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日本人として日々の暮らしの中で思うこと、知りたかったこと

長江の現在

2019-09-15 23:39:35 | China
青海省のチベット高原を水源地とする長江は長さ6380キロにも及び、アマゾン川、ナイル川などと共に「世界三大河川」のひとつで、中国およびアジアで最も長い河川。河口には中国三大都市である上海があり、東シナ海へとつながっている。

嘗て1980年代にNHKの特集番組「シルクロード~絲綢之路(しちゅうのみち)」では、喜太郎作曲の「シルクロード」のテーマ曲と共に滔々と流れる長江の映像などが印象的で、雄大な中国を描いた名曲や映像によって「中国は大いなる山河や広い国土をもった懐の深い大陸の国」という印象を日本人の心に焼き付けた。残念なことに、近年そのような中国のイメージは過去のものになった感があるのだが。

幽玄で美しい長江の夕暮れの景色
(撮影年代不詳 WIKIより拝借)


長江は上流部を金沙江(きんさこう)、川江(せんこう)と言い、中流部を荊江(けいこう)、下流部が揚子江と呼ぶそうだが、日本では長江全体のことを「揚子江」と呼ぶ習わしがある。


中国の歴史や文化、産業を支えてきた長江は、彼の国にとって「母なる河」とも言われている。その長江が深刻な環境問題を抱え、2000年代に入り特に「長江の流れが海に達する前に枯渇してしまうほど酷い状態」という危機に瀕した時期もあった。原因としては「水の過剰な汲み上げ」「地下水の汲み上げ」「(工場排水などによる)環境破壊」など、単純に解決できない問題が絡み合っているといわれている。


■「南水北調」計画とは
「豊富な水量を誇る長江に比べ、北方の黄河流域は気候も乾燥している上に人口に比べて水量が少なく、華北平原や北京などでは水不足が問題となっていた。これを解消するため、長江から取水して黄河流域へと水を送る『南水北調』計画が立案された」のだそうだ。


「この計画は1952年に毛沢東が構想したものが起源とされるが、着工は2002年までずれこんだ。長江の取水口及び北方への送水路は、西線、中央線、東線の3ルートが計画された」


「東ルートは水量は多いものの、長江の末端部分から取水するために長江の水が汚染されており、浄化に多大なコストがかかることや、地形的に水をくみ上げる必要があるため、運用コストがかかる」こと、

「中央線はやや高地から取水するため自然流下で北京まで送ることができコストも安く、水質もきれいだが、水路が長大になる」こと、

「西線は水量も水質も良好だが、巨大山脈を貫通するトンネルを掘らねばならず、また貴重な自然の残る長江上流域の環境を破壊する」ことがそれぞれ懸念される中、

「工事は2002年に東線、2003年に中央線が着工。2014年には中央線が開通して送水が開始され、水が華北・北京へと送られるようになった」

「この計画によって長江流域の33万人の住民が移住を余儀なくされた。また、西線はその工事の難易度や環境への影響などから、いまだ着工されていない」

「『南水北調』によって取水される長江自体も、流域人口の増大や経済成長に伴い水量の不足が懸念されるようになってきている」のだそうだ。


「源流域のチベット高原では重要な水源となる湿原の消失が続き、長江や黄河といった大河川の水量への影響が懸念されている。長江の水量は基本的に多く安定しているものの、毎年のように水害や、逆に渇水に見舞われている」

「1998年には大洪水が起き、8400万人以上が被災。2007年には夏季に水害が多発し、3か月後の2008年1月には干ばつによって水位が過去140年間で最低レベルに下がった」そうだ。


「長江の上流域においては森林の乱伐が進み、土砂が大量に長江に流入するようになり、これにより長江の土砂量は激増。非常に大量の土砂を運搬する黄河のようになると危惧されるようになった。1998年の長江大洪水もこの森林乱伐による上流の保水量の低下が原因として挙げられており、これ以降中国政府は上流地域において退耕還林(農地への植林)や裸地への植林を積極的に進めるようになった」(以上「」内はwikiより引用)


長江中流域の湖北省宜昌市で建設された三峡ダムで2003年に湛水が開始されると、水面に大量の漂流物が出現。漂流物を直ちに除去しなければ更なる汚染や、船舶の航行安全にも深刻な影響を及ぼす状況となったといわれている。2006年に長江に排出された汚水の総量は305億トンに達し20年前と比べ倍増していたそうだ。


中国科学院南京地理湖泊研究所、世界自然保護基金及び長江水利委員会などが2007年4月に発表した「長江保護及び発展報告2007」によると「母なる河」と称される長江の水質は当時既に取り返しがつかないほどに悪化し(水環境の悪化、生態系の劣化、資源の破壊などの問題)専門家は「長江を救うには一刻の猶予も許されない」との呼び掛けを行った。


当時、 中国河川の地表水の20%が「汚染レベル5」と言われるほどで、人が触れるのも危険なほどの状況にあったそうだ。


2006年11月11日、湖北省宜昌市にある宜万(イーワン)鉄道長江大橋の上流50mの場所。排水溝から墨のような汚水が長江に排出され、水面には白い泡がたっている(Record China 2006年11月12日配信画像より借用)


深刻な水環境の問題などで、中国社会は長江の生態環境を重視し始め、沿岸部にあった違法な化学工場や電池工場は閉鎖。不法営業していたレストラン船も姿を消したそうだ。

三峡ダム地区に住む人々、長江の水運業で代々生計を立てていた地元民からなる「漂流物の回収チーム」などによる根気強い漂流物回収作業によって長江は20年前の最悪の状態に比べて現在は漂流物が減って水質が改善しているようなのだが・・・

昨年の7月、中国外交部(日本の外務省に相当)が「省·自治区·直轄市国際説明会」を湖北省で開催し、その中で王毅国務委員長兼外交部長(日本の外務大臣に相当)は「新時代の中国:湖北省、長江から世界へ」というテーマの講演を行っている。


王氏は「湖北省は『一帯一路』(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)に積極的に参与し『川と海の直通』航路が東は太平洋と繋がり。『中欧班列』(中国とヨーロッパを繋ぐ国際定期貨物列車)が西はヨーロッパと繋がり、就航路線は世界四大大陸を直行便が結んでいる」と述べ、「新時代に入った湖北省は長江から世界に進出、中国の対外開放の全方位的な新しい窓口になるに間違いない」と、長江の水運の発展が中国の「一帯一路」計画に寄与するという期待を述べたそうだ。


長江の豊かな水が地域や国の経済を支える「母なる河」であり続けるためには、様々な問題が懸念されている長江中流域の「三峡ダム」などは今後はむしろ「脅威」といえようし、北京を含む華北平原地域の深刻な水資源の不足も依然として残っており、経済の発展を優先にしてきた中国の自然環境を過去に戻すことなどはもはや不可能なところまできてしまったようだ。


引用:




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2 コメント

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環境についても覇権主義 (泉城)
2019-09-16 22:40:02
kamakuraboyさん
こんばんは

中国は昔の日本に似ているところもあります。
日本でも高度経済成長の時代にはスモッグなど公害問題がありました。
ただ、日本と中国が決定的に違うのは、汚染の開始時期と規模です。中国では高度経済成長が始まって短期間で大きな汚染を生じさせていること、さらには国の規模が大きく広範囲に深く汚染していることでしょう。
最近はもっと問題なのは、揚子江沿いの森林の商業伐採を制限しながら、木材需要を満たすためにロシアなど他国の森林を壊滅的にさせ地球規模での環境破壊を起こしていることです。
日本人とは違って自然への畏敬の念が無いことが問題を大きくさせている原因があるように思います。
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こんばんは (kamakuraboy)
2019-09-17 00:19:47
コメントをありがとうございます。ご指摘のように日本でも高度経済成長の時代には、水俣病、四日市喘息、カネミ油症、イタイイタイ病など様々な公害問題があり、公害による深刻な悲劇も起こりました。

「日本と中国が決定的に違うのは、汚染の開始時期と規模」「中国では高度経済成長が始まって短期間で大きな汚染を生じさせていること、さらには国の規模が大きく広範囲に深く汚染していること」という分析は正にその通りですね。

「揚子江沿いの森林の商業伐採を制限しながら、木材需要を満たすためにロシアなど他国の森林を壊滅的にさせ地球規模での環境破壊を起こしていること」とのご指摘、日本にも当てはまる部分が多少ありそうで、日本も国内の森林資源を循環活用できるようにして、他国の森林資源をあてにしなくてよいようになるべきですね。

「(中国人は)日本人と違って自然への畏敬の念が無いことが問題を大きくさせている原因があるように思う」というご指摘も同感です。彼らは地球上のありとあらゆるものを破壊しつくしてしまいそうで、その凄まじいパワーと破壊力が人類にとって脅威となってきているようですね。
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