ジャズとボサノヴァの日々

Days of Jazz and Bossa Nova

アントニオ・カルロス・ジョビン 波 シングル盤

2015-03-29 22:00:00 | 和レコードの魅力
Wave by Antonio Carlos Jobim


日本でボサノヴァがブームになっていった過程でレコード、とりわけシングル盤が果たした役割は大きい。理由はLPの値段が高価だったからだ。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査のデータを見てみよう。この調査は1968年に始まっており、丁度ボサノヴァのレコードが世に出て行った時期と符合するので活用したい。調査によると1968年当時の大卒給与が月給3万600円。2012年で20万円程度なので、約六分の一だ。

一方でレコードの価格は1968年当時、LPで1800円前後、シングルで300円前後だったと記憶している。つまり初任給の比較で言うと、現在の貨幣価値でLPが10800円相当、シングルが1800円相当だったと仮定出来る。この価格ではLPには手が出ない。新しい音楽を渇望していた若者達がシングル盤の購入に走ったのは自然の成り行きだ。

これはポピュラー全般(ロックも含む)に言える事で、レコード会社はシングル盤を売ることが命題だったはずだ。ボサノヴァというジャンルについてもシングル盤がプロモーションの核であったはずだが、中古レコード店でボッサのシングルをあたっても、セルジオ・メンデスやアストラッド・ジルベルトだけが鎮座しており、一体日本でボサノヴァと言えばセルメンとアストラッドだけなのか、と唸ってしまうが、実際は様々なレコードが発売されていたはずだ。

日本全国どこの中古レコード店にも常備されているシングルから、滅多にお目にかからないものまで、日本で発売されたボサノヴァ、もしくはボサノヴァ・テイストのレコードは相当数あるはずだ。筆者のレコード棚に眠っているシングルを引っ張り出して紹介したい。

初回だが、ボサノヴァと言えばアントニオ・カルロス・ジョビンということで"波/ Wave"を紹介する。B面が"トリステ/ Triste"のカップリングで、なかなか見ないレコードだと思う。オリジナルレーベルはCTI、日本ではキングレコードが権利を持っていたA&Mレーベルから発売されたシングルだ。A&Mと言えばオーナーのハーブ・アルバート&ティファナ・ブラスやボサノヴァ・ブームを牽引したセルジオ・メンデスとブラジル66が筆頭アーティストだが、バート・バカラック、ロジャー・ニコルズとザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ、クリス・モンテス、クロディーヌ・ロンジェなど、今で言うソフトロックを代表するアーティストが所属していた。1970年代にはカーペンターズのヒットによってレコード会社としての地位を固めると共に、ピーター・フランプトンやポリスなども扱う総合レーベルへと躍進している。

ジャケットはソフトロックのカタログが充実していたA&Mらしく丸みを重視したデザインで、幅広いリスナーを想定していると思う。



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