二階氏の訪中に意味はあったのか
8月27日から29日まで、日本政界の「親中派」筆頭である二階俊博日中友好議連会長・自民党元幹事長(85歳)率いる超党派議員団が、5年ぶりに中国を訪問した。最高指導者の習近平主席との会見はかなわず、王毅外相との会談も、約40分も待たされた。今回の訪中は、成果が乏しい上に中国に冷遇され、中国側に利用された面ばかりが目立った。
訪中は、友好ばかり演出すればいいわけではない。二階会長率いる「日中友好議連」の訪中成果はあったのだろうか?
思うに、第一の成果は、中国側が、パンダの日本への貸し出しに積極的な態度を示したこと。第二の成果は、日本側から中国への修学旅行の推進を提案し、王毅外相の賛同を得たことだった。
日中間の懸案となっている諸問題、例えば日本産水産物の中国への輸出再開、福島第一原発の処理水問題、8月26日に中国軍機が初めて日本領空を侵犯した問題、邦人がスパイ容疑で逮捕されている問題などにも触れたようだが、なんの進展もなかった。
日本人のビザなしでの短期中国訪問再開に関しても、中国共産党序列3位の趙楽際全国人民代表大会常務委員長が、「問題を重視する」と言及しただけだった。
前回2019年に「日中友好議連」が訪中したときは、習近平主席が会見したが、今回はできなかった。完全に冷遇されたのだ。議連が成果とする上記の二点すら、私には中国に利用されているように見える。
「パンダを貸して、空母を得る」中国の“パンダ外交”
まず、パンダの「輸出」は、中国にとって大きなビジネスだ。中国のネットユーザーの間では、「パンダをレンタルに出して、空母と取り換える」(租熊猫、換航母)と言う言葉が流行っているほどだ。上野動物園にいるシャンシャンとその両親の親権は、中国にある。年間のレンタル料は約1億800万円だ(日本経済新聞2017年12月22日付)。
中国が、パンダを外国へ貸し出すのは、利益が大きいだけでなく、中国のイメージアップにもつながるからだ。米中関係の悪化やウクライナ侵攻を始めたロシアに中国が肩入れしていることで、パンダの欧米への貸し出しにも赤信号が灯っている。
そんなタイミングで、日本がパンダを積極的に受け入れれば、中国の孤立感は薄れ、国内向けに絶好のアピールになる。
「もっと強気な対中外交を」
具体的な犯罪内容をはっきりさせずに、スパイ活動をしたとして中国が日本人を拘束している件も、議員団はもっと声高に訴えるべきだった。「人権に配慮せよ」と強く主張すれば、中国側がしぶしぶ解放するチャンスも生まれるのではないか。パンダのレンタルや学生の交流も同様だ。「貸してくれて、交流させてくれてありがとう」と頭を下げるのではなく、代わりにこちらの言い分を通すくらいの態度で進めて構わない。
中国はいま、外交面で孤立している。「戦狼(せんろう)外交」の末に、ロンリーウルフになってしまった。中国国民も、政府がアフリカなどの途上国とばかり仲良くし、西側の先進国と対立する状態に不満を感じている。
9月4日から6日まで、「中国アフリカ協力フォーラムサミット」が、北京で盛大に開かれた。53ヵ国のアフリカ諸国の首脳が北京を訪れた。多くやってきた。会議中、「世界500強(の企業)を中国から追い出したが、世界500弱(の国)を招きいれた」というジョークが、SNSで盛んに語られた。
現代ビジネス
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