私の研究日記(映画編)

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『フラガール』(TV)

2008-10-24 20:29:40 | は行

監督 李相日
脚本 李相日
    羽原大介
出演者 松雪泰子
    豊川悦司 
    蒼井優

 テレビにて観賞(2008年10月11日)。

 この作品は、公開当時に一度見ている作品なので、これが2度目の鑑賞となる。

 多少映画を見る人なら恐らく誰もが知っている作品であろうし、今回は物語のあらすじ紹介を省きたい。

 私は福島県出身である。今はどうか分からないが、私が子供の頃の福島では、常磐ハワイアンセンターのCMがよく流れていた。上京したばかりの頃、大学の友人にハワイアンセンターの話をすると、誰も知っている人がおらず、カルチャーショックを受けたことがある。でも、福島県民なら当然知っている場所なのだ。

 特に福島県の子供達にとっては、ちょっとした憧れの地といえるかもしれない。首都圏の子供達、若人がディズニーランドに憧れるように(少し言い過ぎか?)。少なくとも幼い頃の私にとっては、そんな場所だった。だから、子供の頃、常磐ハワイアンセンターには何度か連れて行ってもらったことがあるし、フラダンスも直で見たことがある。幼い子供ながらに、その大迫力に圧倒されたのをよく憶えている。

 さて、とりとめもない昔話を長々と書いてきのは、私にとってこの作品が、幼い頃の憧れの場所の誕生物語だからであり、それと関連して、他の作品と比べて少しばかり思い入れの深い作品だからである。
 
 ご承知のように、第二次大戦後の世界では、エネルギー革命が進み、かつて黒いダイヤと呼ばれた石炭の地位は、急速に低下していく。特に日本では、価格の高い国産石炭の消費が減り、価格の安い外国産石炭が輸入されるようになる。夕張市の破産問題と関連して、夕張炭鉱の歴史が一時ニュースなどで頻繁に取り上げられていたことがあるが、夕張に限らず、1960年代の日本では全国各地のどの炭鉱も経営危機に陥っていたのだ。物語の舞台である常磐炭鉱もその一つ。常磐炭鉱が危機を切り抜けるため、乗り出したのが常磐ハワイアンセンター事業だったというわけである。

 子供の頃の私は、いわき市がかつて石炭の産地だったということを、福島県民として当然知っていた。だが、それは漠然と知っていたという程度で、その実情を知ったり、歴史的な流れの中で考えてみたことなど一度もなかった。もちろん、それをハワイアンセンターと関連付けて考えてみようはずもなかった。だから、炭鉱労働者のリストラの場面や、リストラされた父と一緒に夕張に移っていく友達との別れの場面は、私にとってショッキングな場面だった。憧れの地の誕生過程にこうした悲劇があったとは、思いもよらなかったからである。

 作品を見て、もう一つショックだったのは、生まれ故郷について、自分には余りに知らないことが多いと気づかされたことである。ハワイアンセンターのこともそうだったが、実家のある福島県のことは、知っているようで何気に知らないことばかりだったのだ。今暮らしている千葉県については、どういう場所なのかを歴史的地理学的に調べたことがあるが、福島県のことはそのように調べたことがなかった。だから、福島県のことで私が知っているのは、生まれ育っていく中で経験的に知ったということばかりだった。

 こうして、私は福島県に関する本を買い込み、ひっそりと福島研究をするようになった。だから私の本棚の一角には、福島関連のスペースが設けられており、余裕がある時にゆっくりとだが研究を続けている。主演の松雪泰子や蒼井優はもちろん、豊川悦司や岸部一徳などの脇役達も好きな俳優ばかり。作品そのものも面白いし、2度目の鑑賞となった今回も、新鮮な気持ちで楽しむことができた。でも、何より、私にとってこの作品は、生まれ故郷のことを深く知るきっかけを作ってくれたという意味で、思い入れの深い作品なのである。

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