ジャズとボサノヴァの日々

Days of Jazz and Bossa Nova

Fly Me To The Moon performed by Julie London

2015-01-31 17:03:08 | Fly Me To The Moon
Fly Me To The Moonという曲は、1954年に作曲家のBart Howardによって生み出された時には In Other Wordsという原題で、曲調も3拍子と現在多く採用されているアレンジとは装いをかなり異にしていた。多くの人々が歌い出しの歌詞でこの曲に言及するようになっていたため、音楽出版社が曲名をFly Me To The Moonに変更したそうだ。このIn other wordsという台詞は歌詞の中にも登場しており、現在でもこの曲をカバーする際にFly Me To The Moon (In Other Words)というタイトルとしているアーティストもいる。同年にはヴォーカルのKaye Ballardにより初めて録音されている。

現在多く耳にするFly Me To The Moonが完成するのは、1962年の事である。作曲家・編曲家のJoe Harnellが4拍子のボサ・ノヴァ風に書き直した曲が、現在よく知られているアレンジの一つである。その後、Frank Sinatraがカバーして爆発的なヒットになった。

私がこの曲を好きになったのはJulie Londonが歌うFly Me To The Moonだ。Frank Sinatraの歌も悪くないが、甘く切ないJulie Londonのアレンジの方が琴線に触れるのだ。本日彼女のFly Me To The Moonを取り上げたのは、米国のテレビドラマMad Menのエンディングで流れ始めた時に「あぁこの曲は、60年代にめざましい経済成長を遂げる米国を象徴するヒット曲のひとつなんだな」と感じ入ったのだが、先ほどMad Menのファンサイトを読んでいたら私の印象と同じようなことが書いてあったからだ。


Julie Londonは1944年、『ジャングルの妖女』で映画女優としてデビュー。『赤い家』『愛と血の大地』『機動部隊』などの映画に出演したが、女優としては幸運に恵まれない下積み時代を過ごした。1947年に役者のJack Webbと結婚し、徐々に主婦業に集中する。二人の娘を出産したが、1953年に離婚。

離婚後、Bobby Troupの勧めで芸能界へ復帰。ジャズピアニストでRoute 66の作曲家としても有名なTroupの指導を受け、本格的なジャズシンガーとしてのキャリアをスタートさせた。

1964年にはBobby Troup楽団と共に来日も果たし、その時の様子は特別番組『The Julie London Show』(TBS)として放送されている。今日紹介する映像はその番組で披露されたFly Me To The Moonだ。



尚、赤坂にあったニュー・ラテン・クォーターというナイトクラブでのライブ音源が2013年に発売されていている。


                  01. オープニング
                  02. ロンサム・ロード
                  03. センド・フォー・ミー
                  04. マイ・ベイビー・ジャスト・ケアーズ・フォー・ミー
                  05. アイ・ラブ・パリス
                  06. MC
                  07. バイ・バイ・ブラックバード
                  08. 思い出のサンフランシスコ
                  09. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
                  10. ダディ
                  11. テイク・ミー・アウト・トゥ・ザ・ボール・ゲーム
                  12. イエス・サー・ザッツ・マイ・ベイビー
                  13. スイート・ジョージア・ブラウン
                  14. ミスティ
                  15. ルート66.
                  16. ベイズン・ストリート・ブルース
                    ~セントルイス・ブルース
                    ~ベイビー・オール・ザ・タイム
                  17. カンザス・シティ
                  18. エブリシング・ハプンス・トゥ・ミー
                  19. バイ・マイセルフ
                  20. クライ・ミー・ア・リバー
                  21. ライク・イット・オア・ノット
                  22. ~エンディング~
                  【録音】1964年3月25日

当日のライブが臨場感溢れる一枚のアルバムとして楽しめることは奇跡的だ。


ライブ・アット・ニューラテンクォーター
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Inútil Paisagem by Wanda Sá

2015-01-26 20:00:00 | Inútil Paisagem
昨日エントリーしたInútil Paisagemだが、本文にも書いた通り、ホベルト・メネスカルのギターを伴奏に切ない想いを呟くように歌うWanda Sáの録音も秀逸だ。Vagamenteというアルバムの収録曲全てがボサ・ノヴァを代表する出来栄えなのだが、このアルバムジャケットが醸し出す「ひとりぼっち感」とInútil Paisagemの曲調・歌詞がぴったりマッチしていて、1人で聴いていると少なからず心を揺さぶられてしまうのだ。





Wanda Sáの代表的アルバムVagamenteは初恋の切なさがボサノヴァで表現されている。


ヴァガメンチ

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Inútil Paisagem by Elis Regina

2015-01-25 12:13:37 | Inútil Paisagem
昨日エントリーしたUaktiのÁguas de Março(3月の水)は多くのミュージシャンが取り上げていて多種多様なアレンジが楽しめる名曲だ。とりわけElis Reginaが作曲者のAntonio Carlos Jobimとデュエットで歌った1974年の作品がこの曲の素晴らしさを存分に伝えてくれる。


このÁguas de Marçoで始まるアルバム"Elis & Tom"はTristeやCorcovadoなどボサ・ノヴァを代表する曲がエリスの歌声で堪能できる傑作だ。


私はこのアルバムのラストに準備されているバラードInútil Paisagemが好きだ。

直訳すると「無意味な風景」と名づけられたこの曲は、アロイージオ・ヂ・オリヴェイラ(ボサ・ノヴァ・ムーヴメントの初期に上質なボサノヴァ作品を数多くリリースしたレコードレーベル「エレンコ」の創立者)の詩にAntonio Carlos Jobimが曲をつけたとされている。この曲はJobim本人は勿論、Wanda SáやCaetano Veloso、アメリカだとMorgana KingやElla Fitzgerald など様々なアーティストが取り上げている。私はポルトガル語に精通していないので、Frank Sinatraが英語でカバーした時の歌詞を紹介する。

If you never come to me

There's no use of a moonlight glow
Or the peaks where winter snows
What's the use of the waves that break in the cool of the evening
What is the evening without you, it's nothing

It may be you will never come, if you never come to me
What's the use of my wonderful dreams, and why would they need me
Where would they lead me without you? To nowhere

What's the use of my wonderful dreams, and why would they need me
Where would they lead me without you? To nowhere

Wanda Sáの名作Vagamenteでギターを伴奏にして歌われるInútil Paisagemが今ここにいない恋人を慕う若者の気持ちなら、ピアノを伴奏にした「Elis & Tom」のInútil Paisagemは遠く離れた場所で暮らす妻(夫)を想う大人の気持ちなのかも知れない。



"Elis & Tom"にはInútil Paisagem以外にも優れたボサノヴァの名曲が収録されている。


Elis & Tom (Dig)

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Águas de Março performed by Uakti

2015-01-24 11:04:09 | Águas de Março
ブラジルの創作楽器集団Uaktiは一度ライブを体験してみたいグループの一つだ。


グループの名前はアマゾン奥地のリオネグロのほとりに住んでいた伝説の生き物Uaktiに由来している。全身穴だらけのその奇妙な生き物が森を疾走すると、風が穴を吹き抜ける際に発した幻想的な音が部族の女達を魅了したという。嫉妬した男たちはUaktiを追い詰め殺したが、Uaktiの音が忘れられなかった部族の人々はUaktiが埋められた場所で育った椰子の木を使って笛を作り、魅惑的な音を奏でたという。

グループuaktiが作り出す音のフォルムもまた伝説の生き物のように聞き手を魅了する。パイプグラス、ゴム、石、あらゆるものを楽器に作り上げ、独自の世界を展開する。

曲はアントニオ・カルロス・ジョビンのÁguas de Março。こんな三月の水を味わってみたい。



Águas de Marçoはこのアルバムで聴ける。

Oiapok Xui

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Sandalia Dela performed by Stan Getz and Flora Purim

2015-01-22 20:18:11 | Flora Purim & Airto
私がまだ十代だった頃、海外の音楽シーンを知るには音楽雑誌、レコード店、ラジオが主な経路だったと思う。友人のお兄さんというチャネルもあったが、そのお兄さんにしても、これらの経路から情報を仕入れていたはずだ。

時代の変化というのは渦中にいると実感できず、後になって「あぁ、そこが分岐点だったのか」と思い知ることが多い。特に情報が簡単に入手できなかった40年前は、音楽のトレンドやアーティストの情報などリアルタイムに入手できるはずもなく、聞きかじりの知識を頭の中で膨らませて楽しんでいたように思う。

1960年代の後半から70年代にかけて、背伸びしたい子供は洋楽のロックを聴いていた(はずだ)。私もラジオから流れてくる洋楽をチェックしては限りあるお小遣いをやりくりしてレコードを買ったり、友達と交換したりして楽しんでいた。

ところが73年から74年にかけて、好きで聴いていたアーティスト達の作品にちょっとづつ違和感を感じ始めた時期があった。ロックとジャズがお互いのフィールドから歩み寄ってジャズロックとかフュージョンと新しいジャンルが話題になってきた頃だ。

音楽雑誌もラジオも、デオダートやマハビシュヌ・オーケストラを特集し始めたので、一応私もレコードも買ってみたが、正直なところ何が良いのかさっぱり分からなかった。

そんな中、当時西ドイツのECMというレーベルに所属しているアーティスト達のサンプラーレコードECM SPECIALが廉価で発売されたので買ってみた。その1曲目がChick Corea & Return to ForeverのCaptain Marvelという曲であり、一聴してこんな世界があるのかと驚いた。そして直ぐにReturn to Foreverのレコードを買いに走った。


そのReturn to Foreverにボーカルで参加しているのがFlora Purimだ。このアルバムは収録曲の高いクオリティや斬新なアレンジ、参加ミュージシャンの飛びぬけた演奏力に加え、ECMレーベル(というかオーナーのマンフレッド・アイヒャー)の音へのこだわが生み出す独特な空気感やクリアな音の重なりの中で、Flora Purimの可憐な歌声がひときわ素晴らしかった。買った翌日から学校から帰ってくると毎日ターンテーブルに乗せて異世界の音楽を楽しんだ。


多分このアルバムに出会ったことが、その後の音楽の聴き方に多大な影響を与えていると思う。一体、Flora Purimって誰だ、から始まり、ブラジル人だけどBossa Novaの系列ではないし・・・妄想が膨らんでは、実態を掴まえる手立てを考える毎日。

そこから私のブラジル音楽探索が始まった。Flora Purimという名前がクレジットされていると、とりあえずレコード屋で試聴させてもらう(熊本の某有名レコード店は丸刈り坊主頭の私にも自由に試聴させてくれた)。レコードをヘッドフォンで聴きながら日本語の解説をむさぼり読み、Flora Purimがセッションで参加しているレコード全てを片っ端から聴いてみた。すると夫のAirtoの経歴が分かってきて、彼が参加していた電化時代のMiles Davisも聴いてみた。

1人のアーティストを軸に音楽を追っかけていくと、音楽はジャンルではないことが分かってくる。それはレコード会社やジャーナリズムが作り出した区分けにしか過ぎない。音楽には良い音楽と、普通の音楽の二種類しかなく、良い音楽を聴いていると、更に良い音楽がやってくるという法則も分かった。

今日の映像は、多分Return to Forever前のFlora Purimの若々しいライブ映像。ここで歌っているSandalia Delaは1970年に発売されたDuke PearsonのHow Insensitiveに入っている曲で、Return to foreverの発売が1972年だから、70年から71年頃のライブだろうか。じっくり調べてみたい。





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