Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

オーストラリア連邦通信メデイア庁が携帯電話等のプレミアム・サービスに関する一層の規則強化に着手

2011-11-25 17:36:17 | 消費者保護法制・法執行



 最近時、本ブログでもしばしば取上げてきた連邦通信メデイア庁(ACMA)がベータ版“engage”サイトを立ち上げた。従来から説明しているとおり、ACMA自体の重要な機能の1つが消費者保護強化にあることは間違いない。
 ところで、今回ACMAが問題視した点は携帯電話やタブレット端末を介したSMSやMMSのプレミアム・サービスにかかる一層の事業者の規制強化である。

 この問題は従来から通信分野の監督機関であるACMA、ACCC等ならびに携帯通信事業者団体等による永年の具体的な取組みにもかかわらず、消費者保護面からなお多くの課題が残るこのサービスにつき根本的な規制強化を図ることとなったものである。

 その第一弾としてACMAは関係者から広く意見を公募を開始した(提出期限は2011年12月22日)。今回のブログは、これまでの経緯の概要と今回ACMAが投げかけた質問項目の内容を概観する。


1.現行のプレミアム・サービスの内容とその問題点
 サービス概要の理解のため、ACMAのプレミアム・サービスに関する日本語解説サイトからの一部関係部を抜粋のうえ、仮訳、引用する。
「 ・プレミアムSMSまたは(MMS)とも呼ばれるモバイル・プレミアム・サービスは、カスタマーが本サービス利用のために追加料金(プレミアム)を支払うことからプレミアムと呼ばれます。つまり標準的なSMS(テキストメッセージ)MMS (マルチメディアメッセージ)より料金がかかるということです。

・ モバイル・プレミアム・サービスへは、あなたの携帯電話からSMSを通じて'191'、'193’-’197'、および’199’で始まる番号からアクセスすることができ、呼び出し音、ウォールペーパー、ゲーム、ミュージック・トラックやビデオ、ホロスコープ、ニュースやチャットグループを含む情報やエンターテイメントのサービスを提供します。
 
・ゲームやビデオなど、インターネットからコンテンツをダウンロードする必要のあるサービスにアクセスする場合は、ご利用の電話会社がプレミアムSMS料金の他にさらにデータ・ダウンロード費として料金を請求する可能性があります。データ・ダウンロード料金についてはご利用の電話会社の約款をご確認ください。

・プレミアム・サービスの中には、継続的または一定期間のサービス提供を受けることに合意しSMSやダウンロードを定期的に受けるための料金を支払う、契約(サブスクリプション)式のサービスのものがあります。自分が購入するサービスが契約(サブスクリプション)式のものか否か、必ずチェックしましょう。
コンテンツの供給者は、オーストラリアン・コミュニケーションズ・アンド・メディア・オーソリティ(ACMA)により監督および施行される「モバイル・プレミアム・サービス規約: C637(2009年制定)(C637:2009 Mobile Premium Services Code)」に従わなくてはなりません。

・モバイル・プレミアム・サービスを停止するには:
モバイル・プレミアム・サービスは、サービスを配信する番号もしくは確認メッセージの番号に『STOP』をテキストで送るか返信することにより、いつでも停止することができます。

・SMS とMMSを停止する
 2010年7月から、携帯電話のユーザーは、電話会社に連絡を取り、すべてのSMSまたは MMSのプレミアム・サービスを停止するよう要求することができます。これは、皆さんが、もはや現在加入しているプレミアムSMSまたはMMSサービスを受けない、または課金されないということ、また自分の携帯電話からもはやプレミアムSMSまたは MMSに送ることはできないということを意味します。」

2.より正確な解説に基づく理解
 前記1.を読んで概括的なイメージは把握できるであろう。しかし、今回ACMA等が取組んだ本質的な問題点を正確に理解するには十分とは言えない。
 そこで、まず“C637:2009”を策定した“Communications Alliance Ltd” の解説サイトから補足説明部分が詳しく経緯などを説明している。
・モバイル・プレミアム・サービス(MPS)に関する業界専門サイト:19 SMS Website は包括的な消費者向けガイドである。

(1)2009年5月に制定した「プレミアム・サービス規約:C637」の改正等モバイル・プレミアム・サービス規制に関するこれまでの改定経緯
・モバイル・プレミアム・サービス規約は「1997年電気通信法(Telecommunication Act 1997)」の下でACMAにより2009年5月14日登録され、同年7月1日施行した。ACMAはその遵守状況を監視している。
 C637は「2005年電気通信を利用したサービス・プロバイダー(モバイル・プレミアム・サービス)に関する行政決定(Telecommunications Service Provider (Mobile Premium services )Determination )」とともに、従来の業界規約であったMPSI Scheme(Mobile Premium Services Industry Scheme )を置き換えたものである。
 このC637は、キャレッジ・プロバイダー、アグリゲーターおよびコンテンツ・プロバイダーに適用され、またその制定目的は利用者やベンダーにとっての適切な安全装置と顧客サービス要件を確立することにある。

(2)MPS業者の登録
 C637の下では、全てのMSPの提供事業者はオーストラリア内でサービスの準備に取組む前に“Communications Alliance”が管理するMPSI登録に際し、会社としての詳細情報の提出が求められる。

 また、C637は供給事業者間のいかなる契約合意条件についても「所定の様式」に基づき登録をなすべきことを定める。

(3) プレミアム・サービス規約:C637の全文を参照されたい。また、C637の解説も参照されたい。

(4) ACMAによる規約等遵守状況の監視
 2009年、ACMAはこれまでの監視結果において規約(C637)の遵守違反の事例が14件あったと報じた。違反が明らかとなった供給事業者には遵守命令が下され、その命令に従わなかった業者に対しては、最高25万豪ドル(約1,825万円)の刑事罰と原状回復命令に関する連邦裁判所での手続が行われる。

3.ACMAによるモバイル・プレミアム・サービスに関する規則の強化見直しに関する公開意見聴取開始のリリース
 2011年11月10日、ACMAは、なお自主規制規則等の不遵守が続く業界の現状に鑑みて行政決定等の見直しを行うべく、広く関係者に対し意見を求める手続に入った。なお、ACMAのリリース文自体は説明がほとんどないため、前述した“engage”サイトの説明から基本部分を抜粋、仮訳する。

(1)2010年に施行されたサービス・プロバイダーに関する次の2つの行政決定( Determinations)がある。
「顧客によるSMSおよびMMSプレミアムの停止オプションの提供および不当に高額な費用請求禁止に関する行政決定(Barring Determination)」
②「請求拒否/契約拒否に関する行政決定(Do Not Bill/Do Not Contract Determination)」はキャレッジ・プロバイダーの業界登録していないコンテンツ・プロバイダーとの契約禁止、およびACMAにモバイルサービス・プロバイダーに対し、顧客に重大な金銭的な危害を加える要因となりうる請求を禁止する命令権を与える。
 この見直し質問・意見公募に関する詳しい情報は“Premium messaging services”
すなわち「2010年電気通信・サービス・プロバイダー(モバイル・プレミアム・サービス)に関する行政決定の見直しNo.1およびNo.2(Review of the Telecommunications Service Provider(mobile Premium services Determinations 2010(No.1)and( No.2))」を参照されたい。
 筆者によるACMAの質問内容の仮訳は(2)および(3)のとおりである。

(2)禁止行政命令(Barring Determination)に関する質問項目
①プレミアム・メッセージング・サービスを顧客の要求に基づき禁止することは、顧客がこれらのサービスにかかる費用をコントロールするうえで有効な手段といえるか?
②顧客が現在利用可能なプレミアム・メッセージング・サービスを禁止する方法は適切かつ利便性があるか?
③プレミアム・メッセージング・サービスに対する課金の発生に時間的な枠組みを設けることは適切な方法か?
④準備の頻度を含む現行の情報要求要件は適切か?
⑤顧客がいつプレミアム・メッセージング・サービスを停止すべきかにつき理解するため追加的な情報はあるか?
⑥顧客とコミュニケーションを図る現行の手段は効果的か?
⑦この情報を顧客に伝えるためこの他にどのような方法が可能となるか?

(3) 「請求拒否/契約拒否に関する行政決定」に関する質問項目
①契約拒否に関する規定は、MPS規約による登録要求要件を遵守させるうえで機能向上が見られたか?
②これらの規定が、事業者に意図しないインパクトを与えたという証拠があるか?
③契約拒否規定の適用に関し金銭的なコストが発生したか?
④MPS規約のもとで登録要求要件の遵守を強化するため、ほかに良い手段はあるか?
⑤請求拒否規定は、重大な金銭的損失を顧客に引き起こすプレミアム・メッセージング・サービスの運営者に抑止力が働いたと思うか?
⑥これらの請求拒否規定が、事業者に金銭的またはその他の意図せざるインパクトを与えたという証拠があるか?
⑦請求拒否規定の適用に関し金銭的なコストが発生したか?
⑧顧客に重大な損失を引き起こすプレミアム・メッセージング・サービスを思いとどまらせる、またはその損失を緩和させるためより効果的なその他の方法があるか?

********************************************************
Copyright © 2006-2011 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

英国、豪州等の詐欺対策組織が取組むロンドン・オリンピックやパラリンピック対策の最新動向

2011-11-03 17:08:06 | Phishing ・新型詐欺問題



 筆者の手元に届いたオーストラリアの「連邦競争・消費者委員会(Australian Competition & Consumer Commission:ACCC)」が運営する詐欺阻止専門サイト(SCAM watch)からのニュースを改めて読み直した。
 その言わんとする内容は、ロンドン・オリンピックやパラリンピックの宿泊予約詐欺に遭わないよう具体的な詐欺手口の説明を含む警告である。
 わが国でも円高等を背景に多くのオリンピック観光客が英国に向かうことは言うまでもなく、この機会に英国の詐欺阻止強化体制と英国の関係機関等が発したオリンピック関連の警告内容を概観すべくまとめてみた。


1.ACCCの詐欺阻止の具体策

(1)詐欺の手口
・詐欺師は詐欺ゲームの間、偽の予約用のウェブサイトを用意し、そこで偽の宿泊ルームや本物のウェブサイトの貸し部屋広告を掲げたり、あるいは偽の宿泊施設や予約チケットのパッケージ・サービスを提供する。
 そこに掲げられた宿泊施設は、実際に存在しないものやあるいは利用不可のものである。
 以前に見られた貸し部屋や宿泊施設予約詐欺では、詐欺師は施設の所有者、予約業者、旅行代理店あるいは施設の経営者等を装い、また宿泊施設や旅行用のウェブサイトに区分された本物の貸し部屋広告を載せた。
・あなたが偽の広告に応じ申し込むと、詐欺師は前もっての「貸し部屋の敷金(bond)」「賃貸料や預け金(deposits)」の支払を要求してくる。
・詐欺師の中には、なりすまし詐欺に使うため申込者の個人識別(ID)証やその他の証明文書のコピーを求める者もいた。
・被害者は正当な宿泊施設の鍵を受け取ることはなく、詐欺師はお金と共に失せるのである。
・また、詐欺師が競技観覧チケットの販売をも売り込むことに注意すべきである。唯一安全な競技観覧チケットの購入は、「2012年ロンドンオリンピック・チケット販売ウェブサイト(London 2012 ticketing website)」そのものや、あるいは同サイトで確認できる自国のオリンピック委員会やパラリンピック委員会で行うべきである。

(2)詐欺被害に遭わない方法
・公式な照会手続を有する知名度の高いホテルや評判が高い旅行会社に直接予約する。
・インターネットの検索機能や地図検索を使い、あなたが泊まろうとするホテルや宿泊施設が実際にそこに実在するか調査する。
・旅行代理店等に対し、多くの宿泊施設の写真を要求すべきである。もし相手が拒否する時は相手は本物の広告サイト等から写真を盗んでいる場合で、その他の多くの写真は持たないのである。
・あなたが旅行代理店やウェブサイトを通じて予約を行おうと考えたときは、まず初めにオンラインで詐欺業者でないか調査すべきである。このことで知られている詐欺を特定すべくレビューやブログを調べる。
・評判の良いウェブサイトに載っているからといって、宿泊施設の正当性(本物)を信じてはならない。詐欺師はこれらのサイトにも偽の広告を掲げている。
・可能であれば、知らない相手に対し為替(money order)、電信送金(wire transfer)や国際資金送金(international funds transfer)による前払いの契約は避けるべきである。このルートで支払われた資金を取り戻せるのは極めてまれである。(筆者注)
・宿泊施設の広告について正確な施設名を入力して、インターネット上でチェックすべきである。詐欺サイトでは多くの類似名の施設がある。
・宿泊施設の賃貸については当、該物件について調査すると主張すべきである。車で近くを走るだけでは調査としては不十分である。事実その施設は存在するかも知れないが、別の者が所有している可能性があるからである。

(3) 英国ロンドン警視庁のオリンピック詐欺警告リリース「Olympic and Paralympic Games Policing Accommodation Fraud 」の宿泊施設詐欺に関するアドバイスも参考になる内容である。

2.英国内務省の詐欺取締庁(National Fraud Authority:NFA)と詐欺報告センターの報告・支援センター(UK’s National Fraud Reporting Centre )」の役割

(1) 詐欺取締庁(NFA)の説明サイトにもとづく概要
次のとおり説明している。政府による「2006年11月詐欺調査(2006 Fraud Review)」の直接の成果としてNFAが生まれた。同調査において政府はイングランドとウェールズの市民に対し直接、経済的損失にかかる莫大なコスト・損害および詐欺の原因を調査した。その解決策として2008年10月1日、正式な着手作業をもとに“National Fraud Strategic Authority”を創設した。さらに2009年には“National Fraud Authority”と改称した。
 2010年/2011年の主な業績は「年次報告(Annual Report)」および「年次会計報告書(Annual Accounts)」で詳しく記している。

(2)“Action Fraud” サイトの概要
 NFAが監督・運営する「詐欺報告・支援センター(UK’s National Fraud Reporting Centre )」は1日24時間電話受付(0300 123 2040)する窓口“Online Fraud Report Service”を開設し、具体的な詐欺問題の阻止に対処している。なお、“Action Fraud”では一般的な詐欺予防のためのアドバイスや手口別詐欺の解説等を行っている。
***********************************************************************************
(筆者注) では、どのような決済方法が安全といえるかについては同サイトでは説明がない。筆者なりに補足すると、安全性が高く信頼度が得られるクレジット・カードによる決済ということになろう。なお、筆者のブログではかつて詐欺警告として次のような解説を述べている。
 「詐欺師は通常“Western Union”や“MoneyGram”を通じた電信送金を要求するが、それは「赤旗(red flag)」が立ったものとみなすべきである。これら電信送金で送られた資金は詐欺師によりいったん受け取られるとその追跡は極めて困難で法執行機関や銀行でも取り戻しは不可である。」

********************************************************
Copyright © 2006-2011 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする