レーザー溶接について

2011-12-27 12:58:45 | レーザー溶接
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
久しぶりの更新になりました。

最近、メタルボンドは貴金属価格の高騰からコバルトクロム合金を使用する機会が増えてきました。そこで、歯科金属メーカーさんにお願いしてレーザー溶接の信頼性を検証することに。
併せてレーザー溶接についても少しだけ説明したいと思います。

引っ張り試験片(鋳造)の中央をレーザー溶接しました。
目減り分の補充に用いるレーザー・ロット(溶接棒)は、1ミリのワックスワイヤーを同じ金属で鋳造したものを使用しています。


試験結果:共に溶接部で切れず、母材部で切れています。
破断強さ:上・726MPa 下・761MPa
この数値は母材の引っ張り強さに相当し、ろう着とは全く次元の違う強度を示しています。
適切な溶接ならば、問題が起こるとは思いません。
次は曲げ強度を検証した画像です。


上記試験に用いた金属ではありませんが、金属床クラスプの鉤腕部を途中で切断して1,2mmのクラスプ線を溶接しました。
なお、通常は鉤腕の破折修理は鉤腕の途中ではなく、鉤体部で溶接を行っています。


溶接後、反対側へベンディングします。


1.2mmのクラスプ線なので、溶接部には相当な応力が懸かっているはずですが、これだけ曲げても溶接部で破断していません。試験機によるものではありませんが十分な証左になると思います。


レーザー溶接の精度を検証するため、上顎前歯部5本を単冠で鋳造。金属は引っ張り試験で使用したものと同じです。


レーザー溶接後。
5本のクラウンを4箇所も溶接していますが、連結精度に何ら問題は生じていません。

コバルトクロム合金は、溶接の阻害物質(炭素やケイ素など)が含まれていることが多く、むしろ金合金や健保用の金銀パラジウム合金の方が溶接は簡単だと思います。
ただし、高温下で揮発する元素(銀など)が一定量以上含まれた金属は溶接できません。

当ラボのレーザー溶接機は導入して既に9年を超え、励気ランプを一回交換して2本目のランプになってからも相当数打っており、物理的に無理なケースは除いて何の不安もトラブルも無いところまで来てます。

レーザー溶接機はハイテク機と呼ばれますが、操作そのものはまるっきりのアナログです。そもそも、工業用レーザー溶接では精密な位置決めが当たり前なのに、歯科技工用のレーザー溶接機はフリーハンドです。
そのため、使いこなすにはセンスとスキルの醸成が不可欠で、当然ながら相応の経験を積まねばなりません。これは、明らかに時間をかけて付き合うべき機械であり技術だと思います。







EVANSPRO Dental Laboratory



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