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オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)がGoogleが提案したFitbitの買収に関する予備段階での懸念の概要を声明(その1)

2020-06-25 15:25:11 | 消費者保護法制・法執行

 Last Updated 4 August, 2020 (紫色部が追加箇所)

 6月18日、日本でいうと公正取引委員会や消費者庁にあたる「オーストラリア競争・消費者委員会」(以下「ACCC」という)は、「Googleが提案したFitbit の買収に関する予備段階での懸念の概要を説明し、消費者の健康状態データへのGoogleのアクセスが参入障壁を高めかつその支配的地位を一層高め、いくつかのデジタル広告および健康市場での競争に悪影響を与える可能性がある」と発表した。(発表声明文原文)

 ウェアラブル・デバイスを製造する企業であるFitbitは、ユーザーの毎日の歩数、心拍数、睡眠データなど、10年以上にわたって消費者から健康情報を収集してきた。

 ACCCだけでなく、海外主要国の規制監督機関は,従来から世界的に見たIT巨人であるGoogle 、Facebook等のGAFA (筆者注1)の市場独占的活動や顧客情報の収集に対し、行政訴訟など厳しい姿勢を取り続けてきている。 (筆者注2 )

 これまでのACCCのFacebookに対する予備的問題提起の背景を概略整理すると、以下のとおりである。

(1)2017年12月4日、当時の財務大臣であった Scott Morrison 氏は、デジタル・プラットフォームの調査を行うようACCCに指示した。 この調査では、デジタル検索エンジン、ソーシャルメディア・プラットフォーム、およびその他のデジタル・コンテンツ集約プラットフォームが、メディアおよび広告サービス市場での競争に与える影響について検討した。 特に、この調査では、ニュースやジャーナリズムのコンテンツの供給に対するデジタル・プラットフォームの影響と、メディア・コンテンツの作成者、広告主、消費者に対するこの影響について検討した。

(2)2018年12月10日、ACCCは調査結果として378頁の予備報告書を発表し、関係者からの意見を公募した。(筆者注3)

(3)最終報告書(623頁)は、財務大臣に提供された後、2019年7月26日に公開された

(4)2020年2月27日に ACCCはリリース「Google LLC proposed acquisition of Fitbit Inc」で今後の検討スケジュールも含め検討を開始するとともに競争法上の予備的な懸念を概説する問題の声明を発表し、同時に2020年7月10日までに問題のステートメントに関する意見の提出を公募した。

 その後、関連した動きとして、2019年10月29 日、ACCCは、Google LLCおよびGoogle Australia Pty Ltd(全体として「Google」という)に対して連邦裁判所に訴訟を起こし、Googleが収集、保持、使用する個人の位置情報について、誤解を招く行為を行ったこと、および消費者に対し虚偽または誤解を招く表現をしたと主張した。 

*この連邦裁判所への告訴内容については、第4項で詳しく解説するが、筆者が最も気になったのは、どの連邦裁判所が所管でまた裁判の予定や詳細な裁判資料は何を見ればよいのかといった、法律実務を行う上で重要な情報の入手方法等ある。ACCCが明らかにしているのは” Concise  Statement”のURLのみである。(その真意は不明であるが明らかに訴訟相手および弁護士対策である )

この点の関するオーストラリアの各種メディア情報をあたったが、解説記事は皆無であった。なお、8月4日筆者の手元に Telecompaperの記事「EU confirms in-depth investigation into Google takeover of Fitbit」が届いた。すなわち、欧州委員会は、Googleが提案しているウェアラブルメーカーであるFitbitの買収に関する反独占法に係る詳細な調査が始まったことを確認したとされているが、その背景には今回ACCCが示した懸念があることは間違いなかろう。

そこで、筆者はConcise Statementのキー情報の基づき、連邦裁判所サイト(Commonwealth Courts)で以上で述べた情報の入手を行った。この種の解説は、わが国でも大学内での研究者以外ではまず行っていないと思われる。今回のブログの巻末で詳しく解説する。

なお、ACCCの一連の動きに関し、わが国の公正取引委員会は2018年12月10日、予備報告(全374頁)のリリース文の概要訳)を公表している。また、2019年12月にACCCの最終報告(7月26日公表のもの)のリリース文の概要訳を公表している。(筆者注4)

 一方、これだけ読んで何が問題であるか、また今後、法執行機関であるACCCがどのような法的手段をとるかにつき理解できる人はわが国ではかなり限られよう。(筆者注5)

 そこで、今回のブログはACCCのリリース内容の仮訳に加え、これらGAFA企業がいかに世界的に見て独占的に消費者の機微情報を収集し、さらには広告活動への結び付け活動を行っているかを主要国の動向を中心に検証することにある。

 なお、ACCC報告書は具体的推奨事項として、デジタル・プラットフォームに表示される著作権を侵害するコンテンツの削除に対する権利所有者の要求をより効率的に促進するため、 ACCCは、オーストラリア通信メデイア庁(Australian Communications and Media Authority: ACMA)がコードを開発して施行することを提案している。

 この内容は筆者自身直ちに理解できない点であったが英国の法律事務所Bird&Bird LLP

が解説「オーストラリア通信メデイア庁(Australian Communications and Media Authority: ACMA) のDigital Platforms and the mandatory takedown code」で詳しく論じているので本ブログ3.の最後で仮訳、引用することとした。

1.ACCCはGoogleが提案したウェアラブル・健康デバイスの製造企業であるFitbitの買収に関する独市場独占等への重大な懸念を予備的報告書で表明

(1)ACCCの2020年6月18日付けリリース文の全文を以下、仮訳する。

 ACCCは6月18日、Googleが提案したFitbitの買収に関する予備的な懸念の概要を説明し、消費者の健康データへのGoogleのアクセスが参入障壁を高め、その支配的地位をさらに高め、いくつかのデジタル広告および健康市場での競争に悪影響を与える可能性があると発表した。

 ウェアラブル・デバイスを製造する企業であるFitbitは、ユーザーの毎日の歩数、心拍数、睡眠データなど、10年以上にわたって消費者から健康情報を収集してきた。(筆者注5-2)

 ACCCのロッド・シムズ(Rod Sims)委員長は次のとおり述べた。

「我々の懸念は、GoogleがFitbitを買収することで、Googleがさらに包括的なユーザーデータセットを構築し、その地位をさらに固め、潜在的なライバルへの参入障壁を引き上げることを可能にすることである。

ACCCの“Digital Platforms Inquiry” は、検索と位置データの集中、およびサード・パーテイ(コンピューター本体を製造している企業やその系列企業以外の、ソフトウエアや周辺機器などを作るメーカーの総称)のWebサイトとアプリを介して収集されたデータに基づいて、Googleの実質的な市場力が構築されていることを見出した。

 新興企業であるFitbitのような企業と成熟した企業の両方による合併、すなわちGoogleによる過去の買収により、Googleの地位がさらに強化された。グーグルが利用できるユーザーデータへのアクセスはそれが限られた競争だけに直面するようにそれが広告主にとって非常に価値のあるものにした。」

 さらにACCCの今回の調査は、特定のオンライン広告サービスと初期のデータ依存型健康市場に焦点を当てている。 FitbitのデータがGoogleにもたらす独自性と潜在的な価値、およびこれらの広告と健康市場における競合他社の可能性を探るものである。

 ACCCが問題とする声明で概説したもう1つの重要な問題は、WearOS(筆者注6)、Googleマップ、Google Playストア、Androidスマートフォンの相互運用性などの重要な関連サービスを提供する際に、Googleが競合他社よりも自社のウェアラブル・デバイスを支持する可能性が高いかどうかである。

この点につきシムズ委員長は次のとおり述べた。

「これは急速に進化しているセクターであり、デジタル市場の発展には本質的な不確実性があるが、それは競争規制当局として、将来が不明確だからといって競争が減ることはないと結論づけることができるという意味ではない。

我々の立場は、特にそのような重要な市場を取り巻く不確実性がある点である。ACCCは、買収の可能性を徹底的に調査して、将来の競争を阻害する必要がある。。競争規制当局としての私たちの仕事は、これらのようなトランザクションに続く可能性のあるデータと広告に関する潜在的な問題を慎重に比較検討することである。

我々は、またこのトランザクションを検討している他の管轄区域の他の競争当局と非常に密接に協力する。」

 今回のACCCの問題に関する声明へのフィードバックは、2020710日までに送信可である。

また、ACCCの最終決定は2020年8月13日に発表される予定である。

【本件の背景と問題点】

 2019年11月1日、Fitbitは21億米ドル(約2,237億円)でGoogleに買収される契約を締結したと発表した。

 Googleは幅広い分野で活動しており、Google検索、YouTube、Googleマップ、Gmailなどの消費者向けインターネットサービスを含む、多数のテクノロジーサービスと製品を提供している。 Googleはオンライン広告にも積極的で、健康関連サービスでの存在感を確立している。

一方、Fitbitは、手首に装着可能なウェアラブル・デバイス、スマート・スケール(体重、体脂肪、BMI、除脂肪体重を自動的に記録し、長期的な体の変化を表示)、ソフトウェア、さまざまな健康関連サービス(雇用者、保険会社、ヘルスケアプロバイダー向けの健康ソリューションなど)を開発、製造、配布している。

(2) ACCCの発表声明文(Statement of Issue)(25)の内容

次の3項目である。

① 提案されたGoogleのFitbitの買収から生じる競争問題に関するオーストラリア競争消費者委員会(ACCC)の予備的見解を概説、

② さらに調査を要する領域を特定、

③ 特定の問題に関する利害関係者からの提出を公募する(提出期限は7月10日)。

ACCCの最終決定は2020813日に発表予定である。

2.ACCCのこれまでの世界的なITプラットフォーム企業であるFacebook、Google等の対する予備的報告書とその後の法的告訴等の状況

(1) 2018年12月10日のACCCのリリースと予備報告書

わが国の公正取引委員会の【ACCCリリース文の概要訳】(筆者注4)あるが、ここでその全文を以下、引用する。

 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)が,Google及びFacebook並びにオーストラリア国内のニュース及び広告に関する報告書について公表したところ,そのうち競争政策に関する主要な部分は以下のとおり。

 Google及びFacebookは,消費者のコミュニケーション方法,ニュースへのアクセス方法及びオンライン広告の閲覧方法を変容させており,市場支配力の集中及びデジタル・プラットフォームの広範な影響によって作り出された潜在的な課題を考慮することは,政府機関及び規制機関にとって喫緊の課題である。

 本日公表された予備的報告書(以下「報告書」という。)には,11の予備的勧告と,調査を続けるに当たって,8分野における更なる分析が記載されている。

 ACCCの見解は,Googleがオンライン検索,検索広告及び関連ニュース表示サービス(News Referral)における潜在的な市場支配力を有し,Facebookがソーシャルメディア,ディスプレイ広告及びオンライン関連ニュース表示サービスにおける潜在的な市場支配力を有している,というものである。

 ACCCは,これらの極めて重要なプラットフォーム事業者が有する市場支配力に懸念を抱いている。報告書によれば,その懸念は,オーストラリアの企業への影響,とりわけ,メディア事業者によるコンテンツの収益化への影響,また,ターゲット広告のために消費者のデータが収集されていることにある。

 ACCCのシムズ委員長は以下のように述べた。「デジタル・プラットフォームは,私たちの暮らしや,互いにコミュニケーションを取ったり,ニュースや情報にアクセスする方法を一変させた。こうした変化の多くが,消費者がニュースや情報にアクセスする手段や,消費者がお互いに,また企業と交流することに積極的に作用したことは賞賛に値する。」

 「他方で,デジタル・プラットフォームは,多くのオーストラリア企業にとって,無くてはならないビジネスパートナーである。Google及びFacebookは,オンラインニュースメディア事業等の企業が消費者に接するにあたって,決定的な役割を果たしている。それにもかかわらず,極めて重要であるコンテンツの表示順序を決定するアルゴリズムの運用については,全く透明ではない。」

 ACCCは,GoogleやFacebookといったデジタル・プラットフォーム事業者がオーストラリアの消費者から収集した膨大かつ多様なデータに関し懸念を有している。このように収集されたデータは,ユーザーがデジタル・プラットフォームを利用する際に能動的に提供している範囲を超えている。

 今回行った調査の一環で,消費者がデジタル・プラットフォームによって収集された情報の量及び範囲について懸念を有していることが判明した。ACCCは,特定の契約や条項において,サービス及びプライバシーについてのオンライン上の条項が長く,複雑であり,曖昧であることについて特に懸念を有している。

 消費者は,十分な情報がなく,限られた選択肢しかない場合に,適切な意思決定ができず,このことは消費者を害し,ひいては,競争を阻害することとなるのである。  

 シムズ委員長は,以下のように述べた。

 「ACCCは,GoogleやFacebookのようなデジタル・プラットフォーム事業者の強力な市場支配力を考慮すれば,規制制度をより強力な水準とすることは正当化されると考えている。」

 「オーストラリアの法律は,企業が強い市場支配力を有すること,競合他社と競争して打ち負かすために能力や技術を発揮することを禁止しているものではない。しかし,市場支配力を有する企業が競争又は消費者厚生を阻害するリスクがあるときには,政府は,消費者及び企業を保護するための行動を採るべきである。」

 報告書では,Google及びFacebookの市場支配力の増大に対処し,消費者の選択肢の増加を促進させるための予備的な勧告をしている。この勧告では,例えば,Googleのインターネットブラウザ(Chrome)を携帯端末,パソコン及びタブレットにデフォルトブラウザとして,Googleサーチエンジンをインターネット・ブラウザのデフォルトサーチエンジンとしてインストールすることを防止するよう提言している。

また,ACCCは,デジタル・プラットフォームが広告及びニュースのコンテンツをランク付けし,かつ,表示する方法に関して,新設又は既存の規制当局が,調査,監視及び報告業務をすべきであると提言している。他の予備的勧告では,企業結合法制についても提言している。

 ACCCは,消費者がさらに情報を入手し,購買力を向上できるようにするために,デジタル・プラットフォーム事業者によるデータ収集に係る特定の規約を設けることについて,更なる勧告を行うことも検討している。

 「今回の調査によって,特定のデジタル・プラットフォーム事業者が競争法及び消費者法に違反しているという懸念が明らかになった。ACCCは,執行活動が必要であるかどうかを決定するために,5件の被疑行為を調査しているところである。」とシムズ委員長は述べた。 

(2) ACCCの予備的報告書の本文(378頁)

公正取引委員会の訳文では言及していないが、予備報告書(Preliminary report)に応じた書面による意見の提出は、2019年2月15日までにplatforminquiry@accc.gov.auに電子メールで送信する必要があった。 

3. ACCCの最終報告書とそのリリース

 ACCCの最終報告書「Digital platforms inquiry - final report」3部で構成」(全623頁)は、財務大臣に提供された後、2019年7月26日に公開された

なお、2018.12.10ACCCリリースでは最終報告書は2019年6月3日予定であったが、実際の公表は6月24日であった。

 ACCCのシムズ委員長の発表時の動画

(1)ACCCのリリース文(仮訳)

 本日発表されたACCCのDigital Platforms Inquiryの最終報告によると、主要なデジタル・プラットフォームの支配とオーストラリアの経済、メディア、社会全体への影響は、重要な全体的改革で対処する必要がある。

 この最終レポートには、デジタル・プラットフォームの成長に起因する問題の交差を反映した、競争法、消費者保護、メディア規制、プライバシー法にまたがる23の推奨事項が含まれている。

ロッド・シムズ委員長は次のとおり述べた

「ACCCの提言は包括的でかつ前向きであり、この調査の過程で特定した多くの競争、消費者、プライバシー、ニュースメディアの問題に対処するものである。重要なことに、私たちの提言は、政府やコミュニティが発生した問題に対処するために必要なフレームワークと情報を提供するという点で動的である。我々の目標は、コミュニティがこれらの問題を最新の状態に保ち、施行、規制、および法的枠組みを将来にわたって保証できるよう支援することである。」

今回の調査の過程で、ACCCはデジタル・プラットフォームに関連する多くの悪影響を特定した。その多くは、GoogleとFacebookの支配によるものである。

具体的には、これらには以下が含まれる。

①GoogleとFacebookの市場支配力は、広告、メディア、およびその他のさまざまな市場で、企業のメリットを競う能力を歪めている。

②デジタル広告市場は不透明で、特に自動化されたプログラマティック広告(筆者注7)の場合、資金フローは非常に不確実である。

③消費者はデータがどのように収集および使用されるかについて十分に知らされておらず、収集された広範囲のデータをほとんど制御できない。

④ニュースコンテンツの作成者は、支配的なデジタル・プラットフォームに依存しているが、そのコンテンツの収益化は困難である。

⑤オーストラリアの社会は、世界中の他の人々と同様に、偽情報(disinformation)とニュースに対する不信や疑惑(mistrust)の高まりの影響を受けている。

 さらにシムズ委員長は次の指摘を行った。

「我々が提起した問題に対する主要なデジタル・プラットフォームの対応は、「私たちを信頼する」と表現するのが最もよいであろう。収益の増加に重点を置き、株主に価値を提供することに何の問題もないし、確かにそれは賞賛されるであろう。しかし、この調査中に明らかになった問題は、企業自身に任せるにはあまりにも重要であると考える。消費者法とプライバシー問題、および競争法と政策に対する行動はすべて、デジタル・プラットフォームの市場支配力と消費者のデータの蓄積に関連する問題に対処するために不可欠である。」

【オーストラリアのメディア企業とニュースの消費者】

ACCCは、オーストラリアのメディア・ビジネスに対するデジタル・プラットフォームの影響と、オーストラリア人がニュースにアクセスする方法に対処するための一連の推奨事項を作成した。

これらには以下の事項が含まれる。

① 指定されたデジタル・プラットフォームにそれぞれオーストラリア通信メデイア庁(Australian Communications and Media Authority: ACMA)に行動規範を提供して、これらのプラットフォームとニュース・メディア・ビジネスの間の交渉関係の不均衡に対処し、コンテンツの価値の共有と収益化の必要性を認識するよう要求する。

② メディア規制フレームワークを調和させることにより、ニュース・メディア・ビジネスとデジタル・プラットフォームの間に存在する規制の不均衡に対処する。

③ 地元のジャーナリズムを支援するための年間約5,000万豪ドル(約36億8,000万円)の助成金を支給する。

④ オーストラリアの公益ジャーナリズムへの慈善資金を奨励するための措置を紹介する。

⑤ ACMAは、信頼できる信頼できるニュースを特定するためのデジタル・プラットフォームの取り組みを監視する。

⑥ 意図的に誤解を招く、有害なニュース記事に関する苦情を処理するための業界コードを作成して実装するためにデジタル・プラットフォームを要求する

⑦ デジタル・プラットフォームでの著作権の執行を支援するための強制的ACMAの削除コードの紹介。

【競争の促進】

 大規模なデジタル・プラットフォームによるスタートアップ(新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体)の買収は、将来の競争の脅威を取り除く可能性を秘めていると問い合わせは述べている。買収により、プラットフォームによるデータへのアクセスも増加する可能性がある。どちらの状況でも、プラットフォームの市場支配力がさらに強まる可能性がある。

 ACCCは、オーストラリアの合併法の変更を提案し、潜在的な競争の影響を考慮することを明示的に要求し、データの重要性を認識させるようにしている。また、ACCCは大規模なデジタル・プラットフォームが、オーストラリアでの競争に影響を与える可能性のある買収案についてACCCに警告する通知プロトコルに同意することを推奨している。

 この最終レポートはまた、Googleに対して、Androidデバイス(新規および既存)のオーストラリアのユーザーが、デフォルトで提供されるのではなく、ヨーロッパで提案されているいくつかのオプションから検索エンジンとインターネット・ブラウザーを選択できるようにすることも求めている。

【消費者に力を与える】

 支配的なデジタル・プラットフォームに関連する問題に対処するには、効果的な消費者保護が不可欠である。この調査を通じて、ACCCは、消費者に危害を及ぼす可能性のあるいくつかの問題のあるデータプラクティスを特定した。

 ACCCは、これらのデータプラクティスのいくつかを調査して、矛盾があったかどうかを判断することで、非常に進んだ。

 最後に目次を以下で引用する。なお、付属書目次は略す。

 なお、42頁にわたる「 Executive Summary」が本文とは別に公表されている。

〇デジタル・プラットホームと強制的削除コードに関する補足説明

 ACMAの「デジタル・プラットホームと強制的削除コード(Digital Platforms and the mandatory takedown code)」の解説文を仮訳する。なお、関係法のリンクは筆者の責任で行った。

 筆者は、英国の大手法律事務所Bird&Birdの弁護士Sophie Dawson氏とJoel Parsons氏の(両氏とも在オーストラリアのパートナーである)共著である。

Sophie Dawson氏

Joel Parsons氏

 ACCCは、オーストラリアで動作するデジタル・プラットフォームの削除プロセスを管理するために、必須とする業界コードを実装することを推奨している。これは、デジタル・プラットフォームに表示される著作権を侵害するコンテンツの削除に対する権利所有者の要求をより効率的に促進するためである。今回ACCCは、ACMAがそのコードを開発して施行することを提案している。

 「勧告8」の内容は、予備報告書(2018.12.10)において「勧告7」として登場した。その最終報告書では、ACCCは再び、強制削除コードには次の2つの主要な利点があると述べている。

  1. コンテンツ作成者とメディアビジネスが迅速かつ効率的に削除を行うのに役立つ。

最大250,000豪ドル(約1,838万円)の民事罰が適用される可能性があり(民事罰制度が他の既存の必須コードに類似している場合)、その遵守(コンプライアンス)が奨励される。

  1. これは、1968年著作権法(Copyright Act 1968:Cth)に基づく認可責任の明確さを改善させる。調査への利害関係者の提出は、著作権法に基づく著作権侵害の承認者としてのプラットフォームの責任の位置に関する曖昧さは、それが有効な抑止力として機能せず、プラットフォームが侵害している素材を削除することを奨励しないことを示唆した。司法の決定は、著作権侵害が発生することを可能にする単なる「施設の提供」が著作権侵害の許可を構成しないことを示しました。著作権法のセクション36(1A)と101(1A)は、侵害の疑いのある権限者が、行為を防止または回避するために他の合理的な手段を講じたかどうかを検討する産業界の行動規範が必要あると述べている。したがって、プラットフォームが必須のコードに準拠していない場合、プラットフォームがコードに準拠していなかった場合でも、理論的には権利所有者がプラットフォームを著作権侵害で告訴するのに役立つ。

 最終報告書は、ACMAが電気通信法(Telecommunications Act 1997 (Cth)(予備報告書で推奨されたとおり)に基づいて関連する必須規格を開発できるようにするために、法改正によって新しい削除手順を実装できると述べている。予備報告書でACCCは、電気通信法の第6部における「電気通信産業」の定義を「プラットフォーム」を含むように修正することを提案したが、最終報告書は埋め込みのメカニズムを自由に残し、コードは「その他の適切な立法改正」を通じて導入した。速報で予告された方法で電気通信法の修正案を起草するには、「デジタル・プラットフォーム」の定義を考案する必要がある。このような定義を作成することは悪名高いことであり、オーストラリア著作権理事会が述べたように、そのような定義では、「オーストラリアのメディア組織を直接的または間接的に捕らえない」ことを確実にするために注意深い草案が必要となる。

 利用される立法メカニズムに応じて、ACMAが必須コードを開発する権限を与えられると、ACCCは、通信法に基づいてACMAが他のコードを開発する場合と同様に、ACMAが利害関係者と協議できると述べている。皮肉なことに、これには、必須の基準の詳細が各州および準州で流通している新聞に掲載されるという要件が含まれる場合がある。

 ACCCによると、最終的なコードには、権利保有者とデジタル・プラットフォームの間の協力のためのフレームワークを含めて、少なくとも以下の点をカバーする必要がある。

1.著作権を侵害するコンテンツのオンラインでの配布を積極的に特定して防止するために、権利者とデジタル・プラットフォーム業者がどのように協力すべきか。

2.オーストラリアの営業時間中や重要なライブイベントの放送中にプラットフォームに人員がいるという要件を含め、権利所有者とプラットフォーム間のコミュニケーションを改善するための対策は如何。

3.生放送の商業放送などの時間的制約のあるコンテンツの場合、権利を侵害するコンテンツと特定のプロセスを削除するための合理的な時間枠をどうするか。

4.権利所有者が繰り返し侵害に対処するために一括通知を行うためのメカニズム。

5.削除アクションが発生する前に、権利所有者が著作権の所有権を証明しなければならないプロセスを合理化するための措置。

 予備報告書の「推奨7」と最終報告書の「推奨8」の間の主要な進化は、プラットフォームと権利所有者間の協力をより重視しているようである。オーストラリアの営業時間中および重要な放送イベント中にプラットフォームを利用できる人がいて、デジタルプラットフォームにそのようなイベント中の時間依存性を遵守する必要があるという提案は、ライブ放送イベントで取引し、保護するための迅速なアクションを必要とする放送局から歓迎される。彼らの知的財産。近年、テレビで放映されたイベントを再放送するデジタル・プラットフォームでホストされている初歩的なライブストリームを使用して、権利所有者のライブ放送コンテンツの価値を下げることができることが明らかになった。

4. ACCCのGoogle LLCおよびGoogle Australia Pty Ltd(全体として「Google」という)に対して連邦裁判所に告訴

 2019年10月29日、ACCCのGoogle LLCおよびGoogle Australia Pty Ltd(全体として「Google」という)に対して連邦裁判所に訴訟を起こし、Googleが収集、保持、使用する個人の位置情報について、誤解を招く行為を行ったこと、および消費者に対し虚偽または誤解を招く表現をしたと主張旨リリースした。検証性が極めて明確であり、わが国の検討に資すると考え、その概要を以下で仮訳する。

 なお、言うまでもないがACCCは裁判所に持ち込む以上、日常的に見たアクセス記録情報を丁寧に保存、管理している実態を見るにつき、わが国の消費者庁や国民生活センターの活動内容と比較せざるを得ない。

 ACCCは、少なくとも2017年1月からAndroidの携帯電話やタブレットで画面に表示したときに、特定のGoogleアカウント設定が有効または無効につきGoogleが収集または使用した位置情報について消費者を騙しており、この点はオーストラリアの消費者法(Australian Consumer Law)に違反したと主張した。

 この問題表示は、Androidの携帯電話とタブレットでGoogleアカウントを設定する消費者、およびAndroidの携帯電話とタブレットからGoogleアカウントの設定に後でアクセスした消費者に対して行われた。

 「これらの画面上の表現の結果として、Googleは情報に基づく選択をせずに、消費者の場所に関する非常に機密性が高く価値のある個人情報を収集、保存、使用したとGoogleに対して訴訟を起こした」とACCC委員長のロッド・シムズは述べた。

(1)データの収集に関する不適切表示問題

 位置データの収集に関するACCCのケースは、2つのGoogleアカウント設定に焦点を当てています。もう1つのラベルは「ウェブとアプリのアクティビティ」である。

 ACCCは、2017年1月から2018年後半にかけて、消費者がGoogleに位置情報データの収集、保持、使用を望まない場合は、両方の設定をオフにする必要があることを消費者に適切に開示しておらず誤解を招くものであったと主張している。

 代わりに、ACCCは、消費者がAndroidフォンまたはタブレットでGoogleアカウントを設定したとき、Googleの指示に基づいて、「ロケーション履歴」がGoogleが収集、保持、またはユーザーが彼らの場所に関するデータを使用した保持に影響を与える唯一のGoogleアカウント設定であると誤って信じていたと主張している。

 同様に、消費者が後でAndroidデバイスのGoogleアカウント設定にアクセスした場合、Googleは「ウェブとアプリのアクティビティ」をオンのままにしておくと、位置情報データを収集し続けることを知らせなかった。

シムズ委員長は次のとおり述べた。

「我々の場合、消費者はこの行動の結果として、「ロケーション履歴」設定をオフにすることで、Googleが位置情報の収集を単純で単純なものにしてしまうことを理解したであろう。我々は、Googleは別の設定もオフにする必要があるという事実について沈黙を守り、消費者を騙したと主張した。

 多くの消費者は位置情報の収集を停止するために設定をオフにすることを意識的に決定しているが、Googleの行為が消費者がその選択をすることを妨げた可能性があると我々は主張する。」

 また、ACCCは2018年半ば頃から2018年後半にかけて、Googleが消費者に、位置情報データの収集、保持、使用を妨げる唯一の方法は、Google検索やGoogleマップなどの特定のGoogleサービスの使用を停止することであると説明したと主張している。ただし、これは「ロケーション履歴」と「ウェブとアプリのアクティビティ」の両方をオフにすることで実現できる問題である。

(2)位置データの使用に係る問題表示・説明

 ACCCはまた、顧客が「ロケーション履歴」と「ウェブとアプリのアクティビティ」の設定にアクセスしたときに位置情報がどのように使用されるかを説明するGoogleの画面上のステートメントが誤解を招くものであったとも主張している。

 Googleは、消費者が「ウェブとアプリのアクティビティ」の設定にアクセスした2017年3月以降、および消費者が「ロケーション履歴」の設定にアクセスした2018年5月以降、Googleは位置情報を収集および消費者によるGoogleサービスの使用するだけであることを表すメッセージを画面に表示していた。

 しかし、Googleは、消費者によるグーグルのサービスの利用に関係のない他の多くの目的のためにGoogleがデータを使用する可能性があることを開示しなかった。

シムズ委員長は次の点を述べた。

「Googleがこのデータの使用を開示できなかったため、消費者は個人の位置情報をGoogleと共有するかどうかについて情報に基づいた選択をする機会を今も奪われていると考えている。「デジタル・プラットフォームと消費者データに関連する透明性と不適切な開示の問題は、ACCCのデジタル・プラットフォーム調査の主な焦点であり、ACCCの最優先事項の1つであり続けている。」

 ACCCは、データ表現を収集して使用することにより、GoogleがAndroidオペレーティングシステム、Googleサービス、Google Pixelスマートフォンの性質、特性、適合性について一般の人々に誤解を与える可能性のある行為にも関与したと主張している。

 ACCCは、Google等に対し、裁判所の是正通知の発行とコンプライアンス・プログラムの確立を必要とする罰則、宣言および命令を求めている。

【問題の経緯と論点】

 Google LLCは米国に設立された多国籍企業であり、本社はカリフォルニア州マウンテンビューにあり、またAlphabet Inc.の子会社である。

 Google Australia Pty LtdはGoogle LLCの子会社であり、Pixelスマートフォンの販売を含む、オーストラリアでのGoogle LLCのビジネスの特定の業務を行っている。

 GoogleマップなどのGoogleサービスを消費者に提供する際の使用に加えて、Googleは次のような広告目的で位置データを使用する。

①他のユーザーの広告をパーソナライズするため。

②人口統計情報を推測するため。

③広告のパフォーマンスを測定するため。

④広告サービスを促進、提供、または第三者に提供すること。および/または

⑤匿名化されて集計された統計(来店コンバージョン統計など)を作成し、それらの統計を広告主と共有するため。

 Google LLCは、オーストラリアの消費者に対し次のようなさまざまなソフトウェア製品とサービスを提供している。

①Google Playストア

②Google検索

③グーグルクローム

④グーグルマップ

⑤Gmail

⑥YouTube

 これらのサービスには、Googleアカウントを使用してアクセスする。 Google Playストアなど一部には、消費者がGoogleアカウントにサインインしている場合にのみアクセスできるが、ユーザーがサインインしていない場合、YouTubeなどの他の機能にはアクセスできない。

 新しいGoogleアカウントのデフォルト設定では、「ロケーション履歴」を「オフ」(または「一時停止」)にし、「ウェブとアプリのアクティビティ」設定を「オン」にする。

「ロケーション履歴」が「オン」になっている場合、Googleはユーザーの位置に関連する個人データを定期的に収集して保持します。ただし、「ロケーション履歴」がオフになっている場合でも、ウェブとアプリのアクティビティ設定が「オン」になっていると、ユーザーのロケーションに関し、Googleのアプリやサービスでのユーザーのアクティビティに関連する個人データを取得かつ保持する。

 ACCCのDigital Platforms Inquiryの最終報告(2019.7.26)では、以下を含むプライバシー法の強化が推奨されている。

①プライバシー法の「個人情報」の定義を更新して、IPアドレス、デバイス識別子、位置データ、および個人の識別に使用できるその他のオンライン識別子などの技術データをキャプチャすることを明確にする。

②通知と同意の要件を強化して、消費者がデジタル・プラットフォームで収集できる個人データについて具体的に情報に基づいた決定を行えるようにする。

ACCCの例示による問題提起:

以下の例はあくまで架空のものであるが、「ロケーション履歴」がオフにされたときに、Googleの行動によりGoogleがデータを収集できた可能性があるとACCCが主張する方法を例示で概説する。

【仮説例A

 ジョンはAndroidスマートフォンのGoogleマップ・アプリを使用して、シドニーのCBDにある彼のオフィスからハイドパークのアーチボルドファウンテンまでのルートを検索する。ジョンはGoogleマップ・アプリを開き、目的地として「アーキバルドの噴水、ハイドパーク」を手動で入力する。ジョンはGoogleマップの指示に従い、モバイルデバイスを持ち、オフィスからアーチボルドの泉まで歩く。

 「ウェブとアプリのアクティビティ」をオンにしておくと、ジョンがGoogleマップを使用してこのデータを保存できるため、「ロケーション履歴」がオフになっていても、ジョンの位置に関するデータはGoogleアカウントに保存される。

【仮説例B

 メアリーはタウンズビルのショッピングセンターにいる。彼女はAndroidスマートフォンでGoogleアシスタントアプリを開き、音声認識機能を使用して「郵便局はどこですか?」と尋ねる。このアクティビティの一部として、「ロケーション履歴」がオフになっている場合でも、「ウェブとアプリのアクティビティ」をオンにすると、メアリーがGoogleアシスタントサービスを使用してこのデータを保存できるため、メアリーのロケーションに関するデータがGoogleアカウントに保存される。

【ローケーション・データ収集に関する端末表示での説明】

 以下の画像は、2018年4月30日から2018年12月19日までの間にAndroidモバイルデバイスでGoogleアカウントを設定する消費者に表示されるロケーション履歴とWebおよびアプリのアクティビティ設定の説明のバージョンを示している。

 

下の画像は、2017年の初めから2018年の終わりまでに、Androidモバイルデバイスを使用してロケーション履歴の設定をオフ(または「一時停止」)にしたユーザーに表示されるステートメントを示している。

【ローケーション・データ使用に関する画面表示での説明】

下の画像は、Androidモバイルデバイスを使用して、2018年後半から現在までのロケーション履歴の設定をオフ(または「一時停止」)にしたユーザーに表示されるステートメントを示している。

以下の画像は、2018年後半から現在までWeb&App Activity設定にアクセスしたユーザーに表示されるステートメントを示している。

以下の添付文書には、この問題に関連してACCCが提起した法廷文書が含まれている。これらの最初のドキュメントが後で修正される場合、私たちはそれ以上のドキュメントをアップロードしない。

Concise statement (全27頁) 表題「 NOTICE OF FILING  」

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(筆者注1) 「GAFA(ガーファ)」とは、Google、Apple、Facebook、Amazon.comの頭文字を並べたもので、2012年ごろからまずフランスで使われるようになった結構古くからある言葉です。今年ヒットしたスコット・ギャロウェイ氏の書籍でタイトルになったこともあり、最近は日本でも取り上げられる機会が増えました。

 GAFAという言葉は、広告や検索(Google)、スマートフォンとそのアプリ(Apple)、SNS(Facebook)、ショッピング(Amazon)というネットの「プラットフォーム」で大きなシェアを持つ「プラットフォーマー4傑」という意味で使われています。また、「個人情報は集めるわ、市場独占で自由競争を阻害するわ、税金はごまかすわ、のずるくて巨大な米国企業」という、あまり良くないニュアンスでも使われている言葉です。(IT mediaから一部引用)

(筆者注2) 2017.9.16筆者ブログ「スペインの個⼈情報保護庁(AEPD)のFacebookに総額120万ユーロ(約1億5,600万円)の 罰⾦刑とEU加盟国の新たな規制強化の動向(その1)」同(その2完)等を参照。

(筆者注3) 「予備報告」という位置づけながら合計374ページにも及ぶこの報告書の中でACCCは「GoogleとFacebookがオーストラリアのニュース業界に大きな影響を及ぼしているため、2014年から2017年の間に新聞などの伝統的な活字メディアの職業ジャーナリストの数は20%以上減少しています」と指摘。「オーストラリアのジャーナリズムにおける、世界的なデジタルプラットフォームの役割について再考すべきである」と結論づけている。

(筆者注4) 公正取引委員会は2019年10月に同年7月26日にACCCが公表したリリース文を概要訳を行っている。その内容はあくまでACCCのリリース文の概要訳文であり、報告書の本体623頁を改めて整理・解析したものではない。

 なお、わが国の公正取引委員会の事務局の情報解析能力を疑うわけではないが、この公開資料は単なる直訳であり、内容的に見てACCCの情報を超えるものではない。これに関し、最近筆者がブログで取り上げた「オーストラリアの消費者擁護団体やACCCが行った水に流せる使い捨てシートによる下水施設の「ファットバーグ」の原因追及と製造企業の広報活動の在り方をめぐる告発の動向」を併せて読まれたい。

 すなわち、ACCCの世界的衛生用品企業である「キンバリー・クラーク(Kimberly Clark )」告発の背景として消費者保護団体(CHOICE)の地道な実証テストがあっては初めてACCCの告発がありえたのである。しかし、ACCCのリリースではこの点につき何ら言及していない。単なる翻訳作業以上の情報でなければ、わざわざ公正取引委員会サイトで紹介する意味がない。

(筆者注5) わが国のデジタル市場競争の在り方についての検討はどうなっているであろうか。

一例として 内閣官房デジタル市場競争会議の開催について令和元年9 月2 7日デジタル市場競争本部決定同会議の議員名簿を見てほしい。なお、第2回同会議資料「豪州の動き」(41頁)においてACCCの2019年7月26日の最終報告書で示された提言内容につき引用されている。

(筆者注5-2) Fitbitはカリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く。このため、米国内で最も厳しいといわれる2020年1月1日施行された同州の保護法「(California Consumer Privacy Act of 2018」に準拠すべくプライバシーポリシーで明言している(2019.12.18 改訂New!当社では最近、カリフォルニア州の新しいプライバシー法の下で義務付けられる開示についての項目を含めるために本ポリシーを改訂いたしました。以下の「変更のまとめ」と改訂版ポリシーをご確認ください。以前のポリシーは当社アーカイブに保管されています。)。しかし、その内容を読むとそうではない箇所もあり、この点については別途まとめたい。

 なお、同州の保護法の仮訳としてわが国の個人情報保護委員会サイトがあるが、内容の解説は一切ない。一方、2019.6.6 JETRO「施行が迫る「カリフォルニア州消費者プライバシー法」(米国)」は企業から見た対応上の重要と思われる点をEUのGDPRとの比較も含め網羅しているレポートである。

(筆者注6) Wear OS by Google(旧称Android Wear)は、スマートウォッチ(腕時計型ウェアラブルデバイス)向けに設計されたGoogleのAndroidベースのオペレーティングシステム。Android携帯端末やiPhoneとBluetoothや Wi-Fi、LTEでペアリングすることで、端末で受け取った通知をWear OS by Google側で閲覧や操作をできる。またGoogle Playより、Wear OS by Googleに対応したアプリをインストールすることができる。(Wikipedia から抜粋)。

(筆者注7) 運用型広告(プログラマティック広告)とは、膨大なデータを処理するアドテクノロジーを活用したプラットフォームにより、入札額や広告素材の変更などの広告最適化を自動的かつ即時的に支援する広告手法をいう。

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