マンガは五官をだめにする! (東海戯言)

気ままに読んだマンガのことを。タイトルは『チョコレート工場の秘密』の「テレビは五官をダメにする」から

岸大武郎 『恐竜大紀行』

2005年08月17日 | おもしろいよ
生命の普遍性を描いたがゆえに風化しない漫画



恐竜! かつてこの惑星を闊歩した巨大生物。子どもの頃心震わせた方も多いでしょう。かくいう私もその一人。図鑑を買ってもらって、一所懸命名前を覚えたものでした。
もし昔の「恐竜図鑑」と今のそれを見比べたらきっとビックリするでしょう。
皮膚の色、質感から尾の位置、姿勢までがらっと変わっているのですから。

以前「別冊宝島」で恐竜の復元図の時代による変遷を見たことがあるんですが、恐竜という存在が認められた当初のものは爬虫類というより両棲類に近いものも多くありました。それが私の子どもの頃(70年代)になると爬虫類っぽくなり、一部はゴジラなどの怪獣みたいになってきます。
現代の復元図と過去のを比べて一番目に付くのは尻尾の描き方でしょうか。
昔は現代のワニやトカゲよろしく地面に引きずり、だらりとしていたのが、現代のはピンと張っていて、まっすぐ後方に突き出ています。こころなしか短くなったものも多いような気がします。

こういった「現代的な」復元図が世にあふれたきっかけはやはり映画『ジュラシック・パーク』でしょう。もちろん映画以前から現代風の復元図は出ていたんですが、映画の中で疾走する肉食恐竜などを目の当たりに見たインパクトは強烈なもの。もちろん映画の描写の間違いを指摘する学者もおりましたが、その一方で「はじめて『正しい』姿勢で動く恐竜を見た」と絶賛する声もあったのです。

この漫画は「『ジュラシック・パーク』以前」の漫画です。
かつて少年ジャンプで連載され、単行本も出ていたのですが、ながらく絶版となっておりました。今回待望の復刊です。しかも書き下ろし新作つきで!
「以前」の漫画ですから皮膚や尾などは古来と現代の中間の描写になっています。
当時「新しい」とされていた学説を取り入れてもいるのでしょうが、それらも色あせて見えるのはやむを得ません。
しかしこの漫画が多くのファンに復刊を希望され、刊行されたのは「古い」「新しい」を超えた魅力があるからなのでしょう(そもそも新しい学説が正しいとは限りませんからね)。

漫画は恐竜の生態レポートといった体裁で、人間のキャラは一切出てきません。
そして現代の生物間でも繰り返される生きるためのドラマが繰り広げられています。
それは食うものと食われるものの物語であったり、伴侶を得るための戦いであったり、共生の物語であったりします。
多くの動物記で述べられていることを恐竜に当てはめたんですね。それを自然に読ませるのがこの作者の凄いところです。

今から10年、20年経てば現代の学説も改められるかもしれません。
それでもこの漫画は色あせないでしょう。






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2 コメント

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USAゴジラ (とら)
2005-08-18 14:12:38
思えば、アメリカで作られた『ゴジラ』も、最近の恐竜復元図の影響を、大きく受けていましたね。

あれはあれで面白かったけれど、ゴジラとは思えなかったなあ……(笑)。

スタンディングタイプの「恐竜」に、かぎりないノスタルジーをおぼえてしまいます。
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USAゴジラ (フーシェ)
2005-08-21 17:03:49
USAのは「なるべく生物観を出したかった」そうですね。人間の理解を超えた「怪物」ではなく。。。

ゴジラタイプの怪獣だとレッドキングやエレキングなんかが好きです。

そしてそれらにそっくりの(多分「怪獣」の方がまねたんでしょうが)立ち姿のイグアナドンもカッコいいですね。
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