ファミリー メンタル クリニック

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不登校の教師たち 削減すべきなのか再考を要す

2005年12月15日 | 児童精神医学
 文科省の言い方をすると、長期欠席=不登校 の教師が全国で3500人以上いる。ボクの子どもの学校は学年2クラス、プラス1クラスで13クラスしかないが、産休以外で2人の休職中の先生がいる。全国では3500人超という数は実数より少ないかもしれない、ボクにはそう思える。
 どんな職場でもそうだが うつ病で休む労働者は少なくない。厚生労働省はうつ病での過労死を労災と認定するようになってきた。教師は聖職かもしれない。しかし一人の人間であり、公立であれば、公務員だ。学校と言う「職場」の面から見ないといけない。
 広島で教育委員会からハラスメントを受け自殺した民間出身の校長がいた。すべてとは言わないが、その構造そのものが今の教育行政と現場の摩擦であり、構造的な疲弊ひいてはうつ病を生み出す素因かもしれない。

 ただ教師の事件も後を絶たない、病休教師の裏で、わいせつ、体罰で処罰された教師も300人前後いるようだ。これも氷山の一角だろう。
 
 ここでbecoming a teacher について考えないといけない。医師になるには医学部で知識を学び、学生中に病院研修をすませ、国家試験を受ける。合格すると医師だ。しかし研修を行い、1人前と呼ばれるようになるには10年が目安か。
 さて教師である。教育学部だけでなく、大学で先日事件を犯した同志社大学生も教職の単位をとり、型どおりの教育実習をすませる。単位と実習だけであとは、無事教員採用試験に通ると4月からすぐに担任で40人の児童を担当することになる。
 向き不向きもあるだろう。

 しかし他の企業でこんなことがあるだろうか。卒業し、簡単な研修しか受けてないのに、即現場を一人で任される。困ってもその場ですぐにヘルプがあるわけでない。所詮、22歳の若造である。何も出来ない前提で becoming a teacher program を考えるべきだ。
 研修期間を設け、その際は補助教師を行う。 (医者で言えば先輩医師の診察を手伝うアシスタントだ)

 人の命を預かる医師と同じく、国の未来を背おう子ども達の教育に最低これくらいのことは行っても誰も税の無駄使いとは思わないだろう。

 ・・・ところがである。

 政府は5年間で23000人を削減する予定。改革すべきは教育行政であり、教師を削減することは医療費削減と同じく、この国の未来を希望のないものとする誤った方策としか思えない。
 民で出来ることは民で・・・とでも言うつもりなのだろうか。

全国で13万人を超えたと言われる不登校児童。
Blogで述べたが、福岡で18歳まで子どもを登校させなかった親は、それだけでネグレクトという虐待といってもいい。
何故なら、子どもに教育を受けさせる義務が養育者にはある。だから「義務教育」なのだ。
日本でも数十年前までは子どもは労働力であり、学校に行きたくてもいけなかった。だから国の方針で義務教育を定め、戦後すぐ出来た児童福祉法でも虐待の定義が述べられている。
義務教育を守らないこと自体は虐待そのものなのだ。

全国13万人の子ども達の教育を受ける権利と、受けさせる義務を国は放棄している。
13万人の子ども達を虐待しているこの国は、更に、子どもたちを希望のない社会へ導くために教師を削減するとしか言えない。

厳しい口調になったかもしれないが、すべて2005年の911から始まった。忘れてはならない2005年を。

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8 Comments

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TBありがとうございました (旅限無)
2005-12-15 22:11:28
イラクでは選挙が始まりましたね。民主化が成功している証拠なのだそうです。でも、欧州の特殊な歴史状況から始まった近代民主主義にはどれほどの普遍性と正しさが保証できるのか?木村敏や中井久夫の本を少しばかり読んだ時に、ぐっと詰まる思いがしたものです。未開社会や精神病と切り捨てられてきた別の文化や文明の有り方を考えると、既に賞味期限が切れかけている国民国家の枠組みに子供達をはめこむ営みに無理が出て来ているような気もします。でも、生命力旺盛なガキンチョは驚異的な適応力を持っているので、先に制度に対する適応障害を起こして自壊するのは教育現場にいる大人の方なのかも知れませんね。
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旅限無さん どうも (なかまた)
2005-12-15 22:16:08
臨床で子どもの診察をしていると、子どもは強いです。きちんと話しを理解し、彼らの物語に参加し、ストーリーの再構築を手伝うと結構、前に進んでいきます。

逆に大人は、子どもだましばかりでいけません。
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免許検定試験賛成ですが (在宅介護人)
2005-12-16 18:58:26
確かに、教員養成大学卒業や教職課程修了で免許状取得の制度を改め、修了ー検定試験合格・免許状取得ー採用試験合格ー教員となるという方式ならば、社会的にも昔のような師弟関係的な教師と子供・保護者・社会的見方が出てくるような気もしています。 新学制前後頃は、初等科検定試験・専科検定試験・文検(文部省検定試験)によって、それぞれ初等教育・高等科教育・高等教育師範学校の訓導(正教員)になったそうですから。 ただ、教育力って判断が難しいと思います。 うつ病になったりする人を見ていると、気まじめな人が多い気もします。まじめー堅いー柔軟性がないことが不適格になるとは思えないんです。人間関係が大変なんだと思うんです。 酒の席で校長批判をしたために冷遇されたり一方認めてくれる校長の下で学習生徒指導部活動、後輩の援助をしたり(兄の例です)。こちらでは、県の教員採用試験の倍率は40倍~が20年以上続いています。一方学校の先生方は40人のうち10数人前後が講師です。10年以上採用試験を受け続けている人もいます。講師経験が採用試験に加味されるといいかとも思います。 ただ、ハレンチ教員は問題外・排除にしても、教育課程がコロコロ変わり、社会や子供も変わるのだし、子供と向き合うエネルギーを保持する気力体力も必要だし、大変だと思います。
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もひとつ、浮かんだので (在宅介護人)
2005-12-16 20:04:39
一学年二クラスの学校で二人の不登校教員、というのは全国的にみても多いのではありませんか?
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採用試験も問題ですね (なかまた)
2005-12-16 22:03:04
非常勤でいつ臨時採用で呼ばれるかわからないので,まるでフリーターやニートのように待機中の教師候補青年が大勢います。

何とかならないのかなあと思いますね。
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夢をいつまで持ち続けるか (在宅介護人)
2005-12-17 10:47:05
現在の雇用制度にある臨時職員問題と同じで、危うい生活基盤だから結婚も出産も将来設計もできぬ二十\代三十\代は大問題だと思っています。本来なら団塊世代の子供の世代だから、その人達が結婚すれば出生率は上がるはずなのに、と、単純に考えています。 それから、教員生活に不適応だと自覚したら、自分の生き方の方が大切なはずだから病休ー労災認定ー退職、で新たな生活をすべきではないかとも、冷たいようだけれど感じます。
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先のコメントには大きな誤りがあったような気がしました (在宅介護人)
2005-12-18 22:13:07
今、NHKスペシャル「自殺を減らしたい~精神科医とうつ病患者半年間の記録」を観ながら、そんな単純なものじゃないんだなと感じました。世の中は景気回復といってますが、地方の秋田岩手青森といった自殺者の多い県ではまだ実感はないでしょう。若い精神科医の患者やその家族への関わり方に胸が熱くなったし、仕事につまづくことは人生がなくなったような絶望感にとらわれることでもあるんだということを改めて知らされました。回復して本人が望むなら復帰できる環境を作っておくことは必要だなと思いました。悩みながらも真剣に生きているんだから。 弱者切り捨てでない社会ならば。 こんなふうにTV番組の報道姿勢ですぐに影響を受けることもあるから、メディアの責任は重いはずですが。
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先日福祉保健部を批判したのも (なかまた)
2005-12-18 22:18:21
沖縄県が自殺防止マニュアルを作った云々・・述べました。

でも結論としては、県や国が考えることは うつ病患者さんが回復し就労に結びつくような 社会構造だと批判してます。そんなところだろうと思います。

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