離島への不法上陸や民間船襲撃に
防衛相命令で自衛隊出動
閣議決定省略、政府が新類型検討

武装集団による離島への不法上陸や日本民間船の襲撃の際に、政府が防衛相の命令で自衛隊を出動できるようにする新たな行動類型の設置を検討していることが27日、分かった。有事発生時の「防衛出動」や緊急事態時の「治安出動」に必要となる閣議決定や国会承認の手続きを省き、自衛隊の迅速な対応を可能にするのが目的で、政府は有事に至らない「グレーゾーン事態」への具体的対応の柱にしたい考えだ。現行法では、武装集団が離島に上陸する恐れがあり海上保安庁や警察が対応できないとき、自衛隊が自衛隊法の「治安出動」や「海上警備行動」に基づき、閣議決定などの手続きを経て出動する。
新類型は、外国航空機が領空に違法に侵入する場合の「対領空侵犯措置」や、「弾道ミサイルの破壊措置命令」を参考にしている。
対領空侵犯措置の場合、防衛相に命令決定があり、首相の承認や閣議決定の手続きも不要だ。弾道ミサイルの破壊措置命令は、手続きが複雑な防衛出動では間に合わない事態に備えて、防衛相が首相の承認を得て命令できる。<iframe id="dapIfM3" name="dapIfM3" src="about:blank" frameborder="0" scrolling="no" width="1" height="1"></iframe>それぞれの手続きが簡素なのは、瞬時を争い迅速な対応が求められる上、自衛隊しか対応できないことが背景にある。武器使用による国民への影響も少なく、「グレーゾーン事態も似た状況にある」(政府関係者)という。新類型には、自衛隊の最高指揮官である首相の承認を要件に加えることも検討している。
新類型の武器使用基準は「治安出動」の規定を準用する。「海上警備行動」の場合は武器使用が正当防衛や緊急避難などに限定されるが、治安出動の場合は自衛隊法によって「合理的に必要と判断される限度」において武装集団の暴行や脅迫活動を鎮圧できる。
政府は、与党協議を踏まえて秋の臨時国会で自衛隊法改正案など関連法案の提出を目指す。ただ政府内には、「現行法制に隙間はない」とする公明党への配慮から、自衛隊出動の可否判断をあらかじめ閣議決定で首相に一任する案も浮上している。