マンガは五官をだめにする! (東海戯言)

気ままに読んだマンガのことを。タイトルは『チョコレート工場の秘密』の「テレビは五官をダメにする」から

トニーたけざき 『トニーたけざきのガンダム漫画』

2007年05月15日 | おもしろいよ
ガンダムを冠した作品が多くなりました―富野由悠季(とみの よしゆき)さんが当初批判していた宇宙戦艦ヤマトを超え、それこそ仮面ライダーやウルトラマン、戦隊ヒーローに迫る勢いを示しています。けれども(というよりもシリーズものに共通して見られる現象かも)ファーストと俗称される1作目は今でも高い評価と人気を得ています。
トニーたけざきさんは、私の一つ上。ですから、最初の放映時には主人公のアムロと同年代だったことになります。それまでのロボットアニメとは違い、主人公の年齢層より上を対象とした作品だったのですから、トニーさんや私の世代は、対象年齢のズバリど真ん中だったわけで、それゆえ作中に出てくる年上の女性陣に、アムロと同じような憧憬を抱いたことでしょう。
人気作品ゆえ(初めは視聴率が悪く、その人気は再放送からじわじわと来て、劇場版政策発表で一気に高まったものですが)パロディも多く、『ファンロード』『OUT』などで好んでネタにされました。
それが今やガンダムだけの雑誌『ガンダムエース』が発行され、トニーさんや大和田秀樹さんがパロディを描き、コミックスが発売されています。

『トニーたけざきのガンダム漫画』はガンダム第一作のパロディ。同じ『ガンダムエース』に『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を連載している安彦良和さん似せた絵で描かれておりまして、コミックスならともかく、雑誌掲載時には本編と間違われたこともあるとか。どのくらい似ているかというと、1巻の巻末に特別寄稿として安彦さんが「そういえばオレも…時々どっちがオレの原稿だったかわからなくなる…」と描いたほど。また「トニーは安彦さんのアシスタントだった」といううわさが流れたほどでした(このうわさは事実無根です)。
それゆえ非常に面白いのですよ。私などはオタク第一世代ですから、読んでいると古谷徹さん池田秀一さん戸田恵子さん永井一郎さんといった声優さんの声が脳内で自動再生されます。それでパロディを読むのですから、余計に楽しい。本物そっくりのキャラが本物の声でドタバタやるのですからね。
ところがもともと寡作なトニーさん。1巻が出てから3年もの間続巻が出ず。私は雑誌の方を読んでいないので、もう終わってしまったのかと思ってました。
そして先日3年ぶりに出たのがこの2巻。最初はびっくりしましたね。「まだ描いているんだ」。そして手にとって二度びっくり。値段は1巻より高いのに、ページ数が減っている!
更にページをめくって三度びっくり。なんとカラーで3D!
3Dと言ってもCGではなく(一部CGを使ってますが)、プラモデルのジオラマ撮影なんですよ。ジオラマで漫画を描いている。これはこれでえらく手間がかかる作業ですよね。
もちろん全編オールカラー、ジオラマというのではなく、ジオラマは半分、カラーは3分の2ほどですが。
それにしても手間と暇、そしてお金をかけなければここまでできないでしょう。巻末にメイキングとして製作途中の写真とコメントを載せているのですけれど、読んでいてため息が出ます。トニーさんはモデラーとしてもプロなんじゃないでしょうか。
さて、1巻でガンダムのネーミングの謎を解き、GMの簡略版「シム」、ザクの簡略版「サク」なる珍種を、そしてシャア専用のあのモビルアーマーを出したトニーさんです(そういえばシャア専用のあのモビルアーマーもプラモデル撮影でした)。当然2巻での期待は大きくなります。
*ガンダムを知らない人にざっと説明すると(そのような人はおそらくこの文章を読んでいないでしょうが)、モビルスーツ、モビルアーマーというのは単座の大型兵器、ロボットのようなもの。シャアは漫画やアニメによく出る美形のライバルで、真田幸村井伊直政赤備え(あかぞなえ)の如く、乗機を赤く塗ったのです。そしてそれを称して「シャア専用」と言うのです。
プラモデルやゲームの世界でシャア専用を冠するモビルスーツは数種ありますが、そんな並のものでは面白くありません。トニーさんは期待に見事こたえてくれました。
まさかあのモビルスーツをシャア専用にするとは……!


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