が、Google、Microsoft、Yahoo!と会合:“忘れられる権利”をめぐるEUの裁定に関して」が同委員会の7月25日付けリリース等の概要およびURL、解説記事のURL等を紹介している。ただし、残念ながらリンクしているのはURLのみで内容について具体的な解説的訳文はない。 

1.第29条専門家会議(WP29)のプレス・リリースの内容

(1)7月17日付けWP29リリース

 わが国では詳しく論じられていない内容でかつ実務上の重要な論点でもあり、ここで仮訳する。 

 7月15日、全EU加盟28カ国の情報保護当局で構成されるWP29は、2014年5月13日に欧州司法裁判所(CJEU)において下された判決(Case C‑131/12)すなわちインターネットにおけるデータ主体の「忘れられる権利」に関して意見を交換する目的で、ブリュッセルに集合した。その目的は、データ主体の検索作業上(indexing)の削除要求に対し、エンジンが消極的対応を行ったときの監督機関に対する苦情への論理的ガイダンスを策定することにある。 

 この欧州司法裁判所の判断のヨーロッパ市民への統一的実現をすべく見方の中で各国のデータ保護当局は彼らの国籍、居住地および被る被害にかかわらず、個人に検索エンジンに検索作業上の削除を認める異なる法的根拠を分析した。また、この忘れられる権利を実行することへのサーチエンジンの潜在的拒否と同様に忘れられるべき権利を行使のための正確な手法を徹底的に研究した。 

 この議論はとりわけ、削除権を効率的に実施するには、データ主体において欧州連合法に従うと検索エンジンは合法的に請求を拒否できる正確な理由等の全体的理解が必要である点がハイライトであった。 

 また、保護当局は考慮に入れるべき評価基準許容、ある場合には前述の情報にアクセスすることへの公益につき記述した。データ保護当局は、7月24日にそれらと議論するため主要サーチエンジンとCJEU判決を実装するための主要な原則の実務的な問題につき論議する。WP29は、2014年秋にWP29ガイドラインを策定する予定である。 

(2) 7月25日WP29リリース

 同ガイドラインは、データ保護機関が検索エンジンがリストからの削除拒否に伴う苦情をデータ主体から持ち込まれた際に、一貫した取扱いを保証することが目的であり、かつ前記判決内容に応じて検索エンジン会社が一貫しかつ統一的に実装することを確実化するものである。

  なお、今後追加的会合がこの3社以外も加わって行われる可能性が指摘されており、最終的に同ガイドラインをとりまとめる時期は2014年秋が予定されている。 

2.同会議と検索エンジン企業間で行われている質疑応答の具体的内容

 同会議の委員からは、次の質問が出されている。

①貴社は、データ主体からのURL閲覧リストからの削除要求受付時にいかなる正当理由を求めるか。また、貴社はデータ主体の要求を具体化するために更なる動機を求めるか。

②貴社は、データ主体の現在位置、国籍および居住地情報等一定の請求につきふるいにかけるか。

③貴社は、検索結果で得られた次のものは削除するか。

a.EU/EEA のドメインのみ

b.EU/EEAからアクセス可能またはEU/EEA地域の居住者にかかる全ドメイン・ページ

c.世界的規模での全ドメイン

④貴社において、検索で得られる情報のアクセスにおいて貴社の経済利益および(または)公益目的とデータ主体の忘れられる権利とのバランスにおいて削除権を行使する基準はいかなるものか。

⑤貴社は、特定のURLに付き削除を拒否する場合、データ主体に提供する説明や理由はいかなる内容か。

⑥貴社はウェブサイト発行元に対し削除した旨の通知を行うか、また行う場合、どのような法的根拠を発行元に通知するか。 

◎2014年7月31日までに書面により回答すべきとした追加的な質問事項

⑦貴社は、より容易にアクセス可なウェブページにつき削除手順の関する適切な情報を提供するか?。

⑧データ主体の削除要求は、貴社が提供する電子的書式のみに限定されるか、またはその他の手段・方法の利用が可能か?。

⑨データ主体の削除請求は、彼自身の使用言語で行いうるか?。

⑩もし貴社が現在位置情報、国籍または居住地に基づき一定の削除要求をふるいにかける場合、データ主体はいかなる情報を自身の国籍や(または)居住地を証明するために開示なければならないか?。

⑪削除要求者に対し本人たる固有性証拠または一定の認証形式を求めるか、またもし求める場合はいかなるものを求めるか。その理由はいかなるものか?。削除要求に応じた手続目的に関し個人情報保護を実施するための安全装置はどのようなものか?。

⑫貴社は新たなレポートにリンクするすべての検索結果の削除といった概括的な削除要求を受け入れるか?。

⑬貴社が削除要求を受け入れるとする場合、貴社は実際いかなる情報を削除するか。削除要求に反対するため、除去要求への対応としてハイパーリンク (筆者注2)を永久に削除したことがあるか?。

⑭貴社はデータ主体の氏名のみまたはその他の検索用語との組み合わせ(例:Costeja and La Vangaurdia)に基づき削除するか?。

⑮データ主体の氏名がもはや含まれないページ(例示:匿名化原則にそったハイパーリンク)へのハイパーリンクに関する削除要求をどのように扱うか。貴社は、削除要求後、直ちに検索用インデックスに登録するためにファイルまたはウェブサイトに再度アクセス(recrawl)するか?。

⑯データ主体がウェブ上投稿した情報の作者である場合は、削除要求を拒否するか。仮にそうであるなら、当該要求を拒否する根拠は何か?。

⑰削除要求の受理または拒否の関する明確な自動化された手順を有しているか?。

⑱検索結果で示されていない削除の適用合意の材料へのリンクを確たるものにするために使用する技術的解決策を有しているか?

⑲削除要求に関係するため考慮しなければならないし貴社のサービスとはいいかなるものか?。

⑳一定の結果がEU規則に従い削除する点につき検索結果ページを介してユーザーに通知するか。通知を行う場合、その法的根拠はいかなるものか。厳格な意味でのポリシーはいかなるものか。特にその削除要求がデータ主体からの削除要求を欠く場合でも通知を表示するか。貴社は実際の事例で確認または排除しうるか。もしそうであるなら、適用可能な基準を詳しく述べることが可能か?。

(21)貴社は別の検索エンジンプロバイダーと検索結果の削除の共有に関し検討を行ったことがあるか?。

(22)削除要求に対応するための処理平均時間はどのくらいか。

(23)現時点での削除受け入れ/部分的な受け入れ/拒否のパーセンテージ統計はいかなるものか。全体でいかなる件数を回答しているか。1日あたりの回答件数は何件か?。

(24)今後、貴社は全削除要求や削除合意に関するデータベースを作成する予定があるか?。

(25)2014年5月付けのCJEU判決の適用にあたり直面する特別な問題はいかなるものか。特別な問題を投げかける削除要求のカテゴリーが存在するか?。

(26)WP29に対し、特別な事例において貴社との間で意見交換するための連絡窓口情報を提供いただきたい。

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(筆者注1) 国会図書館のWP29(Article 29 Working Party)の訳語「データ保護指令第29条作業部会」については、従来から筆者は異論がある。その理由は次の点にある。情報処理および情報の自由な移送問題につき諮問的立場を有しかつ欧州委員会等EU執行機関から独立した機関である。なお、欧州委員会の立場を反映する機関ではない。その構成メンバーは、①全EU加盟国(28カ国)が指名した国内の保護・監督機関の代表、②EU機関や団体のための保護監督機関(欧州個人情報保護観察局(European Data Protection Supervisor:EDPS)の代表、欧州委員会事務局の代表である。議長、副議長の任期は2年で再任を妨げない。(欧州委員会サイトの欧州委員会・司法担当 ”Article 29 Working Party”から引用)

 なお、筆者は従来、「EU保護指令第29条専門調査委員会」という訳語を使用してきたが、今後は「第29条専門家会議」の訳語を使用することとする。 

(筆者注2) ハイパーリンク ( hyperlink )書内に埋め込まれた、他の文書や画像などの位置情報。ハイパーリンクを用いて複数の文書、および関連する画像などのオブジェクトを関連付けたシステムをハイパーテキストという。WWWはハイパーテキストの代表例で、Webブラウザで文書を表示し、リンクのある場所を,マウスでクリックすると、関連づけられたリンク先にジャンプするようになっている。(IT用語辞典e-Wordsから引用)  

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