ファミリー メンタル クリニック

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LD系の子がマンガが苦手な理由 内田樹 街場のマンガ論 

2015年10月03日 | 児童精神医学
内田樹 著作集を読んでいる。ここ数年.ラカン派書籍は難解で離れていた。
何かのブログから、内田の文章を見ると、この論理の展開,ひねくり方,文体は、絶対にラカン派だと思った。
実際はレヴィナス研究者だと分かったのだけど。

残念ながらラカン的な文体をお目にかかることが少ないせいで,精神医学・精神分析関連本と位置づけて内田節を読むことが増えた。
街場のなんたらかんたらシリーズが結構出ている。

買ってものの、まだ読んでない ワンピース・ストロングワードの本もある内田なので、
街場のマンガ論 も面白いかな とDLした。

読むと,本格的にマンガ批評をしている(Podcastで知った)中条氏に比べると、内田氏ごめんなさいレベルなのだが,
中条のマンガ論と異なり、恐らく脳科学的な文脈だろうという箇所があった。

子どもはマンガが好きだと勝手に想っていた.
が、外来で診察していると、マンガが読めない子が中にいる。LD系の子で。
日頃,頭で引っかかっていた、この事象について、理解の一助となる文章だ。

内田樹 街場のマンガ論 養老孟司との巻末対談から抜粋
養老 自分でもいろいろ考えたんですが、結局、日本語を読むのと同じように、マンガを読んでいるという結論になったんです。
要するに、意味なる図形に音をふっているんだ、と。漢字を読んでいるのと同じ。ふきだしは、ルビなんですよ。

内田 あ、絵が漢字で、ふきだしはルビ。ということは、絵を見ながら同時に文章を読んでいるということですね。

養老 音と絵が、無原則に結びつくのが日本語の表記の特徴なんですよ。表音文字というのは、音と文字が繋がっているんです。

内田 アルファベットですよね、例えば

養老 そうそう。いくら自由が許されたって、Bっていう字が書いてあるのに、「エム」っていう音は出さないですよね。だから絶対、音がかっちり絡んでいるんですよね。
ところが日本語の漢字だけは、音読み・訓読みをするんです。
 例えば「重」っていう字でも、「おもい」だけじゃなく、「重」に「ねる」と書いて「重ねる」とも読むんです。
でも「重」一字で、「かさ」って読むかというと、変じゃないですか。「かさ」だけではなくて、「重ねる」で、意味を取っているんですよね。
そして、音は、日本語の「かさねる」を独自に与えているので、だから「重大」とも読むし、「重複」っていう「ちょう」という読み方もあるし、日野原先生の名前みたいに日野原「重明」と読む場合もあります。

内田 そうですね。

養老 そうでしょ。なんで「しげ」って読むんだよって、文句言い出したらキリがないじゃない(笑)。
字と音の間に実は何の関係もないっていう言語はですね、他にないと思います。あったらぜひ教えてください。

内田 ということは、マンガの場合には、絵と、ルビにあたるふきだしが、ぜんぜん関係ない場合があっても、日本人はちゃんと読めちゃう。

という風に続いてく。

また対談の中で,欧米ではアルファベットは読める,が読んだ後に文章の意味を聞くと答えきれない失読症児童が35%いるとコメントしている。

この対談から内田は,次のように要約している.(抜粋)

私は長いことその理由がわからなかったが、先般、養老孟司先生にその理由を教えていただいた。
それは、日本人が文字を読むとき脳内の二か所を同時に使っているからである。
 漢字は表意文字であるので、図像として認識される。ひらがな・カタカナは表音文字であるので、音声として認識される。
図像を認識する脳内部位と、音声を認識する脳内部位は「別の場所」である。
文字を読むときに単一の部位を使うのと、二つの部位を使って並列処理するのとでは、作業能率が違う(たぶん) 
だから、日本でマンガが生まれた、というのが養老先生の仮説である。 マンガでは図像と音声が同じコマ内に存在する。
図像は「漢字」であり、「ふきだし」は「かな」である。私たち日本人はふだん日本語のテクストを読むときに、漢字とかなの「交ぜ書き」を一気読みしている。
けれども、これは一続きの情報入力を、そのつど画像処理と音声処理に切り替えつつ読んでいるということである。
二種類の記号入力を即時的に並列処理する能力がないとマンガを「すらすら」読むという芸当はできない。むろんマンガを「すらすら」と描くこともできない。

(抜粋以上)

それに加えて 通常の科白と 「ガガガガ 」 とか 「バコーン」とか擬態語も同じコマの中に有り、背景に他人の言葉入って来たり,モノローグが入る事もある。
また、作者が解説的なことを入れている頁もあり,コマ割も縦,横,見開きとか、どの順番に視線を進めていけば良いか分からない。
作中の人物もギャグの顔と、シリアスな顔では絵柄、体型が全く異なる作画方法もある。
かなりLD系の子にはクリアすべき問題が山積みだ。

漢字が苦手な子,マンガが読めない子,脳神経系発達の過程で、そんな子がいる。
なので、マンガを読める子には国語を勉強する代わりに、どんどん読んだ方が良いよと勧めている.

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