マンガは五官をだめにする! (東海戯言)

気ままに読んだマンガのことを。タイトルは『チョコレート工場の秘密』の「テレビは五官をダメにする」から

加藤元浩 『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』

2007年02月22日 | わくわくする
『ロケットマン』が10巻で完結し、さあ次は何かな、と思ったら、『Q.E.D』と同じミステリもの。しかも本作の主役の榊森羅(さかき・しんら)君は、『Q.E.D』の主役燈馬想(とうま・そう)君のイトコなんだそうです。ワトソン役も、腕っ節の強い女子高生、と被っている部分は多い。
いつかコラボさせるのかしらん。

しかしこの『C.M.B』には、『Q.E.D』とは異なる魅力、失われた魅力もあります。
まず探偵役である主人公。並外れた知識と知性を誇ることは同じですが、燈馬君よりも奇人度が数段高い。語学、数学、物理、化学は大学レベル。そして歴史、地学、生物はそれ以上とまさにスーパーマン。たった一人で生活し、しかも個人で博物館を運営しているほど。ところが日常生活能力はゼロで、外国暮らしが長かったせいもあるけれど、洗濯機や自動販売機、缶ジュースなどの存在すら知らなかったようです。
飛びぬけた才能の持ち主は、その分どこかが欠けているというキャラクタは昔から魅力的で、ホームズなどもそうだったから、榊君は正統派の名探偵と言えるかもしれません。
燈馬君も、登場したてのころは情緒に欠ける人間として描かれていたのですけれど、ヒロイン水原可奈ちゃんと接してゆくうちに人情の機敏にやや通じるようになってきました。すなわち、知性の面以外では「普通の人」に成長していったのです。
そういった意味で、榊君は燈馬君の初期の魅力を蘇らせたキャラクタといえるでしょう。さらに燈馬君が、過去のさまざまな経験から、年齢よりは大人びた、「冷めた」人間であるのに対し、榊君は天真爛漫。過去どんな経験があったのかはまだ語られていませんが、年齢よりはるかに子供じみた性格であります。無邪気さゆえの強さ、そう、『ドラゴンボール』孫悟空(初期)とも通じるところがありますね。
また燈馬君が主に理数系の薀蓄を語ってくれるのに対し、本作では「博物館」の名のとおり、地学・歴史・生物・雑学などに相当詳しい。日本の古典芸能の知識まで披露しています。『有閑倶楽部』の菊正宗清四郎君と似ていますね。
扱う事件も、怪奇的なものも多く、カーや横溝さんに通じるものがあります。
ですから本作は決して『Q.E.D』と同じものではないのです。
クイーン、カーを思わせる作品を、それも質の高い作品を描く加藤さん。こうなるとウリスティばりのものも、いつかは描いてくれると期待しちゃっていいですかね。

ちなみに4巻は、塩野七生さん『ローマ人の物語』シリーズの読者なら、より楽しめる内容になっています。凱旋門って案外小さいんだな。。。


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