花郎徒の庵 

目指せ楽隠居! 大長今ファン&歴史フリークの隠者・花郎徒による よろずつれづれ日記です。(*>∀・*) 

平賀源内

2007-01-23 19:22:19 | 歴史全般
平賀源内」と言う名前を聞いて、あなたはどんな印象を持ちますか?
歴史の教科書では主に、鎖国化していた江戸中期に蘭学を研究して「エレキテル」を
復元させたという記述を思い出すくらいでしょうか?
この人物について、我々日本人は実際のところあまり知らないのではないでしょうか?
(とりあえず、毎度の事ながらイラストが下手なのはお許しを…)

私もかつてはその典型でした。しかし、いろいろと歴史関係の本などを紐解いてゆくと、
彼が単なる蘭学者や発明家としてだけではなく、とてもマルチな才能に溢れた
言わば「江戸のダ・ヴィンチ」とも言える様な天才肌の人間である事に気付かされます。

彼は讃岐国の武家の生まれで、子供の頃から手先が器用で、からくりを作り遊ぶのが好きだったそうです。
その後、医術を志し漢方医に「本草学」を学ぶも、その知識欲には限りが無く、
やがて当時西洋文化の先進地であった長崎に遊学し、オランダの語学や医学を修め、
さらに京・大坂、果ては江戸に出向き、さらに学問の幅を広げてゆきました。

彼の志向は単なる医者の枠に留まることなく、蘭学を中心とした博物学の分野への
傾倒が始まります。そして、同業同好の士である前野良沢・杉田玄白らと交わり、
時の幕府老中である田沼意次の知己を得て、文化人サロンの中心人物となってゆきます。

またその一方で、彼の才能は別の部門でもその力量を如何なく発揮し、
彼の肩書きには、「戯作者」「画家」「科学者」「鉱山技術者」「洒落本作家」「コピーライター」
までが加わり、一躍時の人となります。

しかし、そんな彼には天才ならではのコンプレックスや挫折もあり、
自分の描く西洋技術を導入した新しい社会の実現に向けたビジョン提唱に対して、
予備知識のない周囲がまったく付いてこれず、それによって無能と判断した者たちと絶交したりいがみ合ったり、うまく事が運ばない事があると目の前の事象をあっさり放棄して、
中途半端な形で済ませ反感を買うこともしばしばでした。

そういう事もあり、次第に彼は世の中から孤立した存在となり、
自分の考え方を理解し、援助や庇護を惜しまない者が少ないのも災いして、
あるトラブルから刃傷沙汰を起して獄に下され、志半ば失意のうちに世を去ります。

彼の不幸は、彼の知識や才能をすべて理解し、彼を信じて支える者が少なかった事。
いかに一定の繁栄を手にした当時の日本であっても、彼の目指す物を無条件で受け入れる
ような成熟した文化社会でなかった事。
海外渡航が困難であった鎖国の世に生まれ、西洋に対しての憧憬を強く持った事。
そして何より、彼自身があまりに未来を見てしまった(もしくは未来が見えてしまった)人物で
あった事だと思います。

要するに天才と呼ばれる者は、常に孤独と異端視という壁にぶつかり、
それを乗り越えるか乗り越えないかですべての評価が決まってしまうという、
極めて微妙な存在であると言えるのではないでしょうか?

追記:昔、「あんみつ姫」に源内さんというからくり作りの好きな老人が出てきましたが、
   彼もまた実在の平賀源内をモチーフにしたキャラだったのでしょうね。
   「キテレツ大百科」の奇天烈斎も同様である可能性が高いのではないかと…


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4 コメント

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時代劇でも… (ハンちゃん)
2007-01-23 22:50:35
私は歴史自体にあまり興味を持ちませんが、
やはりある人(←ある人ばっかりだなぁ)がきっかけで、
時代劇嫌いだったのが再び時代劇を少しずつ見るようになりました。
(「チャングム」もそれが幸いしたのかも)
実際の平賀源内の事はあまり知りませんが、
時代劇でも主役や脇役で時々出てきますよね。

ナショナル時代劇「翔んでる!平賀源内」、
NHK時代劇「天下御免」などなど…。
(↑もしかして古い?(笑)
ちなみに私は「天下御免」は残念ながら見たことありません)
やはりこれでも奇妙奇天烈な人物として描かれてましたね。
返信する
土用のウナギと源内さん (玉篠)
2007-01-24 16:20:27
こんにちは。花朗徒さん。
平賀源内・・・ですかぁ。

歴史マニアの私としては、避けて通れない人ですね。
この方の事を始めて知ったのは、確か小学四年生の頃だったと思いますが、本格的に調べたのは短大の二期生の頃。
漫画の 風雲児たち がきっかけでした。
その後、ナショナル時代劇を見るわ、NHK でやっていた
『 びいどろで候 』 ( 源内さんは生きていた という設定で、文化文政の時代を描いたドラマ )
は見るわ。
本屋に勤めていた頃は、『 天下御免 』 のリバイバルシナリオ本を読んだ事もありましたよ。

江戸弁で初めて歌舞伎の台本 ( 神霊矢口の渡し だそうです ) を書いたのもこの方ですし、一番ポピュラーなのは、
土用にウナギを食べる習慣を広めたこと
でしょうか。


> ハンちゃんさん

私も、天下御免 は見た覚えがないのです。
何しろ、これをテレビでやっていた頃、小学二年生だったので。
返信する
Unknown (ハンちゃん)
2007-01-24 17:22:10
そういえば、これまた「必殺仕事人」(スペシャルでしたが)でも、
「実は平賀源内は生きていた!」の設定で
源内さんが出たことがありましたね。

>玉篠さん
私は「天下御免」をやってた時は
まだ生まれてもいませんでした。
「天下御免」は今となっては見れない作品のようですね。
原版が残ってないそうです。
返信する
お詳しいですね (花郎徒)
2007-01-24 18:01:59
ハンちゃんさん、

>ナショナル時代劇「翔んでる!平賀源内」

これは私も見てました。当時、あの番組枠は「水戸黄門」と「大岡越前」が繰り返し放送されてましたが、
その中に入ってきたあのドラマは私にとってかなり衝撃でした。たしか西田敏行氏が源内役で、昨年亡くなられた故川合伸旺氏が珍しくいい役で出てました。
他には池端慎之介氏や石田ゆり子さんも出演なさってた記憶が…

あの作品では源内はからくりを駆使しながら、奉行所の役人や周囲の仲間たちと探偵的な活動もしているという設定でしたね。

玉篠さん、
やはり食いついていただけましたようで…(笑)

『びいどろで候』も少しだけ見てました。
源内のエピソードについては記憶にありませんが、なぜかナポレオン(演じたのが細川俊之氏だったはず)が江戸へやってきた話があったような… それは憶えてます。原田知世とか萩原流行も出てませんでしたっけ?

『風雲児たち』については、以前チャングマ二次小説コーナーでもお話しましたが、私もずっと愛読してまして、このログを書くにあたっての参考文献の一つとして使用いたしました。
やはりこのマンガは歴史フリークにとっては宝物ですね。
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