『蟹工船』はプロレタリア文学の傑作として、文学史で必ず習う作品であります。しかし作者の小林多喜二が共産主義者であり、特高(特別高等警察)によって拷問死させられ、著作が国禁とされたとことから、こうしたセンセーショナルな面がクローズアップされ、その文学性を語るのが二の次にされているような気がします。敷居が高いという印象を与えています。
各種文庫本でも脚注をつけていない。若い読者への配慮が欠けているような気がします。ですから今回の漫画化は非常に歓迎すべきことであります。
正式なタイトルは
30分で読める・・・大学生のための マンガ蟹工船
なのですが、大学生ばかりか高校生あるいは中学生が読んでもわかりやすい配慮があちこちにされています。もちろん大人の鑑賞にも十分たえれるものです。
値段はなんと600円(税込)! 160ページ余りの本編に15ページの詳細な解説までついて、このお値段。同じようなサイズ、ボリューム、紙質のマンガは1000円近くします。いや、1000円を超えるものもあります。利益はほとんどないんじゃないかと心配するくらいです。作者と発行人の熱い思いを感じます。
マンガは多喜二の遺体を囲む人々が、多喜二の死そして作品を語るところから始まります。遺族が手に持つ本は『蟹工船』。彼女がページを開くと、マンガも本編へと突入します。
本編は原作のエピソードの殆どを取り入れ、忠実に再現しています。藤生ゴオさんの無骨な絵柄が作品世界によくマッチしています。廉価だからといって手を抜いてはいません。本当に元は取れるのだろうか、とまたいらぬ心配が頭によぎりました。
*私は企業や宗教団体のパンフレットや本をしばしば目にするのですが、それらに時々掲載されているマンガは、商業紙で活躍しているプロが描いている場合もありますが、やはり利益を度外視しているからでしょう、荒削りな仕上がりのものが目立ちます。それゆえ本作にはびっくりするのです。
巻末の解説も、それだけで立派なガイドになるほど丁寧に書かれています。それは作品背景や作者のプロフィールにとどまらず、原作の文学的な解説にまで及んでいます。
冒頭にも書きましたが、とかく主義主張で色眼鏡で見られがちな作品の、文学的価値をわかりやすく述べている本解説は必読であります。
難を言えばマンガの枠外につけられている註でしょうか。
註があるのは若い読者へのすばらしい配慮なのですが、もう少し整理してほしかったです。同じ註が2回出てきたり、「花札」「天皇陛下」「色よい返事」など、常識でわかるもの、絵を見ればわかるもの、文脈でわかるものまで説明されているのはちょっと。それよりはお金の話が出てくるところで当時の貨幣価値を説明してほしかった。
とまあ、偉そうにケチをつけてしまいましたが、本書が良作であるゆえのわがままです。
原作を読んだ人も、読んでない人も、本書を読んで損はありません。
各種文庫本でも脚注をつけていない。若い読者への配慮が欠けているような気がします。ですから今回の漫画化は非常に歓迎すべきことであります。
正式なタイトルは
30分で読める・・・大学生のための マンガ蟹工船
なのですが、大学生ばかりか高校生あるいは中学生が読んでもわかりやすい配慮があちこちにされています。もちろん大人の鑑賞にも十分たえれるものです。
値段はなんと600円(税込)! 160ページ余りの本編に15ページの詳細な解説までついて、このお値段。同じようなサイズ、ボリューム、紙質のマンガは1000円近くします。いや、1000円を超えるものもあります。利益はほとんどないんじゃないかと心配するくらいです。作者と発行人の熱い思いを感じます。
マンガは多喜二の遺体を囲む人々が、多喜二の死そして作品を語るところから始まります。遺族が手に持つ本は『蟹工船』。彼女がページを開くと、マンガも本編へと突入します。
本編は原作のエピソードの殆どを取り入れ、忠実に再現しています。藤生ゴオさんの無骨な絵柄が作品世界によくマッチしています。廉価だからといって手を抜いてはいません。本当に元は取れるのだろうか、とまたいらぬ心配が頭によぎりました。
*私は企業や宗教団体のパンフレットや本をしばしば目にするのですが、それらに時々掲載されているマンガは、商業紙で活躍しているプロが描いている場合もありますが、やはり利益を度外視しているからでしょう、荒削りな仕上がりのものが目立ちます。それゆえ本作にはびっくりするのです。
巻末の解説も、それだけで立派なガイドになるほど丁寧に書かれています。それは作品背景や作者のプロフィールにとどまらず、原作の文学的な解説にまで及んでいます。
冒頭にも書きましたが、とかく主義主張で色眼鏡で見られがちな作品の、文学的価値をわかりやすく述べている本解説は必読であります。
難を言えばマンガの枠外につけられている註でしょうか。
註があるのは若い読者へのすばらしい配慮なのですが、もう少し整理してほしかったです。同じ註が2回出てきたり、「花札」「天皇陛下」「色よい返事」など、常識でわかるもの、絵を見ればわかるもの、文脈でわかるものまで説明されているのはちょっと。それよりはお金の話が出てくるところで当時の貨幣価値を説明してほしかった。
とまあ、偉そうにケチをつけてしまいましたが、本書が良作であるゆえのわがままです。
原作を読んだ人も、読んでない人も、本書を読んで損はありません。