(株)藤川建設のブログ

地元の山の木を使った家づくり

地場産の食材を活かした料理店 0258

2014年09月05日 | 螺旋階段のある店
カウンターのイメージ・ボード



この9月にオープンした「0258」という変わった名前の料理店。
料理の食材はもちろん、店内の各所に「こだわり」の品を揃えています。



外観



夜の様子


昼間の様子




外観のイメージボード

店舗のフロントガラスから見える螺旋階段は
この建物の「顔」と言えるべき存在





店内の様子


カウンターから螺旋階段を望む


2階の客席


2階の客席から正面の通り方向


化粧室








営業時間
昼 11:30~14:30
夜 15:00~23:30




めいきんぐおぶ0258

藤川建設の住宅技術を駆使した店舗改装の内容説明です


始まり

椅子の選定

登り天井

螺旋階段

配線、配管スペース


もくじへ・・

電気配線、配管スペースの工夫

2014年09月04日 | 螺旋階段のある店
配線や配管スペースでサーカス並の裏ワザを使っています


城内町の店舗改装で、悩みの種は電気配線、給排水の配管スペースでした。限りある空間の中で、フレキシブルかつ大胆な隠し技を駆使しています。

これには、準防火地域内の準耐火木造のノウハウが役に立ちました。


カウンター周りの配管の工夫


厨房設備の裏側のカウンターを利用して配管をしています
床の2本は冷蔵庫のドレーン排水用
壁から出てきているのが、流しの排水
上のカウンターの直下が給湯、給水配管



客席側の「足置き」の下が、排水スペースになっています



既存の土間によって床下に厨房の排水管を設置しても勾配が確保できない事が判明し、考えぬいた結果、客席側のカウンターの下の「足置き」を排水、給水管スペースにしました。電気の配線も当然この中に押し込まれています。

僅かな「隙」に必要なモノを詰め込む・・離れワザの連続です。



トイレの壁も配線スペース


便器の右側の壁は、見切りによって中間が取り外せるようになっています


スイッチの配線が詰まっている配線スペース


厨房の壁の一角に、この店舗の照明スイッチを集約していますが、電気屋さんに・・

「配線が多いから、一番最後に蓋が出来るようにしてほしい・・」

とリクエストされ、厨房の裏にあるトイレの壁の一部を取り外す事で、配線が点検できるようにしています。こういった点検口を設ける事で、後のメンテや増設も可能になります。普通なら、ボードを貼って直ぐに表具にしてしまうのでしょうが・・・・



天井の廻り縁の板は配線スペース


壁の天井付近に配線スペースを設けています


板を取り付けて、配線を隠します
この板は、ビス止めになっているので、いつでも取り外してメンテナンスや増設が可能です


仕上がるとこんな感じです



木造準耐火構造では、柱や壁を石膏ボードでくまなく包まなければならず、天井と壁の間の電気配線に苦労します。登り天井の時でも、後でボードを剥がして配線するのは大変です。

その問題を解決するのに、天井付近、廻り縁の代わりに幕板による配線スペースにすることで、フレキシブルな配線スペースを実現しています。

板を取り外せば、電気配線のメンテナンスや増設も可能になる優れもの。

見た目にもシンプルに仕上がるし、古民家風の「桁」の様にも見せられます。

この幕板の下にフックを取り付ければ、額を下げる事も可能な一石二鳥も三鳥もあるアイテム。





床下の間接照明


巾木の下にLED電球を取り付けて間接照明にしています


壁の下地の僅かなスペースに光源を取り付けなければならない・・
全体にふかした壁と、巾木の形状を工夫・・巾木の下に細いLED電球を設置して実現


「床の巾木の辺りから床を『ボワツ』っと照らしたい・・」

そういったお客さんのリクエストに応えるために、色々悩んだ結果、コンパクトなLED照明を巾木の隙間に設置する案を採用しました。

白熱灯は当然こんなスペースには入らないし、蛍光管にしても、こんなコンパクトなモノは無い。苦肉の策ではありますが、細い形状のLED照明を巾木の僅かなスペースに入れ込んでいます。幅が25㎜という細いLED照明・・




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木で螺旋階段を作る

2014年08月31日 | 螺旋階段のある店

木の螺旋階段が実現するまでのお話です



店舗改装計画の初期段階で、階段をどうするのかをお客さんと打ち合わせをしたのですが、思い切って店舗の一番見えるショーウィンドの場所に「螺旋階段」を提案しました。

最初は、

「スペースが狭くて、お盆を持って上り下りするのが大変」

と難色を示されたのですが、最終的には了承を得て、実現に一歩近づきました。

そして、通常思いつくのは「鉄骨」による螺旋階段なのですが、どうもお客さんのイメージ的に鉄より木の方が良いという事で、「木」で螺旋階段を実現する方向となりました・・・




螺旋階段のある店舗のイメージ


とりあえず、店の外観イメージを描いています。外から螺旋階段を上り下りするのが見えるのは女性的にはNGなのでしょうが、「絵」的にには魅れます。





螺旋階段の構造スケッチ


木造で螺旋階段を実現するためのラフスケッチで大工に構造を説明します。
中央に丸い親柱を建て、その周りに円柱を配置して段板で繋ぐ・・
単純な構造ですが、実際には大工が嫌がる仕事でもある。





中心の丸柱を探すのも一苦労です。乾燥した手頃な丸太が、そう簡単に見つかるワケがない・・
とりあえず、材木屋さんに行ってみたら、片隅に転がっている手頃な丸太を発見!
速攻で購入し、お客さんに見てもらいました。
「縁」と言うのはあるものです。



店舗の実際の位置に立ててみます。
丸太の見え方や反りの具合のもあるので、現場で方向を確定します。


工場での加工風景。
柱を磨いて、墨を出します。


木口(こぐち)に方向が墨出しされています。


段板の原寸図を合板に作成。この型板が最後まで重要になる。



親柱を現場に立てます。


1,2,3段目が終了


4~8段目が架け終わりました


上から見た所。
廻っている状態が分かります。


最後の直階段です。


直階段は、組み上げてから2階の床と廻り階段に接続します。


直階段を架け終わりました


ようやく開通


螺旋階段の完成



実際、階段を架けてしまえば、単なる階段でしかありませんが、そこへ行きつくまでのプロセスや加工を考えると、まず、やらないでしょう。

知恵と苦労と汗の結晶なのであります。

それを実現してしまうのが、ウチの会社・・・・




カウンターから眺めた螺旋階段
このアングルが、美しい。



上から見たところ・・





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小屋梁を活かす~昇り天井の実現

2014年07月10日 | 螺旋階段のある店
城内町の店舗工事を行っています

スペース的に狭く感じるという事で、
今までの天井を解体し、天井高を上げました。


単に「天井を上げる」場合でも、そこには無数の技術的なノウハウが必要となってきます。

化粧としての天井もさりながら、内部の熱の逃げる、又は外部からの熱の影響を受けやすい屋根の温熱環境も考えなければなりません。

木造の構造材を活かしながら、且つ、建物の性能を向上する・・

天井と屋根の隙間が無い場合は、「気密層」、「断熱層」、「空気層」、「遮熱層」を的確に施工する必要があります。




今までの天井材を解体すると、そこに小屋梁が眠っていました。
丸梁の墨付け、加工は大工の腕の見せ所・・
この建物を作った大工の息遣いが聞こえてきそう・・・
何とか活かしたいところです。



既存の天井下地を取り除いた状態。
この丸梁を魅せるには、昇り天井にする必要があります。



まずは、小屋丸太を磨きます
(磨くのは、大変です)


昇り天井にすると、断熱材を入れるスペースでギリギリになるため、
小屋裏に溜まる熱気を逃がすのに強制排気を行います。
棟の一番高くなった部分に排気用のダクトを設置しています。



タルキの下に遮熱シートを施工します。
夏場に焼けた屋根の鉄板から赤外線となって熱が伝わってくるので、
遮熱シートによって熱線を反射させます。


遮熱シートと断熱材の間に空気層を設けるように、
天井下地を作っていきます。
石膏ボードを貼る前にポリシートを貼って気密性を上げます。


石膏ボードを貼ると、天井の様子が分かってきます。



注意すべきは、

1.(内部の)断熱性、気密性
2.屋根材が日に照らされて熱せられた熱を遮断する

の二つです。

1の断熱性能を上げると同時に、2の遮熱も考えなければならない点です。

屋根からの熱は、「伝導」と「輻射」の二種類で伝わってきます。
「伝導」に関しては、断熱材でカバーできますが、「輻射」に関しては赤外線を反射する材料を使う必要があります。

小屋裏に溜まった暖かい空気を外気と入れ替える(小屋裏換気)も必要です。

その辺りは、住宅で培ってきた技術の見せ所・・(と言っても、最後は見えない部分なのですが・・)



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この椅子・・いいっすね~

2014年05月15日 | 螺旋階段のある店
店舗改装の現場に合う家具を探しに店主さんと市内の家具屋さん(矢沢木工所)にお邪魔しました。

どちらかというと、テーブルの大きさや雰囲気、価格を割り出したかったのですが、家具屋さんの店内を物色していると、椅子が一番重要なのだと気づきました。

来店するお客さんが一番接する「椅子」・・

この椅子が座り心地が良くなければくつろげない。

家具屋さんの店長さんは、

「椅子は工事費の予算があって、一番最後に余った予算で決めるから、ロクなモノが購入できていない・・」

と、他の店舗での例を話してくれました。

ネットだと、価格表示や写真だけの情報で購入してしまいますが、実際の使い心地は座ってみなければわからない・・・・


矢沢木工の店内


テーブルや椅子が所狭しと並んでいます


無垢の一枚板を使ったテーブル


飛騨高山の職人の作った椅子、テーブルセット


勉強机もある


8万円の椅子は座り心地抜群です。
さすが、8万円!


座り心地の良い椅子は、高い値段です。安いものはそれなりの座り心地でしかない・・

回転数を増やして、どんどんお客が入って出て行く店の場合は、安い椅子でも良いのでしょうが、ゆっくりと寛いでもらいたい店の場合は、それに合ったコンセプトで臨まないとでしょう。

テーブルセットは、矢沢木工さんで調達が可能だという事が確認できたのですが、次なる問題は、カウンター用の背の高い椅子です。

「顔を合わせながら、カウンターでやりとりをしたい・・」

という店主さんの要望を満たす椅子が見当たらない・・

業務用の椅子ならばあるのですが、なかなか良い椅子がない・・


そういった要望に応えるには、特注で作るしかないと、アドバイスを頂きました。

地元で、広葉樹を主体としたオリジナルな家具を作っている人が居るので、そこに注文することがしばしばある・・

とのこと・・

そして、その人が、以前から付き合いのある「茂岱(もたい)さん」だった・・・・

山の木を使おうというグループを10年前に立ち上げて以来、個々に活動をしてご無沙汰をしていたのですが、再び繋がろうとしている。

不思議な縁です。



茂岱さんの工房にて・・・




東京に活動を広げている茂岱さんの工房では、特注の家具の作成中でした。独自のペースで作っているので、大量生産もコストダウンも難しいのですが、お客さんから「こういった家具が欲しい」と言われれば、それに沿った家具を製作してくれます。



作りかけのテーブル


茂岱さんとコーヒーを飲みながら、店舗のコンセプトと椅子の概略を伝えました。

他の雑談の方が多いのが、我々、作り手の悪い癖・・

若い方が「家具」の道に入ってくるのは、だいたい二通りあって・・

技術・・木の加工や組み合わせ・・「職人」に憧れて入って来る人。

デザインから入ってくる人

の二つに分かれ、どちらかと言うと、デザイン系の人が当たりやすいとの事・・ネットで写真を掲載すれば、注文が来る世の中なのは、どの業界でも同じでしょうか・・

ただし、家具・・特に椅子に関しては、(いや、他の家具もそうだとおもうのだが・・)「使い勝手」「使い心地」が重要なのではないか・・それが第3の道だと思います。

どんなに職人芸で凝った造りでも、デザインが良くても、使い心地が悪くては、価値が半減してしまう。


それは、住宅でもそうなのでしょう・・


お互いの共通点のようなものを再確認しながら、椅子の注文をする・・

まずは、プロトタイプ・・「こういうの、どうでしょう?」みたいな所から始めて、改良を加えていくのも面白い。

商品開発は、幾つもモデルを作って、吟味をしますが、それらは全て廃棄されてしまう・・

最期に決定するまで、膨大なモノを作らなければならないのですが、そういった見えない部分にお金がかかります。

「使い心地の良さ」「使い勝手の良さ」を追及するならば尚更でしょう・・


カウンターには、合計6個の椅子が必要ですが、同じデザインではなく、進化の過程が見れるような・・最後に商品で売れるような椅子に仕上げられれば・・そして、それを体感して、気に入ってもらえば、茂岱さんに作ってもらう・・というような広がりがあってもいいのではないでしょうか?


店に来た人が、椅子に座って・・

「この椅子、いいっすね~」

と言わしめたい・・・


椅子から始まる、店舗改装があったっていいじゃないか?



で、

6月に品評会があるので、それに合わせて、試作してみるとのことです。




椅子のイメージ伝達はこれだけです・・・

どんな作品ができるのか、楽しみです。





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