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EU議会が犯罪組織とテロ資金の送金規制に関する規則草案を支持票決

2006-07-09 18:37:53 | マネーローンダリング

Last Updated:Febuary 21,2022

本ブログは2011年9月21日に補筆・改訂した。

 EU議会は、7月6日に海外送金を行う金融機関やWestern Union(筆者注1)といった国際送金専門会社等に対し、EU加盟国以外からの送金者の氏名や住所、口座番号と言う識別情報を含まない場合は、送金拒否を義務付ける規則草案につき支持投票した。現状、これらの金融機関等は仕向銀行名は知っていても送金依頼人の氏名等は常に認識しているわけではない。

 また、規則草案はEU加盟国間の送金については口座番号のみ要求しているが、仮に顧客につき疑わしい場合は、3営業日以内に仕向銀行から送金者の氏名、住所についての情報を得ることが出来るとするものである。

 本規則に基づき集められた送金人の情報は、5年間の保存が義務化され、これら仕向金融機関等の監督機関は反マネロンやテロ資金についての調査活動が可能となる。最終的には、テロリスト自身や資金の流れを追跡することで捜査、起訴に寄与することが目的である。この規則草案自体はEUの「テロ阻止に関する行動計画」の一部である。

 なお、EUのマネー・ローンダリング対策については、2005年欧州議会および欧州連合理事会が決定した「EUの第3次マネーローンダリング・テロ資金供与規制にかかる指令(2005/60/EC)」)および「EUにおける資金の出入の管理に関する規則(1889/2005)」等のEUの公式サイトを参照されたい。
(筆者注2)

1.今後の規則草案の正式承認手続き
 EU蔵相会議において今後 可決することになるが、本規則草案自体マネー・ローンダリング対策における国際協調機関である「金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Lauderig:FATF)」(筆者注3)の電信送金に関する特別勧告Ⅶ(SR Ⅶ)に基づくものであり、FATF修正解釈注によると2006年12月には実行に移されるべきものとされている。

2.規則草案の主な内容
(1)本規則制定の目的(第1条)
 マネー・ローンダリングやテロ資金の資金トレースを可能とし、国際的送金阻止やそれらに関する捜査を目的とする。
(2)定義に関するもの(第3条)
 適用の対象となる、テロ資金、マネー・ロンダリング、支払人(個人・法人を問わない)受取人(個人・法人を問わない)、送金サービス取扱者(payment service provider)、送金サービス仲介業者(intermediary payment service provider)等の定義。
(3)対象取引の適用除外(第2条、第5条)
クレジットカードやデビットカードその他これに類する商取引すなわち本人識別情報があり、後日のトレースが可能なものは除く。なお、EU域外からの1,000ユーロ以下の送金についてはマネロン阻止等の観点から本規則の適用範囲を限定できる。サービス・プロバイダーの情報保存期間は5年間である。
(4)EU域内の国外送金の場合の扱い(第6条)
後日トレースが可能となる支払人口座番号やその他ID情報のみの情報添付でよい。ただし、支払人、受取人のサービス・プロバイダー間では3営業日間は支払人の氏名、住所など完全な情報の保管が義務化される。
(5)EU域内の支払人からの域外の受取人への送金については完全な支払人情報(氏名、住所、口座番号の代りに出生年月日・出生地や公的ID番号も適用可)の添付が義務付けられる。(第4条、第7条)
(6)受取人のサービス・プロバイダーにおける支払人情報を欠く場合の調査に関する効果的手続きの策定義務(第8条)
(7)支払人情報を欠く場合の受取人に対するプロバイダーの本規則に基づくサービス・プロバイダーの送金取扱い拒否義務。(第9条)
(8)送金サービス仲介プロバイダーの受信情報の保存義務(第12条以下)
(9)サービス・プロバイダー等の監督機関、法執行機関との協力義務(第14条)
(10)EU加盟国は、2006年12月31日までに本規則の違反行為の場合の適用する罰則を制定するとともに、適用を確実にするために必要な手続きを定めたうえ、通知、施行しなければならない。

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(筆者注1)Wentern Unionは個人間の国際送金専門会社で米国企業である。わが国ではスルガ銀行が窓口になっているが、同サービスのメリットは、送金の受取人が銀行口座を有しなくても余良い点があげられる。
http://www.surugabank.co.jp/surugabank/01/05/11/0105110200.html

(筆者注2) 2011年1月欧州委員会は「加盟国におけるEU指令(2005/60/EC)の適用に関する最終報告(European Commission Final Study on the Application of the Anti-Money Laundering Directive)(COM(2012) 168 final, Report on the application of Directive 2005/60/EC on the prevention of the use of the financial system for 
the purpose of money laundering and terrorist financing, 11.04.2012)を公表した。

(筆者注3) 1989年アルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された政府間機関である。2022年2月現在39カ国、オブザーバー国(オンドネシア)、準会員Task Force等9機関、オブザーバーの25国際機関(アジア開銀、国連、ユーロポール、IMF、世銀等)より構成されている。
Members and Observers - Financial Action Task Force (FATF) (fatf-gafi.org)
〔参照URL〕
1.2005年7月26日に欧州委員会が提案した草案(Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on information on the payer accompanying transfers of funds)
http://www.fatf-gafi.org/document/52/0,2340,en_32250379_32237295_34027188_1_1_1_1,00.html#FSRBs
2.EU議会の投票結果の解説記事
http://www.fatf-gafi.org/document/52/0,2340,en_32250379_32237295_34027188_1_1_1_1,00.html#FSRBs

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