筆者の手元にわが国の厚生労働省にあたる米国FDA(食品医薬品局)から韓国グリーン・デイ・プロデュース(Green Day Produce)社製の「えのき茸(Enoki Mushrooms)」ブランド名「ジョンギルプーム(正一品)」のリコール情報が届いた。
実は、韓国産「えのき茸(Enoki Mushrooms)」のリコールは、2020.3.10付け 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細(韓国:Sun Hong Foods社)、2020.6.9同(韓国:Guan’s Mushroom社およびGreen社)、2022年7月20日同(2020年3月から2022年5月まで、州の公衆衛生当局は、米国の小売店からえのき茸の検体を採取、リステリア菌は複数の州の検体で検出され、米国で21件のえのき茸のリコールが発生した。それらのリコールのうち9件は、韓国で栽培されたえのき茸に関連)で行われている。また、カナダでも2021.11.25にブランド名「ジョンギルプーム(正一品)」のリコールが行われている。
ところで、わが国ではえのき茸とリステリア菌汚染はどのように扱われているであろうか。厚生労働省の警告では、【リステリア食中毒の主な原因食品例】としては、○生ハムなどの食肉加工品、〇未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品(加熱をせずに製造されるもの)、〇スモークサーモンなどの魚介類加工品があげられているが、えのき茸は特に挙げられていない。
今回のブログは、米国FDAやCDC等の感染拡大やリコール情報を正確に提供するとともにこれからわが国でもその消費が増えるであろう「えのき茸」の安全対策について情報提供するものである。
1.韓国産えのき茸に関連したリステリア集団感染
(1)2020.3.10 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細
米国疾病管理予防センター(CDC)、えのき茸に関連したリステリア集団感染に関する情報を公表。リコールは行っていない。
【一部抜粋】
2.2020年3月9日現在、リステリア・モノサイトゲネス集団感染株の感染者計36人が17州(カリフォルニア州、ニューヨーク州他)から報告されている。
- 患者からのリステリア検体は2016年11月23日から2019年12月13日までに収集された。患者の年齢は1歳未満から97歳まで、年齢中央値は67歳である。患者の58%が女性である。情報の得られた32人のうち30人の入院が報告されている。カリフォルニア州、ハワイ州及びニュージャージー州から4人の死亡が報告されている。6症例は妊娠関連であり、2症例は流産となった。
- 疫学及び検査のエビデンスは、「韓国産」と表示されたえのき茸が、本集団感染の原因である可能性が高いことを示している。
(2)2020.6.9 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細
米国疾病管理予防センター(CDC)、えのき茸に関連したリステリア集団感染に関する情報を最終更新
【一部抜粋】
4. 疫学、遡及調査及び検査のエビデンスは、韓国にあるGreen社によって供給されたえのき茸が、本集団感染の原因であった可能性が高いことを示した。
- FDA及び州当局は、検査のためにえのき茸を収集した。ミシガン州農業農村開発局は、患者がえのき茸を購入した食料品店からえのき茸を収集し、2検体から集団感染株を確認した。これらのきのこは「韓国産」と表示されており、Sun Hong Foods社によって販売されていた。2020年3月9日、Sun Hong Foods社は、えのき茸をリコールした。カリフォルニア州保健局は食料品店からえのき茸を収集し、1検体から集団感染株を確認した。これらのきのこは「韓国産」というラベルが付けられ、Guan’s Mushroom社によって販売されていた。3月23日、Guan’s Mushroom社は、えのき茸をリコールした。FDAは、韓国のGreen 社から、輸入時に検査用のえのき茸の検体を収集した。4月6日に、2検体でリステリア・モノサイトゲネス集団感染株を有するという結果が示された。その結果、4月7日に、FDAはGreen社に対し輸入警告を発出し、H&C Foods社はGreen社から供給されたえのき茸をリコールした。
- 3月18日、韓国食品医薬品安全処(MFDS)は、MFDSの調査結果及び今後の疾病予防のために取るべき措置を発表した。MFDSは韓国の2企業が生産したえのき茸にリステリア・モノサイトゲネスを確認した。
(3) 2022.7.20 内閣府 ・ 食品安全委員会・食品安全関係情報詳細
米国食品医薬品庁(FDA)は7月20日、韓国から輸入されるえのき茸に対する全国的な輸入警告を発出
【一部抜粋】当該検体採取は、2016年から2020年にかけての複数州にわたる集団感染に関するFDAの調査を受けて実施された。当該集団感染では、リステリア菌感染による複数のヒト症例と韓国産のえのき茸との関連が示され、米国17州から合計36例、カナダから12例、及び豪州から6例が報告された。米国の36例のうち、31例が入院し、4例が死亡した。
2020年3月から2022年5月まで、州の公衆衛生当局は、米国の小売店からえのき茸の検体を採取した。リステリア菌は複数の州の検体で検出され、米国で21件のえのき茸のリコールが発生した。それらのリコールのうち9件は、韓国で栽培されたえのき茸に関連しており、表示、遡及調査、又は全ゲノムシークエンス解析(WGS)によって確認された。
2020年の集団感染の後、FDAは公衆衛生を保護し、輸入特殊きのこ(specialty mushrooms)による将来のリステリア菌集団感染を防止するために、えのき茸に焦点を当てた輸入特殊きのこ予防戦略の実施に着手した。このFDAの予防戦略は、集団感染又は有害事象につながる根本原因の再発を制限又は防止するために、FDAによって行われる積極的かつ熟考した上でのアプローチである。
(4) 2022.11.17 米国FDA(食品医薬品局)から韓国グリーン・デイ・プロデュース(Green Day Produce)社製の「えのき茸(Enoki Mushrooms)」ブランド名「ジョンギルプーム(正一品)」のリコール情報
わが国の食品安全委員会・食品安全関係情報詳細にはまだ掲載されていないため、筆者はFDAの情報を仮訳する。
カリフォルニア州バーノンのグリーン・デイ・プロデュース社は、2022年9月から2022年10月まで販売された200g / 7.05ozのえのき茸(韓国製品)のパッケージを、幼児、虚弱または高齢者、および免疫力が低下した他の人に重篤で時には致命的な感染症を引き起こす可能性のある生物であるリステリア菌に汚染されている可能性があるため、リコールしている。健康な人は、高熱、激しい頭痛、こわばり、吐き気、腹痛、下痢などの短期的な症状にしか苦しむことはないが、リステリア感染症は妊婦の流産や死産を引き起こす可能性がある。
今回リコールされたえのき茸は、全米の流通業者や小売店に配布された。
えのき茸は、200g / 7.05ozの透明なプラスチックパッケージで提供され、前面に「エノキ・マッシュルーム」、背面にグリーン・デイ・プロデュース社と記載されている。UPCは16430-69080で、パッケージの裏側にある。パッケージにはロットコードや日付はない。
パッケージの表面
パッケージの裏面
このリコールは、米国食品医薬品局とカリフォルニア州公衆衛生局(California Department of Public Health :CDPH)の専門知識に基づいて行われている。
えのき茸の200g / 7.05オンスのパッケージを購入した消費者は、全額返金のために購入場所に行き返品することを勧める。質問のある消費者は、(323)587-4688またはwilliam@greendayinc.com で会社に連絡することができる。
ジョンギルプーム・ブランドのエノキ茸はリステリア菌のためにリコールされた。
2.えのき茸とリステリア菌感染回避策
米国メディアCBS4が「多州でリステリア菌の発生の背後にあるえのき茸」で詳しく解説している。抜粋のうえ仮訳する。
米国の疾病管理予防センター(CDC)がえのき茸でリステリア菌の発生を見たのはこれが初めてではない。2020年、CDCは、えのき茸に関連する米国で最初に知られているリステリア菌の発生を調査した。その発生では、17の州で36人が感染した。4人が死亡し、2人が妊娠を失った。
(1)リステリア菌とはいかなるものか?
リステリア菌は、深刻な感染症リステリア症を引き起こす可能性のある細菌です。また、一般的な食中毒の症状を引き起こす可能性がある。
CDCは、毎年約1,600人がリステリア症にかかり、約260人が死亡していると述べた。
妊娠中の女性とその新生児、65歳以上の成人、免疫力が低下している人々を病気にする可能性が最も高い。
(2)侵襲性リステリア症の症状はどのようなものか?
侵襲性リステリア症は、細菌が腸を越えて体の他の部分に広がるときに起こる。症状は通常、リステリア菌で汚染された食品を食べてから2週間以内に始まる。
・生のえのき茸は食べないでください。えのき茸を徹底的に調理すること。
・リステリア菌は冷蔵庫に保管されている食品で成長する可能性がある。食品を十分に高い温度に加熱することで簡単に殺せる。
・生のえのき茸は、調理されない食品とは別に保管してください。これにより、エリステリア菌がエノキ茸から食べる前に調理しない食品に広がるのを防げる。
・生のえのき茸を扱った後は手をよく洗ってください。
・生のえのき茸に触れた冷蔵庫、容器、表面を掃除されたい。
・リステリア菌は、食物、表面、手の間で簡単に広がる可能性がある。
・えのき茸を食べた後に重度のリステリア病の症状がある場合は、すぐに医療提
供者に連絡してください。
・妊娠していない人は、発熱や筋肉痛に加えて、頭痛、肩こり、錯乱、バランスの崩れ、けいれんを経験することがある。
妊娠中の人は通常、発熱、倦怠感、筋肉痛のみを経験する。さらに、リステリア菌は妊娠喪失や早産を引き起こす可能性がある。また、新生児に深刻な病気や死を引き起こす可能性がある。
(3)さらに、CDCはレストラン等に次のことを推奨している
・生のえのき茸は出さないでください。
・えのき茸は、お客様に提供する前によく調理してください。
・付け合わせとして生のえのき茸を使用しないでください。
・提供の直前に生のえのき茸をスープ料理の上に加えないでください。えのき茸はリステリア菌を殺すほど熱くならない。
・生のえのき茸は、調理されない食品とは別に保管してください。これにより、エリステリア菌がエノキ茸から、顧客に提供する前に調理しない食品に広がるのを防げる。
・えのき茸を提供する場合は、FDAの安全な取り扱いと洗浄のアドバイスに従ってください。
・生のえのき茸を取り扱った後は手をよく洗ってください。
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