旅のひとコマ~プー太郎突入~

旅での出会い、発見、感動など、断片的な過去の記憶をたどる。同時に日々の行動や想いも気の向くままに掲載。

シナイ山(エジプト)

2006-11-04 14:20:17 | 旅写真とコメント
モーセが十戒を授かったシナイ山。 (聖カトリーヌ)
クリスチャンでなくても聞いたくらいはあるだろう。

この日、ちょっとしたトリップを楽しみたくて、
LSDという幻覚系?のドラッグに初挑戦する。
マリファナとかハシシくらいしかかじったことがない私としては大冒険だった。

ほぼ満月の夜、月明かりに照らされるラクダ道をひたすら登った。
現実からいっきに聖書の世界にタイムスリップした感覚をおぼえる。
聳え立つ岩山。
奇妙な形の岩が連なり、化け物のようで怖いと言った私に、友達が
「悪い感覚は持たない方がいいよ~」とアドバイス。
後で知ったが、LSDはその時の状況や心の持ちように
かなり影響される類のものらしい。

実際私は、真っ直ぐ歩けないくらいにヘロヘロで。
登っては止まり、この状況をものすごく楽しんでいた。
深呼吸する度に、風の波長(そんなのあるのか?w)と
自分の波長を合わせ、自然と一体になる感覚を覚える。

岩陰から突如として現れるどでかい月に 「なんじゃこりゃぁ!!」
って一緒に上ってる仲間達と騒ぐ。 まじで一瞬UFOの親玉かと思った。

そしてずっと目の前に聳え立っていたはずの岩山が、
神風の吹く岩山の間をすり抜けた途端、突然消えた。
山のおなかの中に入ったらしい。

登ってきた道が永遠と続く。
どこまでも続く岩山たちのさらに奥の空が徐々に明るみはじめる。
赤でも青でもオレンジでもない微妙なグラデーション。
朝が始まる。
ご来光を拝むため、頂上へと足を速める。

あるポイントまで上ると、朝と夜の丁度真ん中に
自分が立っていることを感じる。
目の前の月は暗闇の中で煌々と照り、 まだ夜であることを主張する。
でも反対を見るとすごい勢いで朝が追いかけてくるのを感じる。
自分が朝と夜の境界線になっている不思議な感覚だ。

そして、冷たい風が吹きつけるてっぺんで山々を見おろす中、
月の反対に昇る朝日を見た。



ドラッグで何を感じたかって。
残念ながら私は表現するだけの文才は持ち合わせていない。
(いつもそうなんだけどね。笑 はがゆいです)

言うなれば、感覚が鋭くなる っていうのかな。5感が働く というか。
ふと一瞬頭をよぎったことが視覚的に見えたり。

例えばホコリっぽい気がすると思えば、地面舞うホコリが見えるし、
誰かがタバコ吸ってる?と思うとタバコの煙が見えるし、
風が吹いてると思えば風の流れが見えるし、
大地が動き、星が踊る。

自分が普段認識、認知しない程度に軽く一瞬感じたことを
再現させてくれる。強く感じさせる。
その上で、その0.1秒後に感じたこともまたハッキリと認識させてくれるのだ。

だから、自分の中で様々な場面が次々とすごい速さで切り替わる。
岩に手をついた、その手に鋭い痛みを感じたと思った瞬間に、
吹いた風によって髪が唇に張り付いたことを感じたその瞬間に、
人の話し声に私の友達かな?と一瞬思った自分の心により
その声が友達の話す日本語に聞こえてきたり。(実際は全然違う)
イメージ的には、死ぬ前に体験するという走馬灯・・・みたいな感じなのかな。
むしろ、過去を急に思い出すフラッシュバックに近いのかな。
どっちも経験ないからわかんないけど。

味覚も不思議で。
寒空の下、もう手なんて感覚なくって、どうにか袋を開けて
チョコ味のクッキーを取り出して食べる。クッキーがおいしくて。
いや、おいしいとかじゃなくって、粉を一粒一粒感じながら食べる、
そんな感じ。舌触りを楽しんだあと、飲み込むと、食道を通って
胃に入っていくのを感じたり。ふとヨックモック(お菓子のブランド)
を思い出したら、ヨックモックのクッキーの味になったり。

赤と思えば赤になり、岩が骸骨に見えると思うとガイコツになる。

ここが、天空の、最も神に近い場所だ
と思った一番高い(と思い込んでいた)誰もいない岩に登る。
下界を見下ろす。


遠いむこうの方から風が吹く。風が見える。
その風が自分の身体に入っていき、身体全体に、隅々まで染み渡るのを感じる。

観光客など目に入らず、肌をさす冷たい空気と呼吸を合わせ、
自然と一体になるような感覚に浸りながらひたすら一人遠くを眺めていた。



すっかり明るくなり、全員下山してからも、
しばらくここで神を感じていたくて、 とどまっていた。

そこで、シナイ山で働くエジプシャン(名前をモーセという)に 出会う。
やたらオーラが渋いおっちゃん。
「ここには教会とモスクがある。
すべての人がクリスチャンであり同時にムスリムでもあるんだ」 と彼は語る。
宗教絡みの争いをしている人達に聞かせてやりたい。
「クリスチャンかい?」と聞かれ、私が申し訳なさそうに
「違うよ。日本人はほとんどの人が宗教を持ってないんだ。
でも私は神様のことは信じてるよ。」と答えると、
「Why not?」と言ってくれた。

モーセ(右)とその息子

そして、完全に明るくなった山のてっぺんでジョイントを
ふるまってくれた。
(後から知った話によると、マリファナはLSDの効果を増長させるらしい)

「ここのポイントがいいんだ」 と言ってモーセは写真をとってくれた。
「ちゃんととれてるかチェックするわ」
と、写真を見ている私の横からカメラを覗き込み、
「Anyway,you are beautiful」
と言った彼の言葉は、ほかのやすっぽいモロッコ人やエジプト人が言う
you are beautiful とは一味もふた味も違っていた。

すっかりシナイにはまってしまったうちらは、帰り道お土産の水晶を見ては、
「見てこの輝き!」とか、
「その水晶の中には鳥の羽が入ってる!生命の神秘だ」
とかわけわかんないことを言ったり、


こんな岩を見ながら、
「岩が生まれて育ってるよ、生きようとするこの躍動感、すごくない?芸術だ!」
とか騒ぎながら(笑)、ゆっくりと下山したため、
バスの出発時刻に思いっきり遅れてしまいましたとさ。

私の今回の旅のベスト3に入るくらい、楽しく感動した経験だった。
でも別にドラッグにはまった、というわけでもなく、この日以来、
この類のもの(効果が強いもの)は、一度もやっていない。

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2 コメント

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シナイはねぇ。 (皐月)
2006-11-24 10:28:56
絶対行きたい場所の一つ。(いくつもあるけど。はは)

最後の岩。これは生きてるよ。うん。
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へぇ (皐月さん)
2006-11-28 22:09:35
意外とシナイ山を知ってる人、友達には
少ないんですよ~~。
かなりお勧めです、薬やってなくても神を
感じる場所だと思う。

生きてるでしょ?
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