ツガノガク 『涼宮ハルヒの憂鬱』

小説・アニメで人気の谷川流（たにがわ・ながる）さん原作「涼宮ハルヒシリーズ」の漫画版です。
ネットでのあまりの人気から私も小説を買いました。読みまして、確かに話題になるだけのことはあるなと思いました。小説のキャッチは「微妙に非日常系学園ストーリー」なのですが、むしろ「微妙に非エスエフ系のエスエフ」といったほうがいいかな。スニーカー大賞受賞作だけあって、なかなかユニークな作品でした。
そして売り方がまた上手い。現在の人気は小説よりもアニメがもたらしたものらしいのですが、アニメの方も手の込んだ仕掛けをほどこしてまして、原作を読んだ人が飽きないようにわざと放映順を変えたりとか、作中とおなじＨＰを作ったりとか、今の「オタク」の心情を上手くついています。

私の個人的な感想を言えば、２作目以降はさほど面白くなく、ライトノベルと昔のジュブナイルＳＦとは違うのだなあと改めて認識しました。

ところがこの漫画版は評判が悪いのです。絵が荒いとか、キャラクタの表情が違うとか。アマゾンのレビューなぞひどいものです。
漫画を描いてらっしゃるツガノガクさんは、他にも『時をかける少女』漫画版を描いており、アマゾンのレビューでもそちらはよい評価を得ています。決して絵が下手なわけではありません。
思うにアニメとの違いが、ファンの方々をいらだたせるのでしょう。
もちろんファンはファンでそれぞれに同人誌を作ったり、サイトを作ったりして（あるいは底まで行かずとも個人的に）、イラストを描いたり、漫画を描いたりしているのですが、そこはそれ、好きな者同士が集まった閉鎖空間ですから、手ひどい批判などはそうそうないのです。
ならば小説とアニメもまた違うじゃないか、と思うのですが、これが先ほど申しました「上手い売り方」でありまして、小説のストーリーのみならずイラストにも忠実にキャラクタを描いているため、さほど違和感はないのです。普通なら映像と文字であれば後者の方がボリュームがあるのですが、ライトノベルの特徴か、本シリーズではむしろ逆で、アニメの方が音声付きである分、充実しているのです。
とはいえ、私は小説の雰囲気の方が好きですけれどね。

小説が中学生～高校生向きとすれば、漫画版は中学生向きか。
漫画ならではの工夫として、ストーリーの順番をいじくっています。またそれぞれの人物のキャラクタがより漫画的に（原作はライトノベルなので、もともと漫画的なキャラクタです）単純化されています。

本書の不幸は原作とアニメにみられるような緊密なつながりがないことでしょう。
私はそれなりに楽しめました。